ひだまりの貴方暖かな陽だまりの下。
羅浮にある景元のご立派な私邸にて、今日も穏やかに、限りある時間を過ごす。
「最近は冷えるけれど、ずっと良い天気だね」
紆余曲折の末、人生を共に歩まんとする景元が柔かに話す。
「晴れていると心なしか、健やかに感じられてとても気持ちが良いな」
丹恒は、少しばかり吹いた風で彼方此方へと向いてしまった髪を整えながら、そう応えた。
――景元はそんな様子をキラキラ輝く琥珀色の瞳で見つめ…何を思ったか。 指先で丹恒のつむじから髪先、瞼や頬、喉仏などありとあらゆる場所を、ゆっ くりと優しく撫で始めたのである。
丹恒は偶にくすぐったそうにしていたが、大きくて可愛い恋人の気が済むまでじっとしていた。
恋人との優しいひとときが終わった後。丹恒はそっと景元の大きな背中に抱きついた。
「…丹恒殿、寒いのかい?もしかして人肌が恋しくなってしまったかな。ははっ…冗談だ。直ぐ身体が温まるように毛布を持ってくるから待っていて」
よく出来た恋人は、寝室にある毛布を運ぼうかと腰を上げようとしたが、どうやら丹恒の様子がおかしい。 彼は景元の言葉を聞いた途端、肩を揺らしながら即座に下を向いてしまったのだ。
「そんなに震えるほど寒かったのかな?ちょっと待っていて、持ってくるから」
―刹那、丹恒は中途半端に立ち上がった景元の腰にむんずと抱きつき、勢いに任せて押し倒した。
「っ…いててて…丹恒殿、危ないって…!」
ほんの少し、怒った口調で諌めていると。
「ふふっ…はははは!」
丹恒の軽やかな笑い声が聞こえると同時に、彼の目尻には涙が溜まっていた。景元の行動が相当面白かったらしい。
「いや…なに、ちょっとからかってやろうと思っただけなんだが…ふふっ…」
「丹恒殿!寒いんじゃなかったのかい…」
丹恒の目尻を指先で優しく拭いながら、景元は物申す。
「…ふふっそうだな。毛布も有難いが…俺にもどうか、構ってほしい。貴方が優しく触れ合ってくるものだから、もっともっとと…俺は大層欲張りになってしまった」
目尻を下げながら和かに景元を見つめる丹恒のあまりに愛おしい姿に、銀髪の男は瞬く間に我慢が出来なくなってしまった。
「丹恒っ…君はなんてずるい子だ…どうなっても知らないからね」
景元の指先が怪しげな意志を持ちつつも、丹恒の左手指と自分の右手指をひと指ひと指、大切に絡ませていると。急に黒髪の青年は絡めていた指を解き、甲をぺんぺんと優しく叩く。
「…景元は毛布を持ってきてくれるんじゃなかったか?もし、それでも寒かったら、貴方の太陽のような身体で温めてほしい」
その言葉を聞いた瞬間、景元はすくっと立ち上がり目にも留まらぬ速さで寝室へ、ドタバタと音を立てながら消えていったそう。