カーテンから差し込む柔らかい光の中、ベッドで二人、微睡みながら触れ合う朝の時間が好きなのだと仗助は言う。
「目が覚めたときにさ、大好きな人がすぐ側にいてくっついていられるの、スゲー幸せって感じしねぇ?」
そう言って笑った顔が本当に幸せそうでかわいくて、最初はいくら恋人同士といえどもベタベタするのはな……と思っていたぼくも、この数年ですっかり絆されてしまった。それにこいつはいつまで経っても子供体温で、冬の朝には手放し難いあたたかさなのもいけない。
今朝も仗助はぼくを背中から抱き込んで「おはよ」と囁いてくる。まだ眠いぼくはその腕の中でうとうとしながら、ぼくの手で遊び出す仗助の好きにさせた。
手のひらをマッサージするみたいに揉んでいたと思ったら、指の形を確かめるように一本一本丁寧になぞって、それから所謂恋人繋ぎの形でぎゅっと握り込む。
「このままくっついちまったらいいのにな〜……」
ふと溢されたそんな一言にぼくはぱちりとまぶたを上げると、その手を振りほどいた。
「ふざけたこと言ってんじゃあないよ。ぼくに漫画を描かせないつもりか?」
「冗談っスよォ〜」
仗助は笑っているが、こいつはその冗談を実現できてしまう能力を持ってるんだからシャレにならない。
もう一度手を繋いでこようとするのを払いのけると、ぼくが機嫌を損ねたと思ったらしい仗助は許しを乞うようにぼくの首筋や耳裏にちゅ、ちゅ、とキスを落としてきた。そのまま好きにさせていたら、ぼくに振り払われた手が明らかな意図を持って腰を撫で上げてきたので、ぼくは今度こそ「オイ」と非難の声を上げる。
「きみ、今日は早く出ないといけないんじゃあなかったのか?こんなことしてる場合かよ」
「えっ、今何時?」
時計を確認した仗助は「ゲッ」と慌てて起き上がり、と思ったら「行きたくねぇ〜……」と情けない声を上げてぼくに覆いかぶさるみたいにぎゅうぎゅう抱きついてきた。
「ぼくは自分の仕事に責任も誇りも持てないヤツは嫌いだぜ」
「う〜……そんなんじゃねぇけどォ〜……」
露伴ともっとイチャイチャしてたいのに……とかなんとかごにょごにょ言いながら渋々といったていで起き上がった仗助は、それでも名残惜しそうにぼくの髪を撫でる。その手が心地よくて思わず目を細めてしまうが、この甘ったれにいつまでも付き合っているわけにはいかない。こういう時間は、メリハリをつけてこそ大切に思えるんだろうから。
「さっさと行ってこいよ。帰ってきたら、また一緒に寝ればいいだろ」
そう言ってやったら、しょげた犬みたいな顔をしていた仗助の目がみるみるうちに輝いた。「グレート!」と飛びつく勢いでキスをして、それからようやくベッドを降りて慌ただしく着替え始める。
「絶対定時で帰るっスから!」
大声で宣言してバタバタと寝室を出て行く後ろ姿に、ぼくは「単純なヤツめ」とほくそ笑んだ。
きっと宣言通り、仗助は仕事を終えて大急ぎで帰ってくるんだろう。そしてまた一緒に眠って、明日もこんな朝を迎えるのかもしれない。
悪くない想像に思わず笑みが溢れて、ぼくはさっきより少し肌寒く感じるベッドの上で、うんと伸びをした。