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    nyantama0129

    にゃんたま(去勢前)の遊び場。
    うちの子もよその子も居るよ!

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    nyantama0129

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    てる子とラスカルくんちゃんのお話

    お祭りの夜 何やら街が騒がしい。

     引ったくりや言いがかり、口喧嘩等々で騒がしいのはいつものことだけれど、今日は何だかそわそわしている。
     それもそのはず。今日と明日、店が並ぶ商店街のお祭りなのだ。
     色彩豊かな装飾には各店の個性が出ていて、並ぶ街灯には電飾がぶら下がっている。
     仄かに優しく、だけどどこか危険な匂いを醸し出す雰囲気は、この国ならではなのだろう。

     日が陰りつつある黄昏時。てる子はとある街灯の下に立っていた。ただ、立っていた。それだけなのに道行く人の視線を集めるのは彼の身長の高さ故か、それとも。

    「こんばんは、てる子さん」

     てこてこと歩いてきて、見上げた笑顔で挨拶をする。彼女の名前はラスカル。ラスカル・スミス。この国で一番の悪党だという話だが、到底そうは思えない儚さだ。
     てる子が口元だけで笑って会釈をすると、ラスカルは不思議そうな顔をする。

    「どうしてベールなんて被ってるんだぃ?」

     そう、てる子は黒い浴衣に黒いベールという、どこぞの葬式にでも出向くような格好で、ラスカルのことを待っていた。色彩に溢れ、人々の楽しげな声が満ちる中に、黒いインクを垂らしたような黒さで佇んでいたのである。
     道行く人の視線を集めるのも当然のことだろう。もちろん、ラスカルが不思議に思うのも。

     今日のお祭りはラスカルが誘ってくれた。曰く「いつも良くしてくれてるから、お礼がしたい」とのこと。

    「お金の心配はしないでおくれ。臨時収入が入ったんだ」

     余程大きな仕事を成し遂げたのだろう。誇らしげな彼女の言葉を断る理由はどこにもない。

    「それじゃあ、エスコートを頼もうかしら、小さな紳士さん」
    「小さいは余計だぜ」

     クスクスと笑いあったのが十日ほど前。
     そして、今日。約束の日。
     店外でラスカルと会うのは初めてだ。だからこそ、彼女は驚いたのだろう。

     勤務中の てる子は、他のキャストと違って派手な格好はしていない。とは言え、色合いが地味なだけでデザイン性で言えば似たようなものである。
     今の てる子は、灰色の蝙蝠が染め抜かれた黒い着物に、占い師が被るようなベールを被っている。それも矢張り真っ黒で、しかしよく見れば繊細に編まれたレースだということが分かる。

     猫も杓子も踊らにゃソンソン。
     そんな愉しげな場所で、てる子だけが唯一黒い。ラスカルが不思議に思うのも当然だ。

    「変、かしら?」
    「いいや、とても似合ってるよ」
    「そう、なら良かったわ」
    「てる子さんらしくて素敵だよ。でも、どうして隠してしまうんだぃ?いつもの綺麗な顔を隠してしまうなんて勿体ないぜ?」

     ラスカルが首を傾げる。覗き込もうとしない辺り、育ちの良さが伺える。

    「普段の私にはね、コレが普通なのよ」

     てる子はレースの端を摘んでヒラヒラと揺らした。

     昔。てる子は大きな事故に巻き込まれた。それはそれは凄惨な事故だった、と聞く。幸か不幸か、自身にその記憶は無い。
     しかし、その事故は てる子から全てを奪った。
     父。母。弟。てる子の家族。愛おしい日常。
     ショックで髪は白く染まり、後遺症で瞳は赤紫に濁ってしまった。
     人々は同情した。てる子の悲惨な体験に。
     同時に恐れた。人ならざるモノのような てる子の外見に。
     白髪に赤紫の瞳は珍しいのだろう。影でコソコソ言われ、堂々と絡まれ、時には酷く襲われもした。
     だから、てる子は隠すことにした。自分の全てを。忌々しい白髪と瞳を。それでも人の視線は突き刺さる。もう慣れたものだけれど。

