「日曜日は蜂蜜のかんばせ」 幼い顔つきの少年に目を惹かれたのは偶然だった。娘にねだられて頻繁に行く水族館。ペンギンコーナーでガラスに張り付く小さな後ろ姿を見守る。この水族館は週末に餌やりの様子を見せてくれるのだが、娘はとりわけそれがお気に入りのようだった。今日は帰りに前回欲しがっていたキーホルダーを買ってあげようか。そんなことを思っていた際、その少年と目が合った。ぐりりと大きい目に不釣り合いな顰めっ面。比較的幼い子供が多いガラス周りに、小柄とはいえ小学校高学年ぐらいの子がいるのはさすがに目立つ。家族との待ち合わせか何かだろうか。少年はかち合った視線をすぐに逸らして、また不機嫌そうにガラスを睨んだ。それが先週のことだった。
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