Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    桃本まゆこ

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 23

    桃本まゆこ

    ☆quiet follow

    ワンライ「おれだって我慢してるのに」で書きました。ふかつさんが阿〇ヶ谷姉妹みたいなことしたら可愛いな~と思って。知らない方は「阿〇ヶ谷姉妹 誤爆」とかで検索してみてください。すぐ出てきます。

    #沢深
    depthsOfAMountainStream
    #沢深ワンドロライ

    沢深ワンライ「おれだって我慢してるのに」 “西友寄ってく 牛乳まだあるか?”

     SNS上に突如として流れたその一言は大いにファンをざわめかせた。それがバスケットボール選手深津一成のアカウントから発信されたものだったからだ。
     深津は元々、SNSの更新がマメなタイプではない。試合やチームの公式な催しに関する告知はあるもののそれは明らかにスタッフの手によるもので、深津本人が何かを投稿するということは年に数回あるかどうか、という最低の更新頻度だ。ある年など「あけましておめでとうございます」の一言と共に空の画像が添えられた投稿の次が「夏」という一文字のみが添えられた西瓜の写真だった。その間約8か月である。その後もう少し投稿を増やすようにと広報から怒られたというエピソードを披露し、ファンが狂喜したことは言うまでもない。そんな深津のアカウントからオフシーズンである現在唐突に投稿されたその言葉はインターネット上を駆け巡った。

     ――えっ
     ――誤爆?
     ――牛乳あります!
     ――うちにあるよ~♡
     ――これやばいんじゃない
     ――深津さん大誤爆
     —―西友行くんだw
     ――どう考えても誰かと同棲してんじゃん
     ――リアコ生きてる?

     瞬く間にコメントが増えていくなか、深津の次の投稿はそれからたっぷり数十分後だった。

    “うちの居候にLINEしたつもりでしたがうっかり全世界に聞いてしまいました”

     ――もしかして今まで西友で買い物してた?
     ――深津選手マイペースすぎないか
     ――まってまってまって居候って!?!?!??!
     ――は?何?無理 何? は??????
     ――リアコうざ落ち着けよ
     —―牛乳買ったんですか~?
     ――LINEはピョンつかないんだ……


    「ねぇトレンド入りしてるよ一成さん」
     ふはっ、と吹き出すような笑い声をあげて190cmを越えた身体が背中から圧し掛かってくる。長い腕にするりと腰を抱かれて深津は「こら」と声を上げた。
    「栄治、料理中にくっつくなって何度も言ってるピョン」
     コンロの上では買ったばかりの牛乳をふんだんに使った出来立てのクリームシチューがくつくつと煮え、温かな湯気を上げている。
    「ファンの子たち阿鼻叫喚……あっイチノさんまでコメントつけてる。完全に面白がってるなこの人」
     左手で深津の腰を抱き、右手にスマホを掲げたまま沢北がクスクスと笑う。そもそも深津がこんなことをやらかした原因はアメリカから一時帰国中の居候のリクエストのせいである。深津はため息をつきながら後ろを睨んだ。
    「広報の人に怒られたらお前のせいピョン」
    「まぁどうせみんな分かってるでしょ、チームには交際報告してるんだし」
     先ほどからにまにまと唇を緩ませて、沢北はやけに上機嫌だ。深津が自身のミスに気付かず買い物を終えて自宅に帰り着く頃には件の投稿はすっかり拡散されており、家で帰りを待っていた沢北までも知るところなっていた。
    「牛乳あるよ♡って俺もコメントしようかと思ったけどやめたんだから、えらいでしょ?」
    「えらくもなんともないピョン。そんなことしたら追い出すピョン」
     コンロの火を落とし、鍋にふたをする。体ごと振り向くと待ち構えていたように沢北の唇が触れた。最初は額に、次に鼻先に、それから唇に、ちゅっちゅっちゅっと音を立てて三つのキスが降ってくる。
    「居候じゃなくて恋人って書いてくれてもよかったんすよ、俺は」
    「そんなの、もっと騒ぎになるピョン」
    「あ~あ。早く世界中に一成さんは俺のですって言いたいな」
     ぎゅっと強く抱き着いてくる沢北の大きな背中を、深津の手がゆっくりと撫でる。
    「……我慢してるのはお前だけじゃないピョン」
     遠く海の向こうで輝くこの男は俺のものだと、世界中に向かって思いっきり叫べたら。そう思う瞬間がこれまで何度あったと思っているのか。少しばかり恨めしく思うが深津がそれを沢北に伝えたことは一度もない。
    「か、一成さん今なんて言っ」
    「もう言わないピョン」
    「も~……アメリカ帰りたくなくなるじゃん……」
    「それは困るピョン。せいぜいがっぽり稼いでくるピョン」
    「照れ隠しでしょ、分かってんですからね」
     強く抱き締めていた腕がほどけて、こつん、と額同士がぶつかった。
     間近に見つめる瞳は熱く潤んでいる。唇同士が近付いて、深津はゆっくりとまぶたを降ろした。

