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    masasi9991

    @masasi9991

    妖怪ウォッチとFLOとRMXとSideMなど
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    masasi9991

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    現パロ 映画を見ているデググラ

    ##デググラ

    ホラー映画を見よう!「うひゃっ」
     とたまらず声が出た。静かなシーンでおれの声だけが部屋に響く。少々まぬけな雰囲気に。するとおれの隣でグランツが小さな声でクックッと笑った。
    「そんなに笑うことないじゃないか」
     おれはなんとなく小声で喋った――なにせ画面の中の主人公たちも静かなビルの中でがんばっている。大きな音を出したら刃物などを持った殺人鬼に見つかってしまう、というものすごく緊迫したシーンがもう二十分ぐらい続いている。見ているこちらとしても大きな音を出して邪魔をしてはいけない、という気分になるのだ。もちろんそれは映画の中のお話で、画面の外の我々が騒ごうと歌おうと踊ろうと、まったく関係ないのだが。
    「ふふ、すまない。あんまりかわいい悲鳴だったから」
    「悲鳴を褒められるのは、不思議な気分だ」
    「あっはっは。悪かったって。さっきの、そんなにびっくりするようなシーンだったか?」
    「びっくりしたさ、そりゃあ。だってワン子があんなに高いところから飛び降りて、無事に逃げられたんだからな」
    「動物はあのくらいの高さは平気なんじゃないか」
    「うむ、それはわかっているが、おれも思わずワン子と一緒に窓から飛び降りたような気分でな」
    「フフフ」
     グランツは再び小声で笑った。画面の中では主人公と仲間たちが安全そうな小部屋を発見して、ご飯を食べている。相変わらず緊迫しているはずなのだが、おれの隣でグランツがニコニコしているので、のんびりしたシーンのように見えてきた。
     主人公たちが食べているインスタントラーメンが、妙においしそうだし。おれもお腹が減ってきた。
    「見終わったらラーメンを食べに行こう」
    「食欲が残ってればな。レビューによると、後半の展開が結構ヤバいらしいぜ」
    「ヤバい? ラーメンが食べられなくなるほどに? ウーン、困ったなあ」
    「ははっ。こわいなぁ、じゃないんだな。こういうの平気だったか?」
    「いや全然平気じゃないな。きっと一人で見ていたら途中で眠っていた!」
    「眠って? こわくないのか?」
    「寝ている間はこわくない!」
    「あっはっはっはっは! なるほど! じゃあおれの密かな企みは失敗か」
    「ひそかな? なんだって?」
    「キミがキャーコワーイって言っておれに抱きついてくれたりとかしないかなって」
    「フフン、心配無用だ! おれはご迷惑をおかけしない男!」
    「それは残念だ」
     なんて言いつつ、グランツはニコニコ上機嫌。言っていることと表情が合っていないな? いったいどういう意味だろう。
    「そういうおまえは、こわいのは平気なのか」
    「ン? ああ。こういうのはだいたい子供だましみたいなもんだ、し」
     グランツが言い終わらないうちに、画面からグチャッという変な大きな音が聞こえた。おれもグランツもびくっとして画面に見入る。主人公たちもラーメンを口から垂らしたままこちらを見つめる。
     そうして次の瞬間、画面いっぱいに。
    「う、わっ!」
     ……グランツの悲鳴はおれのと違って普段通りかっこいいなぁ、と思ったのだった。
     そしてこのあとのお昼ごはんは、ラーメン以外がいいなとも思った。
     シーンとしている。画面の中も、おれの隣のグランツも。大丈夫かな。こうして並んでくっついているだけで、グランツの心臓がバクバク騒いでいるのが聞こえるんだが。
    「い、い、今のは、ちょっと怖かったな」
     小声だ。グランツがとっても小さな声で喋るので、おれは聞き逃さないように背を丸めてグランツの顔に自分の顔を近づけた。
    「大丈夫か? まだあと一時間ぐらい続くみたいだぞ」
    「そんなにあるのか!? てことは、ま、まだ後半がある……」
     画面を見つめたまま真っ青になったグランツの背中を擦って支える。こんなグランツは初めて見たぞ。どうしようか、この映画は結構面白いけど、途中で止めてお昼ごはんを食べに行こうかな? 今ならまだラーメンの気分がおれの中に半分ぐらい残っている。
     そうしようか。また画面はシーンとなって、しばらく何も起こらなそうだし。
    「グランツ、提案が」
     そのとき突然、ピンポーン! とでっかい音でインターホンが鳴った。
    「うわぁぁあっ!」
     おれもビクッとして驚いた。しかしそれ以上に、グランツが座ったままぴょんと飛び上がって、おれの首にしがみついた。
    「おわっわっわっわっ!」
    「っは、ぁっ、い、今の」
    「お家の音だ! そこの!」
    「そこの? あ、げ、現実」
    「そうだ現実だ! お家の玄関の音だから、大丈夫だ!」
    「そ、そ、そうだよな、わかってる、大丈夫だ」
    「うんうんよしよし、大丈夫大丈夫」
     抱きついているグランツの背中を、さっきまで以上に高速で気合を入れてサスサスサスサス。グランツの心臓の音が荒ぶっている。これがゆっくりになるまでグランツの背中をサスリサスリし続けるのがおれの今の最大の使命だ!
     大変な事態となった。画面の中では新たな犠牲が生まれているし、玄関のインターホンも鳴り続けているが、それらは後回しだ!
     いや、玄関は出たほうがいいような……。宅配便が来る時間だったような? しかしグランツを引き剥がすわけには。ウウン、困った困った。
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