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    nyantama0129

    にゃんたま(去勢前)の遊び場。
    うちの子もよその子も居るよ!

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    nyantama0129

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    自分の世界観がうんたらかんたらのタグで設定詳細まで書いてくださったのに、ノリと勢いしか息してない。

    泣鬼さんとこで情報屋やらしてもらってます。「あっじゃあ失礼しまぁ〜っす」

     不自然に軽快な声で、ボクは一方的に通話を終了させる。と、すぐに携帯端末のチップを取り出して、別のものと入れ替えた。こうすると、この端末自体が別のものになるって優れもの。何がどういう原理になっているか知らないけれど、情報屋としては大事な作業。

     ボクは情報屋の通称「たま」。
     一般市民の為に日夜頑張る人々に情報を提供している。と言っても、提携先は2~3組程度の組織で、連絡を取るのは一つの組織につき、ボクが気に入っている一人だけ。
     情報屋にもネットワークってものがある。誰か一人の素性がバレてしまうと、芋づる式で他の情報屋の素性もバレちゃうってわけ。
     だから、あまり多くの人と関わるのは避けるべきで、通話の度にチップを変える地味〜な作業もとっても大事ってこと。ボクにとっては面倒な作業でもね。

    「呼んだ?」

     なんて、地味〜な作業をササッと終わらせたところで、聞きなれた声。
     顔を上げればそこには、お目当ての人がぬぼっと立っていた。何かもう、本当に「ぬぼっ」て感じで。
     ボクもよく「神出鬼没だぁ〜」なんて言われるけど、雨音くんも雨音くんで神出鬼没。足音聞こえなかったけど?

    「呼んだ。でも居なかった」
    「ふーん、なぁに?」

     コンビニの壁に寄りかかるボクの顔を覗き込む大男。ボクの身長……は秘密事項。それより遥かに大きい体を曲げて、ボクの顔を上目遣いで器用に覗き込む。

    「話の前に、コンビニに寄るよ」
    「え?なんで?」
    「いいから」

     ボクは雨音くんの問いを無視して、軽快な音と共にコンビニへ入店。
     テキトーに二人分の飲み物を手に取ると、かつお節を二袋追加して、レジでお会計。
     軽快な音と共に外に出れば、夏も近い日差しに目が眩む。

    「付いてきて」
    「ん、」

     買ったペットボトルを一本渡して歩き出すと、後ろから音もなく付いてくる気配。夜だったらゾッとしちゃうね。今は雨音くんだって分かってるから大丈夫だけどさ。
     道中の会話は特になし。
     雨音くんとはいつもそう。まぁボクも余計なことは出来るだけ喋りたくないし、雨音くんはぬぼっとしてるし。
     そんなこんなで五分も歩けば目的地に到着。商店街の路地裏の、更に裏。オトナのいかがわしいお店の裏って言うのかな?そこにお酒が入っていたであろうケースをくるりとひっくり返して、座る。もう一つ、同じようにして勧めれば、彼は素直にストンと腰を下ろした。うん、彼には少し小さかったみたい。

    「それで、用って?」
    「ああ、えっとね」

     ボクは一声、にゃあ、と猫の泣き真似をする。と、二匹の猫が店の影から出てきた。白黒ブチさんと、白黒ハチワレさん。

    「この子たちが本日の提供者」
    「ふぅん、可愛いね」

     よろしくね、なんて言いながら雨音くんは手を伸ばすも、二匹はするりと華麗に無視。ボクの足に体を擦り付けて、ゴロゴロ言っている。
     そう、ボクの情報源は、この辺りを根城にしている猫たち。この子たちは色んなことを教えてくれる。
     美味しいお店。
     気持ちのいい寝床。
     死屍守の目撃情報や巣、とか。

    「君の見たことをもう一度、教えてくれる?」

     そう言うと、ブチさんがボクの膝に乗って縋るようににゃあにゃあと訴える。ボクはそれに相槌を打つ。

    「そっかぁ、ありがとう」

     感謝を込めて撫でてあげれば、気持ち良さそうなゴロゴロ音。ああ、なんて可愛いんだろう。
     って、ボクが話を聞いている間に、雨音くんはハチワレさんと仲良くなったみたい。膝には乗ってないものの、頭を撫でたりおしりをトントンしたり、仲睦まじい。
     お互いににゃんにゃんとにゃんにゃんしながら、ブチさんが話してくれた内容を掻い摘んで伝える。

    「最近、ここら辺で死屍守の目撃情報がやたら増えてるって。今んとこ被害は出てないし、攻撃的な雰囲気も感じられないみたいだけど、兎に角数が多いみたい」
    「ふぅん」

     興味無さそうな生返事。
     でも、口角があがってる。ハチワレさんは可愛いだろう?

    「それで、徘徊してる奴らはあっちの方角から来てるらしい。もしかしたら、だけど、」
    「巣がある?」
    「かもね〜。ボクの仕事はここまで」

     この子たちを危険な目に遭わせるわけにはいかない。から、深追いはしないようにお願いしてる。
     故に、ボクの情報も不確定要素が入ってしまう。それでも、そんな情報を買ってくれるんだから、彼らもそれなりに人材不足なのかもしれない。

     話も終わって、にゃんにゃんとにゃんにゃんしながら、請求書作るのめんどいなぁなんて考えていると。

     どこからか、悲鳴。
     小さな悲鳴は広がっていき、波のようにうねって大きくなっていく。騒がしい足音。たぶん、死屍守が出たんだろう。

    「おやぁ?雨音くん。出番かもよ」

     わざとらしく手で望遠鏡を作って、悲鳴が聞こえた方を覗き込む。見えるわけないんだけどさ。
     だってここは、裏の裏。死屍守さえも来ない。だから、ここを選んだんだ。

     雨音くんはと言えば、目をギラつかせて、戦闘態勢。
     ああ本当に好きだよねぇ、この子は。こう言うの。

    「一人で平気?」
    「なぁに?手伝ってくれんの?」
    「まさか。ボクはゲンガーだよ。護身術くらいしか使えないんだから、逆に足手まといでしょ」
    「うん、それはそう」
    「戦闘は君の性分、ボクは避難誘導ってところかな。じゃあ、行ってらっしゃい」

     ボクが言い終わるか終わらないかのうちに、雨音くんは素早く駆け出した。裏の裏、くねくねと曲がりくねる道をトントンと走っていく姿は、まるで猫。

    「ふん、物騒だねぇ」

     ボクを見上げる二匹に笑いかける。
     
    「そんな顔しないで、大丈夫だから。ここら辺の子たちにはちゃあんと伝えてある。から、もう逃げてるんじゃないかな。アイツらもここまでは来ないでしょ。獲物が居ないんだもん。だから安心しな」

     言いながら撫でてやれば、絡む尻尾がふわふわとやわらかい。

    「ああ、今日の報酬がまだだった。君たち、カツオ好きだったよね」

     コンビニで買った猫用おやつのかつお節を取り出せば、爛々と輝く双眸。はぁ〜可愛い!
     袋を開けて差し出せば、ふんふんと匂いを確認してから、ペロペロと食べ始める。

     遠くからは人の悲鳴。きっと雨音くんがじゃれてるんだろうなぁ、なんて思いながら、ボクは今日も、情報屋としてこの子たちを守っている。
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