    「そうなのかぃ?でも、見にくくない?」
    「えぇ……えぇ、そうね」

     みにくい。
     ベール越しに見る世界は、ぼんやりとしている。
     
     輝く太陽も。
     澄んだ青空も。
     流れる白い雲も。
     彩る木々も。
     揺れる黄色い花も。
     
     てる子には全てが眩しすぎた。

     人々の好奇の視線。
     憐憫の目。
     聞くに耐えない陰口。

     家族を見送れなかった後悔。
     自分だけが生き残ってしまった罪悪感。
     拭えない疑問。
     同時に、燃え上がる憎悪。

     世界はみにくい。
     だからこそ、見えにくいくらいがちょうどいい。

     ふと、ラスカルが両手を伸ばした。てる子に向かって。
     何なのかと屈めば、そのままギュッと抱きしめられる。腰を曲げた状態で、中々にキツい体勢。耳元にラスカルの唇が当たる。

    「世界がみにくいことは、ぼくも知ってる。そんなに良いものじゃないよね」

     淡々とした声で。
     彼女も昔、大切な友人を亡くしたと言っていた。その友人に会うためなら人殺しも厭わない、と。吹けば飛ぶような体で何を言うのか、と笑えない程の真剣さで。

    「でもね、それだけじゃあないってことも、ぼくはしってるつもり」

     一度ギュッと力を込めてから、ラスカルが離れる。今度は彼女の両手が てる子の頬を包んだ。

    「世界はみにくい。てる子さんは見たくないかもしれない。でも、ぼくは てる子さんと同じ景色が見たい。せめて今日だけは」

     駄目かな?と仄暗い水色が訴える。

     頬を包む手が少し冷たくて、てる子は自分の手を重ねた。
     比較にならないほど小さな手。力を込めれば簡単に潰れそうな細さ。訴える瞳は、心配と、不安と、期待が入り交じっている。そこに電飾の鮮やかさが反射して複雑に揺れていた。

     適わないわね。

     手を離すと、てる子は体勢を立て直す。少し腰を伸ばしてから、するりとベールを脱いだ。
     驚くラスカルをしりめに、ベールを帯飾りにしてしまうと、そっと手を差し出す。

    「エスコートをお願いできるかしら、王子様」

     微笑めば、ラスカルがふにゃりと笑って手を取った。

    「喜んで、お姫様」

     赤。オレンジ。黄色。紫。青。緑。様々な色が溢れて、ベールの無い世界は矢張り眩しい。
     だけど、手には少し冷たいぬくもり。絡む指は細く、繊細で、とてもやさしい。まるで綿毛のように。
     この手があれば大丈夫。そう思った。

    「さぁ、てる子さんは何から見たい?食べたいものとかあるかぃ?今日はぼくが奮発しちゃうぜ」

     誇らしげなラスカルに、てる子が笑う。

    「あら、エスコートしてくれるのじゃなくって?王子様のオススメの場所に連れて行ってくれなきゃ嫌よ」
    「ふふ、分かったよ。お祭りと言えばりんご飴!ってカリンちゃんが言ってた」
    「まぁ、アタシと居るのに他の女性の名前を出すなんて、無粋な王子様ね」
    「ああ、ごめんよ。今日のぼくは てる子さんだけのぼくだ。さぁ、行こうぜ」

     手を繋いで。
     飛ぶような心持ちで。
     二人は青い夜へと歩き出す。
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    Replies from the creator

    nyantama0129

    DONEラスカルくんちゃんと鎮巳くん(DT)の小話。
    はしごの詩 イブムニアという国において知らぬ者は居ないであろう、株式会社ブランクイン。そんな誰もが憧れる大企業ばかりが立ち並ぶオフィス街の中心。の、中小企業ゾーンを抜けた先。国の西側にある住宅街に程近い場所に広がる公園。
     お昼時はオフィス街や住宅地に住まう家族で賑わう場所だが、ピークを過ぎれば老夫婦が犬を連れて散歩したり、学校終わりの学生が少しはしゃいだり、鳩の鳴き声が聞こえる程度には居心地の良い場所。
     国の治安とは無関係と思えるようなのほほんとした公園で、遠山鎮巳は日向ぼっこを楽しんでいた。
     今日は平日。もちろん会社がある。しかし鎮巳の勤める株式会社ブランクインは大企業らしくフレシキブルな業務形態を採用している。曰く"朝は早くても8時、遅くても10時までに出社すること”"遅くても19時までに退勤すること”とのこと。この二点さえ守っていれば後は比較的自由であり、朝早く来て夕方ごろに帰る社員もいれば、ギリギリに来てギリギリに帰る社員もいる。自分の仕事を終えて昼過ぎにさっさと帰宅する者、そんな同僚に泣きついて助けを乞う者。哀れな同僚を尻目に優雅に昼食や休憩を楽しむ者など、様々だ。
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