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    aimai_tarou4

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    aimai_tarou4

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    沢深ワンドロ【横顔】【どうしても君がいい】に加えて、バレンタインも諦め切れなかったので盛り込みました。もりもりです。毎回似たようなものを書いてしまうのは好きだからです。もりもりです。

    #沢深ワンドロライ
    #沢深
    depthsOfAMountainStream

    ≠razbliuto 家を出るまで後五分。右手で靴を履きながら左手をポケットへ乱雑に突っ込むと、かさりと何かが指先へ当たる。徐に取り出してみるとそこにあったのは少し毛羽立ったティッシュに包まれた、なにか。
    「なんだこれ」
     山王寮を退寮する時に実家に送りそのまま忘れていたこのコートを今年やっと思い出し、数年ぶりに袖を通したものだったから本当に何か検討もつかなかった。
     普段ならどうせゴミだろうと気にしないそれを確かめようと思ったのは偶然で。久しぶりに袖を通したこのコートがあの高校時代のものであること、それだけでこのゴミが意味を持ち、紙屑でさえ興味の対象となるのだから面白いものだった。
     くしゃくしゃに包んであったティッシュを、あまり細かいことは向いていない指先で破けないように慎重に広げる。
    「これって……」
     それは、包み紙で折られた鶴、だった。



    「ふかつさん俺にください」
    「何をベシ」
    「だからチョコ」
     こちらから見える横顔は「なんで俺が」とでも言いたげな表情をしていて、そのリアクションがあまりにも「嫌」が前面に出ていたので沢北は思わず「すげえ嫌そうじゃん」と言ってしまった。
    「おい、敬語」
    「はーい。すんません」
    「心を込めろベシ」
     めんどくせ。今度は口には出さなかったそれを沢北の顔に出ていたのか、深津の眉間の皺がさらに濃くなる。
    「おい、お前な」
    「はい!すみませんっした!」
     あと少しで二年目になる寮暮らしで一番初めに学んだのは、やばいことをしたときにはすぐに謝るということだった。すぐさま謝罪の姿勢を見せると、深津はふんと大きく息を吐いた。
    「女子から貰えるだろお前なら」
    「深津さんくれると思って全部断った」
    「敬語」
    「はーい。だから、深津さんください!」
    「チョコなんてもってないベシ」
    「えー」
    「お前は?」
     深津からの問いに「え?」と聞き返す。
    「お前が、普段からとてもとても大変スーパーベリーお世話になってる先輩に感謝の意を込めて送っても別にいいベシ」
     深津の声が大きくなる。沢北は少し考えて、「あー、河田さんとかっすか?」と言う。
    「喧嘩売ってるベシ?」
    「ごめん、冗談だって。お願いだからそんな冷たい目で見ないで」
    「敬語」
    「うす」
     そんなこんなで話していたら、チョコなんてどうでも良くなり、二人で近くのコンビニへアイスを買いに行くことにした。

    「うお、さみーっすね」
    「昼間晴れてたから余計に寒いベシ」
    「何度なんだろ。おかげで雪少し溶けましたけど、多分明日は雪か曇りっすよね」
     秋田の地に来てから、あまり晴れることがないことを初めて知った。いつも曇りか雪。それかどん曇り。毎朝ランニングに出かけると、整備の行き届いていない道が凍結しているせいで走ることができないなんて知らなかったのだ。日本海も濃い紺のような色をしていて、沢北の知っている海とは何もかも違って見えた。
    「てか頭がさみーっす」
    「まだ慣れないベシ?」
    「髪があんなに防寒してくれるなんて知らなかった」
     深津が襟元に顔を埋めてちいさく笑った。
    「ふかつさんは?寒くないんすか?」
    「寒い」
    「ええー、ほんとに?全然わかんない」
    「お前がうるさすぎるベシ」
    「だって分かりにくいよりは良くない?」
    「俺は慎み深い男ベシ。いざとなったら文を認めるベシ」
    「こわ」
    「敬語」
    「うーっす」
     話せば話すほど凍てつくような空気が喉を通り過ぎ肺へとたまる。だけれど、沢北も深津も黙ることなくコンビニへと向かって歩いた。


