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    たつき

    @sekiihiduki

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    たつき

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    マスターの勧めで愛の話を読む道満の話。書き途中。
    恋愛、親愛、敬愛、無償の愛…愛ってなんだろうね。

    正直煮詰まっている。

    完成→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19152612

    愛の話をしよう「道満、これ読んでみて。」
    突然マスターから数冊の本を渡され、蘆屋道満は困惑する。
    カルデアに召喚されてから数ヶ月余り。度重なる戦闘に絆レベルはとうに5を超え、マスターからも「頼りにしてる」などと言われるようになってきた頃であった。手渡された本はどれも子供向けの童話ばかり。子供姿のサーヴァント達とおままごとに興じていたところを見られ、読み聞かせでも頼まれているのかと思えばそうではないらしい。
    「今度感想聞かせてね。」
    マスターは深くは語らず、ただ本を読むよう言う。訳がわからないままマスターの命ならばと、大人しく図書館で本を読み始める。

    一冊目の「美女と野獣」は人を見た目の美醜でしか見られなかった王子が呪いをかけられ、真実の愛と心の美しさを知る話。ざっとそんなことが描かれているんだろうが、はっきり言って美女相手の時点で本当に心の美しさに心動かされたのか疑問だ。「醜女と野獣」なら納得もしようものを。

    その後も「カエルの王子様」「星の銀貨」「雪の女王」……と読むがマスターが何をさせたいのか全くわからない。
    最後に手に取った「人魚姫」を開く。恋した王子に振り向かれず、挙句殺して海に帰る事もできずに海の泡となる。はっきり言って悲劇だ。

    本を閉じると後ろから声がする。
    「あら、見当たらないと思ったら貴方が読んでいたのですか。」
    振り向くと殺生院キアラが立っていた。同じ混沌悪のアルターエゴということもあり、度々同じ編成にされることが多い。
    「拙僧は読み終わったのでよろしければどうぞ。」
    「いえ、読みたいわけでは…。昔に暗唱できるほど読みましたから。」
    そう言いつつも彼女は「人魚姫」を手に取るとうっとりとした表情でページを捲る。
    「余程お好きなのですねえ。」
    「まさか、私ももう大人ですのでいつまでも童話に夢見るような歳ではありませんわ。」
    最後のページで彼女が手を止める。
    「あら、結末が違うんですね。」
    「おや、そうなのですか。」
    「原作では、泡になった人魚姫は風の精になって三百年勤めれば天国に行けるのです。愛される子を見て微笑めば一年短くなり、悪い子を見て涙を流せば一日長くなる。」
    三百年も勤める方がただ泡になるより苦行ではないか?それは救済と言えるのだろうか。
    「ほら、あの人が言ってるでしょう?『歌声は風になったということだ』って。」
    「何だ俺の話か?」
    いつの間にか背後にアンデルセン殿が立っている。殺生院殿は顔を赤くして「失礼します。」と逃げるように去っていった。
    「蘆屋道満、お前が童話を読むなど珍しいな。」
    「マスターの勧めで…そう言えばこちらは貴方の著書でしたな。」
    「マスターが?ふむ…。」
    アンデルセン殿は少し考え込むと、こちらまで歩いてきて隣にどっかりと腰掛ける。
    「それで、感想は?」
    言い淀んでいると鼻で笑われる。
    「読者からの誹謗中傷なら慣れているさ。いいから忌憚なき意見を聞かせてみろ。」
    そう言ってポリポリと腕をかく。
    「はあ、そう仰るのなら……。拙僧としては全く理解できませぬなぁ。真実の愛などと下らない。他者を思いやるが故の自己犠牲?悲劇的な結末?ええある意味では大変愉快な読み物かと。」
    「はっ!そこまで言い切られるといっそ清々しいな!構わん、忌憚なき意見を聞かせろと言ったのは俺の方だ。しかし、蘆屋道満…。」
    ふっと真面目な顔になりこちらへ向き直る。
    「何故マスターがお前にそれを読ませたかったのかはよくよく考えることだな。」
    「何故……?」
    それは読む前からずっと思っていたことだ。何故読ませたかったのか。何故この本なのか。
    「確かにお前のいう通り真実の愛など下らん。おとぎ話の中にあるような愛など現実には存在しないのかもしれん。しかし、それが存在して欲しいという願い。マッチの灯のような、微かで今にも消えそうな小さな希望を誰しもが持っている。万人に幸福な結末は訪れない。現実はいつだって悲劇だ。しかし、あの娘の行く末にはハッピーエンドを描いてやりたい。お前は、そうは思わないのか?」
    「それは……。」
    「今の、マスターには言うなよ。」
    あの娘とはマスターの事か。数々の異聞帯を滅ぼしてきたマスターにハッピーエンドなどますます下らない。結末はきっと地獄だ。拙僧はあの娘に地獄まで付き合うのだから。




