荒廃した世界を旅するほのぼの系アドベンチャーゲームのようなものをプレイしてたんだけど終盤登場人物全員の個別エピソードを見終わったあたりでみんないなくなってしまって
みんなと旅した世界を一人で探し回ってやっとゴミ処理場のようなところにみんながいるのを発見して再会を喜ぶんだけどどうしてもそのゴミ処理場のステージからみんなを連れ出すことができない
実は少年が出会った人々は、この世界の唯一の生き残りの人類である少年を楽しませるために残されたロボットで、彼らは使命を超えて少年を悲しませるほどの交流をしてしまったから廃棄処分の予定なんだ…と明かされる
登場人物の個別エピソードというのは例えば家族の反対を押し切ってバンドをやるために家出する男子高校生2人の話だったり主人公より少し年上の少女が家のケーキ屋の新メニューの開発を手伝ってるとかそういう話
そのエピソードの中で少年が悲しんだり、彼らと別れたくないと泣かせてしまったりしたことがロボットたちの本来の目的に反してしまったというのが処分の理由
商店街のシャッターがかなり目立つ寂れた田舎を舞台にして、個別がある登場人物は全部で10人ぐらい、その登場人物も全員ロボットだしそれ以外の人物や背景も全て舞台装置として準備されたもので全て張りぼてである
実際はその町は大きなシェルターになっていてその外は何らかの原因で滅んだ世界、シェルターの中にも人間は少年以外生き残っていない
ゴミ処理場では少年はロボットのひとりひとりと話をして、「噓ばかりだったけど出会えてよかった」と感謝をされる
ロボットなので処分されることに恐れや悲しみは見せず、みんなは朗らかに「本当の冒険へ行ってらっしゃい」を別れの言葉に少年をゴミ処理場の外へと導いてくれる
(ここまでが夢)
視点はケーキ屋の娘に移る
「処分の日まであとどれくらい?」
「まだ一ヶ月以上ある。シェルターの老朽化が進んでオレたち以外にもゴミが山積みだ」
男子高校生Aが答えた。彼の傍らにあるギターは「バンドマンを目指す男子高校生」の役割の一部であるギターが置いてある。
「怖いのか?」
「ううん、わからない。でも、『楽しい』の反対だと思う。彼が笑ってくれたときと、反対の感覚だから。これが『悲しい』ってことなのかな?」
「そうかもしれない。我々のこの状態については名は与えられていないが」
別のロボットがそう答えた。処分を待つロボットたちは自身の思考に発生した感覚について考えを巡らせながら頷いた。
「もしもこの感覚と『悲しい』が同じなら、私は彼になんてひどいことをしたんだろう。私達の処分を決めた管理人は、私達が彼を『悲しませた』と言っていた。彼にこんな……こんな感覚を与えてしまったなんて、嫌だ……嫌だ、悲しい」
「なんでこうなったんだろうな? オレらはアイツに楽しい物語を提供してやってただけだぜ」
「そりゃアイツが物語ぶっ壊して回ったからさ」
男子高校生Bが笑って答えた。彼の近くに楽器はない。ドラマー役の彼の楽器は舞台装置としては大きすぎるので、設定上持ち運んでいない。
「あれが人間の独創性ってやつだな。オレたちを作ったのも人間だけど、彼はそれを上回って……上手いこと愉快な結末に仕上がった。エンディングは楽しかったな。オレとコイツは彼を一度泣かせてしまった。それでこの始末だ」
「言うな言いうな、みんな心当たりがある」
ロボットたちは笑いあった。少年を楽しませるためにジョークの心得は必要だった。その応用だ。少年が不在のこの場では必要のないはずのその行動を彼らが取ったのは、彼らの中の一つの変化だった。
「……今どうしてるかな。笑っててほしいな。なにか私にできること、したい」
ケーキ屋の娘がシナリオ上で渡しそびれた手紙を少年に届けることを決める
内容はロボットには読んでも認識できないようになっていたが、本来楽しいシナリオのラストで少年に手渡すはずものだったのだから中身はきっと少年を楽しませるものに違いない
ゴミの山からラジオを組み立ててシェルター内に放送するという案が出る
男子高校生Aがそれならオレはこのギターを送りたい、オレはシナリオに必要なこの曲しか弾けないけど人間なら新しい曲を作ってくれるかもしれない、と
でも流石にどこにいるかもわからない少年にギターみたいなサイズのものを投げて送るのは無理、じゃあ歌にしよう、男子高校生2人が演奏できる曲を、シナリオで少年に聞かせたあの曲をラジオで流そう、そのためにゴミの山からドラムを作って、他のロボットたちも演奏できるような楽器も作って、歌詞は手紙の内容に変えて、歌はケーキ屋の娘が歌うことにして―少女の声の音域なら少年の声に近いから、ラジオを聞いた少年がどこかで歌ってくれるかもしれないから
少年はゴミ処理場の稼働を止めるためにシェルターの管理人に会う
管理人もまたロボットで、少年を生存させ続けるために厳格にシェルターの管理を行っている
そのために作られたロボットにとって例外的な行動を取らせるのは悪いことだとはわかっているけど、どうしてもと少年はどうにか説得を試みる
そこにシェルター内のスピーカーから歌が聞こえてくる
ロボットたちが歌う手紙の内容は、少年の母親から少年に宛てたメッセージだった
少年の母親は少年のためにロボットたちとたくさんのシナリオを残した―だけど作られたシナリオで満足できないのなら、そろそろ外の世界へ出てもいいかもしれない、シェルターの外へ、『本当の冒険へ』
そのために管理人の権限を少し緩めるためのパスワードが書かれていた
ゴミ処理場の稼働が止まる
そしてシェルターの外へ、ロボットたちと冒険へ出ようというときに、ラジオから音声が流れる
「メーデーメーデー、生存者、居ますか? 音楽が、聞こえました」
少年はロボットたちと一緒に本当の冒険に出る