≠razbliuto 家を出るまで後五分。右手で靴を履きながら左手をポケットへ乱雑に突っ込むと、かさりと何かが指先へ当たる。徐に取り出してみるとそこにあったのは少し毛羽立ったティッシュに包まれた、なにか。
「なんだこれ」
山王寮を退寮する時に実家に送りそのまま忘れていたこのコートを今年やっと思い出し、数年ぶりに袖を通したものだったから本当に何か検討もつかなかった。
普段ならどうせゴミだろうと気にしないそれを確かめようと思ったのは偶然で。久しぶりに袖を通したこのコートがあの高校時代のものであること、それだけでこのゴミが意味を持ち、紙屑でさえ興味の対象となるのだから面白いものだった。
くしゃくしゃに包んであったティッシュを、あまり細かいことは向いていない指先で破けないように慎重に広げる。
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