俺の愛しい、幸福家族「おい、起きろ。
こんなところで寝るやつがあるか」
家に帰ると武道がソファーに寝転んで眠っていた。
肩を揺らしてみるが起きる気配が無い。相当疲れているのか、眠いだけなのか。
早いものでコイツと番となり、結婚して二年が経った。間に生まれた子供もほとんど手がかからない…のはまぁ、きっと周りのヤツらが甘やかすからで。
抱き上げてやれば身体の揺れと互いの匂いが近くなったせいなのか武道の瞼がふるりと揺れて目を開く。
「あ、おかえり〜…大寿くん」
「ただいま、あんなところで寝る奴がいるか。風邪を引く」
「ごめんね、昨日頑張りすぎたからかな」
昨夜は昔からの友人知人を招いて盛大なクリスマスパーティをした。皆を誘ったのは自分だからと準備中、子供は実家に預けて武道は部屋の飾り付けらから料理まで全てを仕切って頑張ったようだ。俺も手伝ってやりたかったがどうしても仕事で手が離せず武道に甘えることしか出来なかった。
途中、九井と乾が駆けつけたようだが大方終わっていたというから驚きだ。おそらく事前準備をしていたのだろう。
おかけで盛大でみなが喜ぶパーティではあったが。
「無理し過ぎだ」
「えへへ、でも楽しかったぁ。皆でワイワイ、チビも喜んでたし…皆も笑顔で。
大寿くんは、時々怒ってた?」
「お前の他人との距離が近すぎてな」
「あっ、嫉妬っすね」
「…悪いか」
「悪くない、むしろ嬉しいっす」
くすくすと笑いながら胸元に頬を擦り付ける。くっそ、何年経ってもいちいち可愛い。俺の番は。
ふ、と溜息を吐いて武道を見下ろせばジィッと大きな瞳がこちらを見詰めていた。
「大寿くん、ちゅう」
「ん?」
「ちゅう」
「…、急に甘えんぼだな」
「大寿くんが可愛いからしたくなったっす」
テメェの方が可愛いんだよ、とちっちぇ唇に噛み付いてやる。角度を変え啄むように数回口付けて、最後にちゅうと深く重ね合わせた。
ほんのりと武道の香りが漂う。俺だけが感じ取れる匂い。
「パパ、ママ。ちゅう?」
ふと、足元から声がし勢い良く離れて見下ろせばチビが俺たちを見上げていた。
「ぁ、はは!ちゅう、みぃーんなでちゅうしようね!」
するりと俺の腕の中から降りた武道は慌てたようにチビの頬へキスをする。
これはこれで悪くはないが、ちょっとモヤッとしたのは胸の内へ秘めておいた。
「そうだ!俺から二人へクリスマスプレゼントがあります」
「クリスマスプレゼント?」
「わぁ、なになにー!」
俺は昨晩、武道からクリスマスプレゼントは受け取っていた。ということはチビメインか?
「じゃーん!」
と、見せられたのは『母子手帳』。
は?
「サンタさんが赤ちゃん運んでくれました♡
ほら、チビお兄ちゃんなりたい、赤ちゃん欲しい言ってたでしょ?」
は?
「わーい!俺、お兄ちゃん?!」
と、喜ぶ我が子。
「武道…テメェ…」
「えぇっ、何で怒るの?大寿くん?」
「そんな身体で昨日あんな無理したのか?!」
「そこ怒るところ?」
「怒るところだ馬鹿者!」
説教はしてしまったが「ありがとな」と、礼を告げて愛おしい家族を抱きしめた。
今、この一時、一瞬を神に感謝する。
この家族がある限り、俺の幸せは続くのだ。