     この「深津選手誤爆事件」は、二人が結婚を明らかにした後も両者のファンに末永く語り継がれることとなるのだが、それはもう少しだけ未来の話。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺☺🍑☺💕💕💕💕💕🙏🙏🙏🙏☺💖💖💜💜💜💜💜💜💜💜💜💜❤❤❤❤💒💒💒💒💒🍑🍑☺☺☺💖☺💒💒💒💒💒💒💋👍💯💯💒💖💒💖😍😍💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    桃本まゆこ

    DONE沢深webオンリー『さわぐ心をふかく射止めて』展示作品です。以前の壁打ち「思い出が欲しい深津」のネタを小説にしました。高校時代は始まらなかった沢深が十年後に急接近する大人沢深です。後半は書き終えたらアップします。それにしても天才のイベントタイトルですね!開催ありがとうございます!
    The Way Back Home(前編)1.

     さっき貰ったばかりの色紙を潰れないように一番上に入れて、ボストンバッグのファスナーを閉める。ほとんど余白がないくらいびっしり埋まった寄せ書きを思い出すとまた涙が出そうになるけど、泣いてばかりはいられない。ずっと狭いと思っていた二人一組のこの部屋は、一人分の荷物がなくなると随分ガランとして見えた。俺は明日、この寮を出る。コンコンとドアを叩く音がして、俺は慌てて両目を拭った。
    「沢北、いるピョン?」
    「はい、どうぞ」
     ドアの外から聞こえてくるのは予想通りの声。俺は少し緊張しながらドアを開けた。
    「……お前ひとりピョン?」
    「ッス。佐藤は別の部屋行ってます」
     一歩中に入ってきた深津さんが部屋の中に視線を走らせて訊ねた。食堂で見送りの会を開いてもらったあと、最後に二人で話したいことがあるから時間をくれ、と言ったのは深津さんの方からだった。まさかこの期に及んで説教ではないと思うけど、二人きりで話したい内容の心当たりがなかったから、同室の奴には今だけ出て行ってもらった。
    13354

    桃本まゆこ

    TRAINING沢深だけど沢が影も形も出てきません。深に片思いするモブ女の一人語り。苦手な方はごめんなさい。
    モブの名前は山内恵令奈ちゃん。ほんとに何となく付けただけですので、もし同姓同名の方がいらっしゃってこの名前は嫌だ!とかあったら教えてください。すぐ変えます!
    金木犀/ひとりよがりの恋金木犀/ひとりよがりの恋

     私の好きな人は、ちょっと変わっている。マイペースで、いつもぼーっとしてて、無表情で、口を開けばピョンピョン言っている。バスケ部の特待生で、高校の頃は全国で一番バスケが強い学校のキャプテンだったらしい。
     背が高くて、いつも変な寝癖がついてて、手のひらが大きくて、いつもスエットやジャージ姿で全然おしゃれじゃなくって、優しくて、笑顔が可愛い。私の好きな人。


    「深津くん、おはよー」
    「山内さん。おはようピョン」
    「あはは! おはようピョン~」
     教室の隅にいる深津くんに駆け寄って、一つ離れた隣の席に腰を下ろした。月曜一限の授業なんて真面目に来ている学生はほとんどいない。教室の座席はガラガラだ。平日は毎日バスケ部の朝練があるらしく、深津くんは一限の授業も余裕なのだという。私はなんとか深津くんと同じ授業を取るのに必死で早起きしているっていうのに。
    6030

    related works

    桃本まゆこ

    DONEワンライ「おれだって我慢してるのに」で書きました。ふかつさんが阿〇ヶ谷姉妹みたいなことしたら可愛いな~と思って。知らない方は「阿〇ヶ谷姉妹 誤爆」とかで検索してみてください。すぐ出てきます。
    沢深ワンライ「おれだって我慢してるのに」 “西友寄ってく 牛乳まだあるか?”

