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    KiryuuAoi

    @kiryuu1109

    現在、ブレバンとszkrtの沼でもがいている腐女子

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    POIPOI 11

    KiryuuAoi

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    SOLTさん(https://poipiku.com/208444/)の掛かれているダイダラ水族館のお話を書かせて頂きました。
    お誕生日プレゼントにお渡しした所、許可を頂きましたので掲載させて頂きます。
    SOLTさんの描かれるアオ君の愛らしさやカワウチョの格好良さが描けていると良いなと思います。

    #サタイサ

    Let's Dance!「ああ、違う、そうじゃなくてだな……」
     ドアを開けるなり響いた佐竹の声は、微かな呆れと、それを遥かに上回る多分の愛おしさを含んでいた。
     佐竹がこんな風に甘い声音を向ける相手はきっとあのペンギンに違いない。
     そう思いつつ歩を進めれば、部屋の奥では佐竹が予想の通りに愛用の赤いスカーフを付けたイウコトキカナイペンギンことアオ君を前に胸の辺りの高さで掲げた手を揺らして見せていた。
    「どうしたんですか?」
     肩の上で赤いジャケットを羽織ったベテランカワウソのサタケ隊長が様子を伺う様にぐっと前のめりになるのを、決してそんな間抜けな姿を勇に晒しはしないだろうが、それでも落ちてしまいはしないかと気に掛けながら投げかければ、こちらを振り向いた佐竹が小さく肩を竦めて苦笑めいた笑みを零した。
    「来季からのショーに備えて新しいパフォーマンスの練習をしてるんだが、どうにも上手く行かなくてな」
     観客から可愛いと評判の「おてて」ことフリッパーでぎゅうとサタケの足を包み込む様に抱き付く愛らしいペンギンを柔い瞳で見下ろしながら佐竹は肩を竦めてみせた。
    「次はどんなパフォーマンスに挑戦するんですか?」
    「最近は努力の甲斐もあって、随分とジャンプ力がついてきたからな。ジャンプしてのハイタッチにチャレンジさせてみようかと思ったんだが……」
     膝を付いた佐竹と手とフリッパーを合わせる事はこれまでにも何度もやってきた。
     「せっせっせーの…」ではじまる事で有名な童謡で有名な手遊びを、佐竹とアオ君が超超低速のまったりゆったりした速度で披露した後で、全く同じ事を倍速以上の疾走感溢れる速度で勇とサタケ隊長が披露する。
     そうして二コンビの違いを楽しんで貰うのはシンプルながら不思議と観客の評判が良く、これまで季節に合わせて曲を変えたり動きのアレンジを変えたりしつつ何度となく披露してきたものだった。
     だが、今佐竹がアオ君に示している高さはこれまでにこのペンギンが経験した事の無い高さだった。
     何時もならば普通に立ったアオ君が緩くフリッパーを掲げれば届く位置に掲げていた佐竹の手は、アオ君がかなり頑張って跳ばなければ届かない位置にある。
    「流石に手遊びほど何度もって訳には行かないが、アンドゥトロワ、くらいのノリで、イチ、ニ、でハイタッチして、サンでくるっと回って……くらいは出来ないかと思ってるんだが……」
     ほら、もう一度、とトライを促す様に佐竹が軽く手を振れば、イチ、のリズムでよいしょと跳びあがったアオ君のフリッパーがぺしりと音を立てて佐竹の手を弾き、落下の勢いを生かして二度目の跳躍を果たした所で一生懸命に伸ばしたフリッパーが今度は空しく宙を泳ぎ、勢い余ってそのまま佐竹の足にべちゃりと落下する。
     バランスを崩し掛けた身体を、ひし、と回したフリッパーでしがみ付くアオ君の顔はどうして佐竹の指示が果たせないのだろうかと言う困惑の色が微かに滲んでいる様にも見えて、勇は小さく息を吐くと、他人とは思えない程に似た所のある可愛いペンギンの傍らに膝を付いた。
    「アン、ドゥ、トロワ、のリズムじゃなくて、アーーン、ドゥーーー、くらいのスピードで落ち着いてゆっくりやってみたらどうですか?」
     水中であれば素早く泳ぐ事の出来るペンギンだが、陸地ではどうしてもぽてぽてとした動きになってしまう。
     アオ君はそんなペンギンの中でも比較的素早く動く事の出来る子ではあるが、それでも佐竹の口にしたリズムでは多少難がある様に思えた。
    「ほら、アーーン、ドゥーーー……」
     先ずは高さは問わずにリズムだけでも、と膝を付いたままで丁度アオ君がフリッパーを上げれば届く位置で手を掲げてやれば、真剣な眼差しのアオ君が勇の声に合わせてフリッパーを合わせてみせる。
    「トロワ」
     これならば何とかなりそうだ。そう思いながら最後の合図を投げれば、くうるりと一回転、勢い余って半ほど回転する。
     丁度お客さんに可愛いぷりぷりのお尻を向ける格好には改善の余地はありそうだが、このリズムなら、何とかなるのではないだろうか。
    「それはもう試した。その高さなら難は無いんだよ」
    「……じゃあ高さが問題なんですか?」
    「高さと言うか、ジャンプをすると途端に駄目になる。イチ、ニ、で飛ぶ方向がずれる。どのリズムでやっても二回目のジャンプで目測とは違う方向に飛んでしまうんだ」