    夜、マスターのマイルームを訪れると本の感想を求められる。
    「何と言いますか、話の概要自体は理解できますが、拙僧には共感しかねますな。愛などというものは自分を犠牲にするほどのものなのか、拙僧にはとんと分かりませぬ。」
    正直に答えると、ベッドに腰掛けたマスターは寂しそうに肩をすくめる。
    「そっか……うん、そういうことなら仕方ないね。」
    「マスターは何故こちらを拙僧に?」
    「……知ってると思うけど、平安京でリンボは愛がなかったから人類悪になれなかった。愛を知らないなんて、そんな悲しいことってないじゃない。」
    手を固く握り、目を伏せるマスター。
    「誰も愛せないなんて、誰からも愛されないことより悲しいよ…。」
    愛せないのが、愛されないことより悲しい?マスターの言う事はよく分からない。与えるより手に入れる方がいいに決まっているのではあるまいか?
    「マスターの言うことは難しいですな。」
    「だって、愛するものがないのに生きていくのって大変だよ。生きる意味が無いって思っちゃうよ。」
    「生憎生きていないもので。」
    「でも君はここにいる。」
    マスターが顔を上げる。琥珀色の瞳と目が合った。相変わらずどこまでも見通すような不思議な目だ。
    「ねえ道満、どうしてカルデアに来たの?」
    どうして…それは、リンボとカルデアに縁ができたから、それで…。
    「貴方が呼んだのではありませんか。」
    「…そう、じゃあ道満は今何の為に戦ってるの。」
    「それは勿論貴方の為ですとも、マイマスタァ。」
    いつものようにニヤリと笑ってマスターに擦り寄る。
    「……そう言うならそれでもいいや。」
    それでもいい、と言いながらも悲しげに眉を寄せて笑う。何を悲しむ。分からない。マスターは擦り寄る拙僧に腕を回し優しく抱き寄せる。一瞬思考回路が停止する。
    「あの、マスター?」
    「…こうしてる内に、君に少しでも愛を分けられたらいいのに……。」
    誰にも聞かせる気はないようなか細い声。何故この娘は英霊如きにここまで親身になれるのか。どうせこの博愛主義のマスターのことだ。他の者にもこうなのだろう。皆に平等に分け隔てなく愛を注いで…。その愛が返されない事は分かっていようものを。無償の愛とでも言うのか?

    愛する者を想って泡になるなど、理解できない。拙僧ならば…王子を殺し、自分も死に共に地獄へ………。

    地獄?


    王子は地獄へ堕ちるのだろうか?




    堕ちてくれなければ困る。拙僧は地獄行きなのだからーー。








    「みんな!戦闘体制!」
    微小特異点が発生し、その修復に向かった。危険度も低い簡単なレイシフトのはずだった。しかし運悪く同行したサーヴァントと敵の相性が悪く、苦戦を強いられていた。
    「マスター!危ない!!」
    誰かがそう叫びマスターの背後に敵の爪が襲い掛かる。気がついたら手を伸ばしていた。
    「道満!」
    鈍い音。目の前が真っ赤に染まる。自らの肉が裂けるのを感じるが構わず敵を爪で引き裂く。エネミーは消失し、ひとまず戦闘が終わる。
    「ご無事ですかマスター。」
    マスターが慌てて礼装で治癒の魔術をかける。
    「こんな体を張った助け方……。」
    「はて?カルデアのマスターは御身ただ一人。しかし拙僧ら影法師にはいくらでも代わりがおるではありませぬか。」
    「いないよ!」
    突然声を荒げてこちらを見上げる。
    「道満の代わりなんていないよ…。」
    「はあ、左様で。」
    先ほどまでの怪我も綺麗さっぱり治される。やはりマスターとサーヴァントでは勝手が違う。自分の行動に間違いはなかったはずだが、何故マスターは涙目なのだろうか。                                                                                                                                                                                                                                  
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