おねがいをきかせて友人のそれより少し踏み込んで。
声音に甘さを含ませて。
なんでもいいよ、と欲を問い掛ければ、返答はあまりにも彼らしい台詞だった。
「おまえがくれるものならなんだって嬉しい」なんて、もしかしたら言うんじゃないかと思ってはいた。言うとは思っていたけれど。
「えっと……」
答えを引き出す言葉を探し、ヒースクリフは視線を迷わせた。沈黙の中、規則正しく時を刻む秒針の音はまるで急かしているようだった。焦燥を誤魔化したくて、握りしめる指先に力が入る。
甘い返答だった。だが、言葉に熱さえ篭っていればいいというものではない。なにせ悩んで悩んで、とうとうどうにもできなくなって直接聞くことにしたのだから。
何も思いつかないわけではなかったのだ。だが幼馴染で友達、更にあなたが良いと心を確かめてから初めての誕生日ともなれば、今までのように贈り物を考えるのでは何か足りないような気がして、贈り物の候補は思いつく先から霧散していった。
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