    「何見てるんすか」
    「ガム」
    「へえ」
     コンビニに入るなりレジ付近でしゃがみ込んだ深津の後ろを素通りし、アイス売り場へ向かう。あれだけ寒い寒いと騒いでいたけれど、部活終わりのアイスは別格に美味しい。……例え、身が凍えそうになろうとも。
    「何食おうかな……」
     いつもはパピコが好きだけれど、今日は無性にチョコアイスが食べたい気分だった。
    「決まったベシ?」
    「んー、生チョコアイスにしようか迷い中。深津さんは?たべないんすか?」
    「俺はいいベシ」
    「えー、もしかして俺のためについてきてくれたんすかー?」
     深津からの返事はないので、沢北は都合よくそれが深津の肯定だと解釈した。深津さん俺のこと大好きなんだから!と深津にバレないように喜ぶ。
     あと、もう一つ。沢北は深津がさっきまでいたガムのコーナーの隣にバレンタインコーナーがあるのを知っていた。だからこそ、コンビニに入ってすぐのところで深津がそこへ立ち寄るのを見た時、よっしゃあ!とガッツポーツを心の中であげ、様子を見たい気持ちを抑えながら後ろを素通りしたのだ。心の中では「深津さんくれないって言ってたけど、やっぱり俺にくれんじゃん〜」と歩く足は浮き足立っていたと思う。
    「じゃあ、やっぱりこれにしよ」
    「生チョコじゃなくていいベシ?」
    「うん、バレンタインだし。半分こしよ」
     沢北は結局、パピコのチョコ味を選んだ。深津はもう会計を済ませていたみたい(小さな袋を一つ持っていた)だから、急いでレジへ向かった。

    「はい半分」
    「ん、ありがとうベシ」
     深津とコンビニへ向かうと、決まって二人で食べるのはこのアイスだった。コンビニから寮へ帰るまでにひとつだと大きくて、半分にするのがちょうど良かった。あとは、一つのものを深津と半分にするという特別感に浸っていたというのもある。深津がどう思っていたかは知らないけれど。
    「今日、星きれーっすね」
    「うん」
     普段は雲の奥に隠れているそれも、たくさんの煌めきを纏って空に浮いている。
    「なんの星か全然わかんねーや」
    「月くらいしか分からないベシ」
    「俺もっす」
     深津が足を止めて、月と星が散らばる空を見上げた。その視線を追って沢北も上を向く。しばし上を見つめたあと、深津は口を開いた。
    「あの光は今放ってるものではなくて、過去のものらしいベシ」
    「過去のもの?」沢北は繰り返した。
    「月は自分で光らないとか、授業で習ったベシ?」
    「はい」
     いつ習ったかは忘れてしまったけれど、太陽からの光を反射して月の輝きが生まれるのだと何かで聞いた気がする。
    「地球と月は38万キロ離れてるベシ。光の速さを考えたらほぼ一秒前の光を見てることになるベシ」
    「月って38万キロも離れてるんすね。遠いや」
    「遠いベシ?」
    「うん、遠いっすよ」
    「じゃあ、アメリカなんてすぐベシ」
     深津の黒い目がこちらを向いた。じいと覗く仕草は深津が良くやるもので、それが心の奥底まで明け透けに晒しているように感じ、沢北は慌てて視線を逸らす。
    「楽しかったベシ。アメリカ遠征」
    「うん、俺も。……ぞくぞくした」
     きっと主将の深津は知っていた。アメリカ遠征後の沢北に、短期ではあるものの留学の誘いが来ていること。そしてそれに行けば、より自分の道が開けるということ。もしかしたら、行きたい!と食いついた割に煮え切らない態度をとっていた沢北に困った堂本から相談を受けていたのかもしれない。
    「月には宇宙飛行士しか行けないけれど、アメリカなんて飛行機でピャっていってすぐベシ。英語もフィーリングでいけるベシ。飯……も、まあなんとかなるベシ。米送るように河田にお願いするベシ。で、お前があと悩んでることは?」
     あと、悩んでいること。ずっと頭にあって、沢北を悩ませていること。それを素直に口するのは憚られた。だけれど、「ん?」と促す深津の表情がどうにも優しくて、温かくて。本音が知らず知らずのうちに溢れでてしまう。
    「……ふかつさん、いないじゃん」
     ぱちり、深津が瞬いた。「お前」と深津が口を開いたところで、自分が何を言ったのかやっと気づいた沢北がその口を塞ごうと手を伸ばす。
    「やめて、わかる。わかるから、深津さんが言おうとしてること」
     深津はするりとその手を躱し、焦る沢北に構わず、「……お前、バスケ以外頭にあったベシ?」と至極真面目に沢北に問うてきた。
    「っ………〜〜〜〜!」
     かあああ、と耳裏から首にかけて熱が集まるのを感じる。絶対に顔も赤くなっているその様子を深津に晒し続けていることに耐えきれず、その場にしゃがみ込み、照れを隠すように顔を手で隠す。
    「ほら〜……、もう、知ってるって。知ってますよ。俺も思ってんすよ、なんでって。でもしょうがないじゃん。ずっと深津さんが頭ん中にいるし、考えちゃうし、どうしてくれんのって。ねえ、どうやったら消えてくれるんすか、頭の中から。でも、無理っす。もう一人で抱えてらんねーよ。深津さん、……おれね、」
     ――……好き、なんすけど。
     最後の方は、もう、沢北の手の中に消え掛かっていたと思う。
    「もー無理無理無理。見ないで、ねえ。こんな感じで言おうと思ってなかったのに。てか絶対気付いてたでしょ深津さん。俺が好きって。はあ、本当無理すぎる」
     黙る深津に耐えきれず、沢北は永遠に話し続けた。顔なんてもう一生あげられないかもしれない。
    「だからベシ?」
    「え?」
    「だから俺からチョコ欲しかったベシ?」
     指の隙間からちらりと見上げる。深津の眦が楽しそうに緩められ、言葉も心なしか弾んでいるような気がする。
     ――楽しんでやがる、この人。
    「……〜〜〜〜っあんた、本当に性格悪い」
    「おい、敬語使えベシ」
    「うるせーーー!!!!!」
     パッと立ち上がった沢北は羞恥に耐えきれず、深津を置いて駆け出した。


