extinguish 夕暮れの路地裏を疎らな距離感で闊歩する男が4人。談笑するでもなく各々の速度で暗闇に紛れて進む。数本の路地裏の曲がり道を経て、廃墟と言って差し支えないビルの前にたどり着く。タブレットで地図を見ていた阿久根は顔を上げると、後ろに続く3人へ片腕をかざして止まるように促す。
「ここですね」
「…ここか。燐童が先頭でナビゲート、俺と丞武が両翼に別れて突っ込む。有馬は…」
「留守番してるわ」
「見張り、ですね。煙草の数本のうちに終えるでしょうからよろしくお願いします〜」
「おう」
言葉少なに打ち合わせると谷ケ崎による合図で3人は廃ビルの中へ音もなく吸い込まれていく。その後ろ姿を半分も見送らないうちに、有馬はふらふらと足の赴くまま斜向かいの路地へ歩を進め、壁に背をつける。
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