     試しに、少し低い位置で手を上げてジャンプを促してやると、佐竹の告げた通りにアオ君の着地点がずれる。
     ハイタッチとジャンプの二つの指示が重なると途端に頭が混乱してしまうらしい。
    「……箸を使ったり、ゴミ掃除をしたりは出来る癖に、何でこういう所だけ不器用なんですか、こいつは……」
    「何でだろうな」
     これまでの決して短くはない付き合いを思い起こしながら思わず突っ込みを入れる勇に、佐竹が微かに肩を震わせる。
     基本的に不器用なアオ君が可笑しな所で器用さを発揮するからこそ、面白いのだし、それが観客に可愛いと言って貰える秘訣でもあるのだが、ショーのプログラムを考える上では難しい所でもあった。
     いっその事、その出来なさ加減をアピールして可愛らしさに全振りすると言う方向性もありだとは思うのだが、本人がそうして不器用な可愛らしさを振りまく事に不満を抱きがちだからままならない。
    「……どうするのが良いですかね、隊長」
     うーん、と二人で暫し額を突き合わせて一頻り考えた所で、勇はふと肩の上でじっと様子を見守るベテランカワウソへと投げかけた。
     こう言う時に頼りになるのは何時だってベテランの力だとばかりに。
     そうすれば、勇の言葉に、口元に手を押し当てて暫し何かを考えた後でサタケ隊長が器用に勇の身体を伝って床に降りると、ちょいちょいと視線と小さな手で勇とアオ君の双方に立ち位置を指し示す。
     向かい合う様に立つア才君と隊長の、少し斜め、観客から見れば奥の方へ勇が佇む形になった所で満足気に頷くと、隊長は今度は勇に手を高く掲げる様に指示する。
     何事かと思いつつ、促されるままに腰の辺りに手を掲げれば、視線でもっと高くと促される。
     少し悩んで最初にこの部屋に入って来た時に佐竹が掲げていた胸の高さに手を上げれば、うむ、と満足げに頷く。
    「どうするつもりなんだ?」
     傍らから投げ掛けられる佐竹の言葉に、隊長はちらりと視線を向けただけで応える事はせずに、アオ君と向き合う。
     仲が悪い訳ではないが隊長による佐竹の扱いは常にこうだったから、見つめる佐竹は小さく肩を竦めるだけに留め、腕を組んで成り行きを黙って見届ける事にしたようだった。
     それ以上横槍の入らぬ事を確認すると、満足気に頷いた隊長がアオ君に向かって自分とハイタッチする様に視線で促す。
     ちょっとだけジャンプしなければ届かない位置に掲げられた小さな手に、真剣な瞳をしたアオ君がぺち、とフリッパーを合わせる。
     ぽよんと言う擬音でも付きそうな柔らかな着地を見せるアオ君を見守り、隊長の視線が勇へ向けられる。手を合わせろ、とでも言うかの視線に少し緊張しつつ身構えれば、着地の勢いそのままに再び跳びあがったアオ君がやはり最初に掲げた隊長の手とは異なる位置、丁度勇が掲げた手に向かって勢いよく跳びあがる。
    「あ……」
     成程、ジャンプがずれてしまうなら、最初からずれる事を考慮しておけば良いのか。
     そう感心していると、少し嬉しそうな顔をして地面に飛び降りるアオ君に向かってもう一度、隊長がそっと手を差し伸べる。
     着地したアオ君も同じ様にフリッパーを伸ばせば、極々自然に両者の伸ばした手が重なり、そのまま互いの位置を変える様に二人がくるりと回転し、二人の身に付けた赤いジャケットの裾と赤いスカーフがひら、と優雅に舞う。
    「……かわいい」
     どうだと言わんばかりに見上げて来る隊長と、成功にぱあっと瞳を輝かせるアオ君に思わず勇が漏らせば、途端にきゃっきゃとばかりに二匹が手に手を取り踊り出す。
     相変わらずの仲睦まじさに頬を緩めていると、傍らで佐竹がふむ、と小さく呟いてそのまま指を口元に押し当てる。
     つい先程隊長が見せたのと全く同じ仕草だな、と似た者同士な二人を思って微かに笑みを噛み殺していると、うんと小さく頷いた佐竹が、ご褒美の魚をアオ君に向かって差し出す。
     ここに来たのはショーの練習のつもりでは無かったから、隊長の分もおやつを持っていない事に慌てていると、佐竹がほら、とアオ君用のおやつの籠を差し出して来るから「少し貰うぞ」と断りを入れて隊長にもおやつを渡してやる。
    「来季のショーも、隊長にはアオ君とコンビを組んで貰う事になりそうだな」
    「このコンビのショーは評判も良いし、お客さんには喜んでもらえるんじゃないですか?」
    「そうだな。……だが、この二匹で組ませるなら、最後のダンスパートはもっと長くしても良さそうだな」
    「なら、次はダンスパートのブラッシュアップを考えますか?」
    「……んー、そこのパートはむしろ二匹に思う存分好きにさせる位の方が面白そうだとは思うがな」
     ご褒美のおやつを食べ終え、再びくるくると互いの位置を入れ替える様に踊りはじめた二匹を見つめて微笑ましそうに笑うと、佐竹は部屋に備え付けられた流しへと向かって歩き出した。
    「さて、お前たちのお陰でショーの新しいパフォーマンスの目処もついたことだし、少し休憩するか。コーヒーを飲む時間くらいはあるだろう?」
     魚を掴んだ手を念入りに石鹸で洗い流し、愛用の赤と緑のマグカップを取り出してにやりと笑う佐竹に勇はちらりと時計へと視線を向け、次いで未だ仲良く踊る二匹を見つめるとはいと大きく頷いた。


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