     ――トントントン
     ドアが控えめに音を立てた。それに「はい」と返事をし、ドアの隙間から顔を覗かせた深津に、「ドアのノックは三回するベシ」と入寮したばかりの沢北に教えてくれたことを思い出した。その数日後に間違えて深津の部屋を二回ノックした沢北へ「二回はトイレのノックベシ。先輩の部屋をトイレにしたいのか?」と凄んできたのも深津だった。その頃は深津のことをヤバい先輩としか認知していなかったのに、こうやって好きになるなんて考えもしなかった。
    「まだ拗ねてるベシ?」
    「……」
     年甲斐にもなく臍を曲げ拗ねている、という自覚はある。だから、深津へ「……チョコくれたら許します」と告げた。あんたが早く買ったチョコをくれれば機嫌をなおすって言ってんだよ、と言外に意味を込めて。
    「だから、チョコ持って無いベシ」
    「は?さっきコンビニで何買ってたんすか?」
    「ガム」
     ほら、とジャージのポケットから差し出されたのは、本当にミントのガムで。
    「はあ?!あんた本当にガム買ってんの?!」
    「……?ガム見てたんだからガム買うだろうが」
     深津は本当に意味がわからないというような顔をして沢北を見てくる。
    「はーーーーーーーあ」
    「その特大ため息は何ベシ」
    「聞かせてんすよ、わざと」
     ベッドの上で体育座りをして膝小僧に額を押し付ける。数時間前の浮かれていた自分を殴りたかった。お前、全然その先輩、チョコみてねーぞ。本当に自分で食うガム見てんぞ、と。「う"〜〜」と唸りながら過去の自分に悔いていると、「……そんなに欲しかったベシ?」と深津が聞いてくる。
     ――欲しかった。どうしても深津さんのがいい。
     顔を埋めながらモゴモゴと沢北は言った。しばらくして、「ちょっと待ってろ」と深津は告げ、ガサゴソと音がしたかと思ったら、パタンとドアが閉まる音がした。
     ――え、帰った?こんな状態の俺を置いて?
     だけれど、待てと言われたし、今更ここでチョコを作ってくれるわけでは無いのだし、と諦め半分、深津が何かをしてくれているという期待半分の気持ちを抱えながら大人しく待つ。
    「もういいベシ。顔上げろ」
    「なに、もお」
     腕の隙間からそろそろと顔を上げると、拳をこちらに差し出していた。「ん」と言われ、両手で受け皿を手で作り、深津へ向ける。するとその上にパラパラと何かが降ってきた。
    「なんすかこれ、……鶴?」
    「お守りベシ。俺はアメリカには行けないから持ってろベシ」
     それは、たくさんの折り鶴だった。きちんと折り紙で折られているものもあれば、銀色の菓子の包み紙で折られているものもある。とそこまで考えて、沢北には、この銀色の包み紙に見覚えがあった。しかも、ついさっき。
    「ねえ、これ、今食ったガムじゃん絶対」
    「これは今急いで折ったベシ。他のやつは千羽鶴折ろうとして無理を悟ったベシ」
    「五枚しかないっすよ。諦めるの早すぎるって。こんなんで騙されないんすからね……」と沢北はぶつぶつ言いながらもその折り鶴を潰さないように掌で包み込む。
    「……器用っすね深津さん」
    「指先攣りそうになったベシ」
    「ふうん、それくらい俺のこと心配なんだ」
    「……当たり前ベシ」
    「……」
    「……なんか、言え」
     素直に喜ぶには拗ねすぎて、手放しに喜べなかったけれどニヤつく口元は隠しきれていなかったように思う。
    「どうしようこれ。絶対潰す自信ある」
    「分散させろベシ。これはコートに入れとくベシ。これは使ってるエナメルに入れるべし。これは筆箱で、あとは……」
    「うん。わかった」
     深津の指示のもと、ティッシュで包んだ折り鶴たちをいそいそとしまっていく。
    「……は、」
     深津が何かを口にして、「なんすか?」沢北はバックを開きながら横目で聞き返す。
    「いや、頑張れよ。お守りあるんだから」
    「えへへ、うん。もう一生大事にしますこれ」


