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    リハビリを兼ねて、尾谷小説書いてみました。
    谷垣の前世を捏造しています。苦手な方はご注意ください。
    前世の記憶あり転生話となっています。

    #金カム腐
    golden-camRot
    #尾谷
    otani

    名が表すもの/尾谷尾谷のお話


    S N Sを見ていると、目の端に映る広告によくある漫画の煽り文句にも、生まれ変わり、前世の記憶、と言う言葉はよく見かける。
    俺自身が前世の記憶を持って産まれ落ちたからか、幼少の頃から抱いていた疑問を埋めてくれるような、出会いに少なからず期待していた。
    顔に傷のある男や、やけに大人っぽい青い目の少女、脱獄王と名乗っていた飄々とした男、狐の毛皮で作られた首巻きをした、赤い着物の美しい女。
    酒が飲める年齢になっても、一切出会うことはなかった。
    広告に紹介されている、生まれ変わりや前世の記憶がある漫画を読めば、出会い方がわかるのかもしれない。何冊も読んだが、漫画のような偶然とは言えない出会いはなく。次第にこの記憶は、幼少の頃に俺自身が作った妄想を信じているだけかもしれない。とさえ思い始めた。
    だからいつも思っていた。
    前世の記憶があるまま産まれ、前世に関わっていた人が変わらない姿で生きていて、また関わっていく。
    そんな事があるんだろうか。

    「で、俺と出会ったって訳か」
    目の前の男の、記憶を変わらない猫のような鋭い眼差しに強く頷いた。
    二十四才の春。慣れない営業の仕事を終え、少し休もうと何気なく入ったコーヒーショップの奥の席。忘れようがない男の姿を見つけ、動悸が一気に早くなった。
    撫でつけたツーブロックの、長い髪を撫で付ける時の少しわざとらしい仕草。猫のような鋭い眼差しを小さなノートパソコンに向けている横顔。引き締まった無駄のない体を、仕立てのいいスーツに包んでいる。コーヒーカップを傾けても、パソコンの画面から一切視線を動かさない。
    前世の記憶の中、しなやかな体を軍服に包み、長く伸ばした髪を後ろに撫でつけ、独特な仕草でいつも撫でつけていた。同じ焚き火を囲んで飯を食べていても、飯にはあまり興味がなかったように見えた。
    何度もこっそりと視線を伺いながら、話かけようかと思案しているところへテーブルに影ができた。顔を上げると、さっきまで奥の席で仕事していたはずの男が俺を冷たく見下ろし、
    「さっきからジロジロ見てただろ、何か用か」
    鼻にかかった低い声も記憶と変わらず、俺は確かあの時驚きすぎて何も言えなくて、男に凄まれた気がする。

    尾形は生まれ変わっても尾形という名字で、話したい事があると名刺を交換し、数日連絡を取り合った後、初めて二人で居酒屋に来た。
    尾形も薄らとだが記憶があるらしく「俺の名前は谷垣だ」と伝えると、
    「名刺をもらったから知ってる。が、お前が聞きたいのはそうじゃねえんだろ。お前の名前は覚えてるよ源次郎」
    下の名前を呼ばれた時、体の奥から言いようのない熱いものが湧き上がってきた。
    俺が幼少の時からあった記憶は妄想ではなく本当に現実で、前世での記憶の中で俺と尾形は一時期、体を重ねあう関係だったことも事実ということだ。
    俺はそういう趣味はないが、前世の俺は軍隊という特殊な環境の中、気がつけば尾形と寝るようになり、美しい女と寝るまで尾形の体で溜まった欲を発散していた、という事実も現実だった。
    尾形はどう思っているのか、前世でも表情の読めない男だったが、今も全く読めない。こんなことを今になって恥ずかしがっていること自体がおかしい気がして、赤くなりそうな頬や耳を、酒に酔ったことにしてしまいたくてビールジョッキを一気に煽った。
    「いい飲みっぷりだな」
    俺が質問に答えなかったことは気にしていないのか、ぼそりと呟くと尾形は手をあげ、店員に酒の追加オーダーを伝えた。
    「ところで、俺が死んだ後お前はどうしてたんだ」
    「お前が亡くなってから……尾形の記憶は汽車のところで終わっているのか」
    「ああ、だからあの後どうなったか知りたかったが、誰とも出会わなくてな。聞くに聞けなかった。今日は時間があるんだろ、長くなってもいい。鶴見中尉や杉元がどうなったか教えてくれ」
    強い眼差しに俺は頷くと、
    「俺はそんなに話が上手い訳じゃないし、汽車の件は杉元に聞いただけだから、真実かどうかは分からないが……」
    「それでもいい、俺にも知る権利はある」
    その言葉に、追加できたビールで口を潤すと、ポツポツと話し始めた。

