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    しゃんしゃん

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    しゃんしゃん

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    とあるパーティに潜入するジオフリ♀です。
    書きたいところだけ書いた産物。
    なんでも読みたい人向け。

    最高の一夜をムートンフライトジャケットを脱いで普段は着ないゴールドの煌びやかなドレスを身にまとい、パイロットゴーグルを外してアクセサリーを身につけ。美しい白髪もそれなりにセットアップして、薄らとメイクを施し、コンバットブーツを脱いで慣れないヒールを履く。

    ライジングボルテッカーズのリーダーであるフリードはとある町のパーティ会場にいた。

    (うう、視線が痛い……帰りたい……)

    こういうかしこまったパーティは苦手で参加しないのだが、ここにテラパゴスについて何か知ってる人物がいるという情報をドットから聞いたのだ。テラパゴスの存在を知るものは、今のところライジングボルテッカーズとエクスプローラーズしかいないはず。十分に外れの可能性が高いのだが、少しでも情報が欲しいフリードにとって、それがたとえ嘘であるとしても本物かどうか確かめる必要があった。

    当然子供たちを危険な目に巻き込む訳には行かない。とある企業が催しした得体の知れないパーティの中へ、フリードは意を決して単独で潜り込んだのだ。

    今のフリードの格好は、すれ違った男が再度振り返るのが当たり前のような、とても目を引くような美しさを醸し出していた。

    その美貌から集まる周囲の視線に、フリードは俺やっぱりこういう格好は似合わないのかなと勘違いをしてひとり心の中で落ち込んでいた。

    この後はオーケストラの生演奏でダンスが行われる。フリードにそういう経験は一切なく、ダンスに誘われたとしても相手に迷惑をかけるだけでとても気が重かった。

    ダンスを踊る前に何とかその人物と接触して情報を得たいところだが、物事はそう上手くは行かないように出来ている。

    「失礼、そこの麗しいレディ」
    「……、何か御用で……って、アメジオ…!?」
    「やはりフリードか。まさかこんなところで会うとはな」

    ふと声をかけられ視線をうつすと、そこにはいつもの服とは違い、白のシャツと黒のジャケットを身にまとった、もはや顔馴染みであるエクスプローラーズの幹部、アメジオがいた。

    「もしかしてお前も……」
    「お前に話す義理はないが、その様子だと恐らく同じ理由だろうな」
    「だよな」

    ま、外れの可能性が充分高いだろうけどなと言ってフリードは笑う。それにアメジオも頷いた。だが、このどこか胡散臭いパーティには何か裏がありそうだ。

    「そうだフリード。まだここにいる予定ならこの後のダンス、俺と一緒に踊ってくれないか」
    「は!?」
    「その格好、とてもよく似合っている」

    一曲だけでいいとアメジオはふわりと笑う。その綺麗な笑みに、フリードはぼぼぼっと顔を真っ赤にさせると、一曲だけだからなと言って頷いた。

    「フリード、ダンスの経験は?」
    「ないからお前がリードしろ」
    「わかった」

    お手をどうぞ、プリンセスとアメジオが言ってそっとフリードに手を差し伸べる。フリードはもうそんな歳じゃないぞ馬鹿と言ってアメジオの手を取ると、オーケストラの生演奏に乗り歩き出した。

    ***

    初めてのワルツはぎこちなく終わるかと思ったら、以外にもこういうことに場馴れしているアメジオのリードのおかげで優雅に音楽に乗って恥を晒すことなく舞うことができた。

    ワルツなんて踊るのは初めてで何もわからないのに、アメジオの足も踏むことなく、踊っているうちになんだか楽しくなって、華麗なターンまでして見せた。元々運動能力の高いフリードはコツを掴めば自分のものにできるのだ。ふたりでお互いに目的なんて忘れて踊った後は、この熱を冷ますためバルコニーに出てウェイターから飲み物を受け取りほう、と息を吐いた。

    「はあ〜〜〜!楽しかったぁ」
    「俺もだ。久しぶりにいい息抜きができた」
    「で?俺たちの用は済んだし。どうやってここから脱出する?」
    「そうだな……暴力は好まないが、向こうがその気なら強行突破するしかないだろう」
    「そっかぁ〜〜〜」

    ちらりと中の会場の方を見てみると、何故か中は屈強な男達だけになっていた。見かけない二人組がいると誰かが目的の人物に伝え、こちらの動向に気がついたのだろう。

    「フリード。リアルファイトの経験は?」
    「は!戦うポケモン博士、なめんなよ」

    ビリッとフリードは勢いよくドレスを破いて動きやすい形に変え、戦闘態勢に入る。アメジオはそれに目を見開き驚いた。

    「そういうアメジオは戦えんの?」
    「幼少の頃から訓練されている」

    行くぞと言ってアメジオが地面を勢いよく蹴って駆け出した。フリードも少し慣れてきたヒールの靴で飛び出し、負けじと彼についていく。

    ひとりの男がぐんっとアメジオめがけて拳を繰り出すと、アメジオはそれをひょいっと避けて、男の後ろに回り込み的確に一発入れてのしていく。鮮やかに男達をのしていくアメジオに、フリードは思わず見蕩れていた。

    「フリード!」

    アメジオがふと見ると今にも彼女に男の手が届きそうなくらい、男が手を伸ばしてフリードに迫ってきていた。フリードはニヤリと不敵に微笑む。その手をガシッと掴んで勢いに任せてでやあ!と声を荒らげ男の体を持ち上げると、華麗に一本背負いを決めた。

    男は背中を強く打ち付け、白目をむいて伸びている。

    「わお……」
    「アメジオ!」
    「!」

    その後、アメジオとフリード、その他大勢による大乱闘は続き。お互いに守り守られ助け合いながら彼らはこのその他大勢をふたりで倒し、ついでに目的の人物と接触して、(その際相手に酷く怯えられたが)何事も無かったかのように波乱万丈となったパーティ会場を後にするのであった。

    「あ〜…まさかこんなことになるとはなぁ」
    「フリード」
    「ん?って、お?」

    きゅ、とアメジオが着ていたジャケットが、フリードの腰の辺りに撒かれた。今のフリードの姿は戦うためとはいえ所々露出しており、目に毒であった。

    「目のやり場に困る…から、それはつけておけ」
    「あ〜……さんきゅ」

    かあ、と顔をほんのりと赤く染めて言うアメジオに、フリードは可愛いなと思わず思った。きゅん、とときめき、ふふ、と微笑んだ。

    「なあ、アメジオ」
    「ん?」
    「またいつか。俺と一緒に踊ってくれる?」
    「ああ。またいつかな」

    約束だと言って、アメジオはひとりアーマーガアを出して空へと飛び去っていく。フリードはそれをしばし見つめたあと。リザードンを出して、ブレイブアサギ号へと戻るのであった。
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