     
     銀色の包装紙のようなものが、玄関の灯りに反射してきらりと鈍い光を放った。
     ――そうだ。そういうこともあった。
     なんで忘れていたのだろう。大好きだった深津さん。あの時食べたアイスの味。星の煌めき。アメリカよりも何倍も遠い月。深津さんに少し近づくとミントのガムの匂いがした。少し不器用に折られた鶴が、遠慮がちに差し出されたそれがチョコよりも何倍も嬉しくて。一生大事にします、と言ったはずだったのに。
     沢北は何気なしに、折られた紙の隙間から指を差し込む。丸く固くなった指先は細かい作業には向かないことは分かっていたから、切れないよう慎重に、息をするのも忘れてその折り目を開いていった。すると、
    「っ……は、」
     思わず、息が詰まる。かっと目頭が熱くなり、どろりと感情が涙となって溢れ出る。だって、開いた先に『俺も好きだ、バカ』なんて書いてあるなんて思わないじゃないか。なんで、なんでなの、こんなのって。
     自身に刻まれた当時の記憶が走馬灯のように駆け巡っていき、沢北はしばらくの間動くことが出来なかった。





    「どうしたピョン?」
     背後ろから、今し方、思い返していた声がする。沢北の記憶よりも深みが増して、だけれど愛おしいという心のうちを隠さなくなったあの声だった。
     玄関とリビングの仕切りのドアから顔を覗かせていた深津は、近くに寄ってきて沢北の顔を覗き込み、ギョッとした顔をする。
    「な、んで泣いてるピョン」
     それはそうだ。五分前くらいに「行ってきます!」と元気に出て行ったやつが玄関で立ち尽くし、しかもボロボロに涙をこぼしているのだから。
    「深津さん、これって、ふかつさんねえ、」
    「何見て、ってお前これ」
    「ねえ、いつから好きだったんすか、俺のこと、ねえ教えてふかつさん」
     深津と再会したのはここ二年くらいのことだった。深津から連絡があり、二人で会ったあとやっぱり諦め切れないんですとアプローチをかけたのは沢北からで、深津はそれに頷いただけだった。だけれど、二年も付き合っていれば流石にわかる。深津が流されて付き合ってくれているのではなく、ちゃんと好いてくれているということなんて。最近では隠さずに愛の言葉を伝えてくれることもある。でもそれは、自分が闘アプローチをした結果のことだと思っていたのに。
     差し出したボロボロの紙に、深津は合点がいったようで、ああと一つ頷いた。
    「……気付くの遅すぎピョン」
    「っふかつさん〜〜……!」
     感極まって深津へ飛びつくも、鍛えられた身体ではびくともしない。
    「嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい」
    「怖いピョン。一回落ち着くピョン」
    「むりっ……!」
     頬へ擦り寄っても、首元へ顔を埋めても、深津は怒らなかった。時折り沢北のうなじをそっと撫で、刈り上げの部分を触るくらいだった。
    「こんなん書いて俺に爪痕残しすぎなんすよ、本当に」
    「まあ、俺もどうしてもお前がよかったってことピョン」
    「もおおおおお!!!!そんなこと言って!!!!!外出られないじゃん!!!」
    「あ、電車あと七分ピョン」
     深津がぺりっと沢北を剥がすと、無情にもぽいっと玄関の外へと投げ出された。
    「帰ったら覚悟しててくださいね!!!」
     閉められたドアの外、虚しく廊下に響き渡る沢北の声。少し遅れて笑い声が中から聞こえたなんて、自分の都合のいい妄想に過ぎないのだろう。帰ったら聞いてみようと思った。きっと深津は「知らないピョーン」と逃げるだろうけど。
    「やっべー、あと四分だ」
     浮つく足元で地面を踏み締めながら、沢北は駅へと走っていった。

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