割り切った男 バインダーに挟んだカルテをパラパラ捲る。昨日一人減ったはずが、今日は二人分増えた資料に、鉄斎はなんとも言えない気持ちになった。
鉄斎が請け負うのは、怪我を負った刀遣いたちの中でも、後遺症を抱えることになった者たちのサポートだ。つまり、生き残った者の補助である。
それほどの怪我を負ったことを嘆けば良いのか、命だけは助かったことを喜べば良いのか。これからを生きねばならない患者のことを思うと、どちらに傾くわけにもいかない。
「つってもオッサンは〝助かった側〟だろ?」
真っ赤な髪と赤いパーカーと白衣が特徴的な甥っ子、五十鈴螢に、呆れたと言わんばかりの声でそんなことを言われる。
以前あまりにも煙草の臭いが強かった為に苦言を呈したところ、今回は来る前に風呂と睡眠を取ったようだ。普段よりも幾分かマシになった煙草の臭いと目の下の隈が見える。
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