雉も鳴かずば 胡散臭い、と自分が言うのもアレだが、とにかくそういう雰囲気の同僚に声をかけられた。
「道満殿、せっかくの週末です。ひとつ私の誘いに乗ってはくれませんか」
長身で筋肉質な道満に勝るとも劣らない体格。長く伸ばした銀色の髪をひとつに纏めた、精巧に造られた人形のような男。
「カリオストロ、殿?」
「おお、ようやく私の存在を覚えていただけましたか。それで、如何です? 私とお食事など」
「いや、拙僧は……」
「良い店があるのです。素晴らしいセンスを持つ店主が国中から集めた地酒を、静かな個室で楽しめる。そういう場所なのですが」
「は、はあ……」
「料理も絶品ですよ。特に牛サガリのステーキは、一度食べたら他の店の物では満足できなくなりましょう」
3269