「……、君は、僕のことを嫌っているものだと思っていたんだけれど」
たっぷり二秒は間を空けて口を開いたセンパイから出た言葉は、珍しく戸惑っているのがありありと分かる状態だった。
「オレだってそう思ってたっつーの」
「でも、さっき……」
「……嫌ならさっさと断れよ。顔も見たくねーなら近付かねえ様にします」
少しでも意識してほしいとは思ったが、何もセンパイを困らせたい訳じゃない。幸い、オレとセンパイが顔を合わせなくなったとしても、お互いの活動に影響もない。
……オレがこの感情に蓋をすればそれでいい筈だ。
「…………、……わから、ないよ」
「はぁ? ……っちょ、あんた、何泣いて……」
返答がない事に焦れてもう一度声を掛けようとした瞬間に、微かな声が零れた。
1980