    「と言う訳で、結局鶴見中尉の遺体は上がらなかった」
    「そうか」
    全てを話し終え、一番聞きたかったであろう事実を話すと、尾形はそのまま黙り込み焼き鳥の串を何をするでもなく弄っている。
    俺も彼の沈黙に何か返す言葉も浮かばずに黙り込んでいると、顔を俯かせたままの尾形が沈黙を破って空気を震わせた。
    「お前は……」
    「……」
    「お前はどんな人生を送ったんだ。教えてくれ」
    顔を上げた尾形の眼差しは、俺を見ているようでどこか遠い何かを見つめているようで、見たことのない尾形の表情に一瞬言葉を失ったが、
    「俺の人生か……至って普通さ」
    前置きをすると、覚えている限りの前世の話を伝えた。
    「お前ガキを十五人も作ったのか。獣並みだな」
    呆れたようにいう尾形は酔いも回っているのか、頰を赤く染め、肘をテーブルにつくと気だるそうに避けた焼き鳥を頬張っている。
    俺も冷めた唐揚げを片付けながら、
    「いいだろ別に……俺も彼女も子供は好きだったし望んでいたからな」
    「ハッ、幸せな生活を送ってたって訳か」
    どこか寂しそうに言った尾形が気になった。前世の記憶の中で決して恵まれていなかった尾形の家族を思うと、前世の記憶という少し曖昧な現象の中、緒方に伝えるべきかどうか悩んでいた事があった。
    これを話すと、尾形は怒るかもしれないし、逆に落ち込むかもしれない。
    彼は今世では幸せな家族に育てられ、弟も健在だと聞いた。今が幸せなのに、水を差すような気がする。
    このまま黙っていよう。
    そう思ったが、目の前の尾形を見ると衝動的に声をかけていた。
    「尾形、気を悪くしないでくれるといいんだが、聞いてくれるか」
    「なんだ」
    「俺には十五人の子供がいたと話したよな。その子たちの名前を今でも覚えてるんだが……十四番目の男の子には百之助、十五番目の男の子には勇作と名付けた」
    瞬間、前世の記憶の中と変わらない、目を見開きじっと俺の顔を見つめてきた。
    こいつが怒ったら今の俺で止められるだろうか。
    驚いた顔の尾形を見つめながら身構えていると、尾形は肩を振るわせるとクックックと笑い、
    「お前のガキにつける名前じゃないだろ」
    お前は変わってるな、と言って声を出して笑う尾形に、気が抜けた俺は椅子の上でぐったりしながら、釣られるように笑った。
    「そうかもしれないが、俺にとっては大事な名前だったからな」
    頬杖をつきながらまだ笑っている尾形を見れば、急に笑いを止め、
    「それは今もか」
    急に真顔になり、頬杖をつく俺の腕を掴む尾形の手が、北海道の寒い冬の中、全裸の俺の体を這い回っていた時の記憶の中にある冷たさではなく、酒の力も借りているのか火傷しそうな程の熱さに思わず頬杖をつくのをやめ体を後ろに引いた。
    「なあ、どうなんだ源次郎」
    ずいっと顔を近づけてくる尾形の瞳は昔のように真っ暗ではなく、黒さの中にきらきらとした欲望の煌めきが垣間見える。
    「時間は、長くなってもいいと言ったな」
    何も言っていないのに、目の前で前世の記憶の中にある少し胡散臭そうな笑みを浮かべる尾形を見つめていると、そんな性癖はないと思っていたのに。
    体の奥から湧き上がる、懐かしい疼きに思わず首を縦に振っていた。

    事が済んだ後、ベッドで背中から抱きしめられながら、
    「百之助と勇作、どっちを可愛がってたんだ」
    と聞いてくるあたり、尾形は前世から変わっていないんだと思いながら、
    「俺の子だ、どっちも同じだけ可愛がったよ」
    答えると、小さくそうか、と呟き尾形は俺の体を強く抱きしめてきた。


    「源次郎さん、この子達の和名はどうしますか」
    インカラマッが、十四番目と十五番目に生まれた双子を抱いてやってきた。
    まだ言葉を喋ることの出来ない二人だが、お互いの服を握り合い、あーとかうーとか言いながら、なにか意思疎通をしている。
    インカラマッがにこにこしながら両手を広げた俺に子供を預けてきた。しっかり両腕で抱きしめると、喃語を喋っていた二人は口を開けたまま俺を見上げてくる。にっこり笑いかけると、二人揃って笑い返してくる。愛しさに頬ずりしようとすると、「髭がチクチクすると泣いちゃいますよ」と言われ、すぐに顔を離した。
    「もう決めてたんだ」
    「そうだったんですか。なんて名前にされるんですか」
    「上の子は百之助、下の子は勇作にしよう」
    「いい名前ですね!明日さっそく登録に行きましょう」
    「ああ、いこうか。なあ、百之助、勇作」
    初めてでは無い、名を呼ぶと二人は俺の顔をじっと見つめ、手を伸ばして笑いかけてきた。
    「そうか、気に入ってくれたか」
    俺も笑い返すと、背後に衝撃が走った。振り向くと、1番上の子の嫁が産んだ子供が俺を見上げていた。
    「こっちに来てたのか」
    声をかけると、孫は大きく頷いた。
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