     SNS上に突如として流れたその一言は大いにファンをざわめかせた。それがバスケットボール選手深津一成のアカウントから発信されたものだったからだ。
     深津は元々、SNSの更新がマメなタイプではない。試合やチームの公式な催しに関する告知はあるもののそれは明らかにスタッフの手によるもので、深津本人が何かを投稿するということは年に数回あるかどうか、という最低の更新頻度だ。ある年など「あけましておめでとうございます」の一言と共に空の画像が添えられた投稿の次が「夏」という一文字のみが添えられた西瓜の写真だった。その間約8か月である。その後もう少し投稿を増やすようにと広報から怒られたというエピソードを披露し、ファンが狂喜したことは言うまでもない。そんな深津のアカウントからオフシーズンである現在唐突に投稿されたその言葉はインターネット上を駆け巡った。
    1867

    recommended works

    Orr_Ebi

    DONE俳優パロ沢深。憑依型の深津を書きたかっただけ。バスケもしなければ特に恋愛もしない。時代考証その他雑です許してください。本当に好き勝手やってるので許せる方のみ読んでください。すみませんでした。
     男は生粋の軍人だった。父は軍部総督、母は医務局で働く看護軍人。いつも国とはなにか、戦うとはなにかを聞かされ、育ってきた。
    15の時、士官学校に入った。幼い時から父自ら手解きを受けていたので、学校の平凡な訓練は退屈でしょうがなかった。17になった夏、士官学校の同級生と街に出かけた。士官学校は全寮制で、関東の田舎から出てきていた男にとって、東京という街で遊ぶのは刺激的だった。同級生は、東京出身だったから危ない遊びや男1人だけでは入れない場所まで精通していて、男を連れ出した。
    ある時、言われた。「女を抱いたことはあるか?」ない。まだ純粋で、生粋の童貞だ。口付けを交わしたことすら無かった。女子の手を握るなどもってのほか。男にとって、女とは未知の生物だった。「それなら、練習しておいた方がいい」練習?「お前は士官学校でも1番の成績だ。おそらく首席で卒業するだろう。出世の道に、女と酒はつきものだから、今から練習しておけ」まさかこれから、遊郭にでも行くのか。女を抱きに?「そんなわけない、まだ士官学生のうちから女を抱いて、軍人になってからその女に子供が出来たなんて言われたらどうする。後の祭りだ。抱くのは女じゃない」じゃあなんだ。「男だよ男」
    13411

    六本線

    MAIKING9月のグッコミの無配です。
    高校生のころに曖昧な関係のまま終わった二人が大人になって再会する話。
    ※中途半端なところで終わります。全体の話の多分三分の一くらい。
    ※鼻血の描写があります。
    no title
     久しぶりの再会、という訳ではない。高校時代、共に汗を流して競技漬けの毎日を戦った友人たちは、バスケットボールの強豪大学に進むものが多かった。試合でことあるごとに顔を合わせていたし、大人になってからも何かしらか理由を見つけて集まっていた。それほど、修羅の日々を三年間最後まで共有しきった経験は強固なものだった。
     店を選ぶのは大概がセンスの良い一之倉だ。大衆的過ぎず、かと言ってオシャレ路線にも振り切らない丁度良いところをつくので、すっかり信頼されていた。
     その日、一之倉から指定されたのは普段よりも高級志向の料亭だった。
    都内一等地の広尾だけあって、金曜の夜なのに周囲の喧騒にはどこか品があった。携帯のマップを頼りに店を探すと、古民家然とした建物の前に着く。控えめな看板には、教えられた店名が達筆な文字で浮き彫りにされていた。仕事の付き合いでこうした落ち着いた店に来ることはたまにあるが、仲間内の集まりで選ばれることはほぼ無いような場所だ。
    13770