おれの恋人は好奇心旺盛な人だ。何か興味が向くことを見つけると一直線、周りの迷惑も過ぎる時間も全部すっ飛ばして夢中になっちまう。しかもそれを当然のことと思って悪びれもしない。
出会った頃はなんてヤベー奴なんだとドン引きしていたそんな部分も、恋人同士になった今では魅力的に感じてしまうからどうしようもない。一つのことにそこまで集中できて、自分の漫画の糧にする。その真剣な姿勢は尊敬できると思うし、純粋に子供みたいに瞳をキラキラさせている様子もかわいい。うん、そう、かわいいんだけども。
「おーい、露伴先生ー?」
道ばたにしゃがみ込んで一心不乱にスケッチしているその背中に声をかけても、振り向きもしなければ返事もしない。一体何をそんなに、とスケッチブックを覗き込んでみれば、なんの変哲もない雑草(露伴がこんなに夢中になるくらいだからひょっとしたら雑草じゃないのかもしれないが、興味のないおれからしたら雑草も同然だ)が次々と描かれていた。
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