『秘密の逢瀬はレモン色』「つぐみくんの色だね、ソレ」
運ばれてきたケーキを指差すと、最近事務所に所属したばかりの四つ下の後輩は"ほんとだ"とあどけない笑顔を浮かべた。白のレアチーズケーキに黄色いゼリーの膜がかかり、頂上には砂糖漬けのレモンがひと切れ乗っかっている。オランジェットが光を反射してキラキラと輝く様は、まるで彼の髪が陽光に透けた時のようだ。
こうして同じテーブルを囲むのは何度目になるだろう。初めて食事に誘った時は、まさかこんなに交流を重ねることになるとは思いもしなかった。二人で会っていたと知れば、またアカネがいらぬヤキモチを焼くだろうから、今回も秘密の逢瀬だ。バレるのは時間の問題だろうが、それはそれで良しとする。
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