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    masasi9991

    @masasi9991

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    道タケ漣のリップクリームの話

    ##道タケ漣

    各種フレーバー 一

     今日は機嫌がいいらしい。膝の上にもぞもぞと上がり込んで、ぐっと背伸びをする。そうすると漣の目線は自分を少し見下ろす高さになって、やはり上機嫌でニッと笑った。
     そういうご機嫌な仕草が随分かわいい……いいや、不機嫌なときだってもちろんかわいい。ただ今日は上機嫌なその様子がかわいくて、背中に腕を回して背筋をくすぐるように撫でた。本当はそのまま抱き寄せたくもあったけど、漣の好きなようにして欲しかった。
     自分の考えていることが漣に伝わったのかどうかはさておき、背中を撫でられるのは悪くなかったらしい。機嫌よく鼻を鳴らした。
    「らーめん屋」
     と自分のことをただ呼んで、首に腕を回して背を丸めて顔を近づけた。
     キスの気分のようだ。機嫌のいいときの漣のキスは、甘噛みかただ唇を重ねるだけかのどちらか。今日は触れるだけ……らしい。薄い唇が柔らかく、間近で漣の匂いがふわりと鼻先をくすぐる。甘いようなそうでもないような、いい匂いだ。
     シャンプーもボディーソープも、服の柔軟剤も自分と同じ、もっと言うと食ってるものだって最近は自分とほとんど同じはずなのに、漣もタケルもそれぞれ少しずつ違ういい匂いがする。それが不思議でなんとも愛しい――。
     なんて考えていたら、触れるだけじゃ物足りなくなって、唇を開いて漣を誘った。ぎゅっと閉じた漣の唇をこっちから軽く喰んでやって合図する。漣もその気になってくれたのか、唇を開いて自分の口をちろりと舐める。
     と、思ったらガブリと噛みつかれた。
     なんだ? 今度は急にご機嫌斜めだ。
     機嫌のいいときの甘噛みとは違う。口の周りをあちこちガジガジ噛んで、噛み付いて、ちゅうと吸われる。乱暴だしめちゃくちゃだ。だけど痛くはない。何がしたいのかよくわからない……逆に言えば何か意図があるのだろうが。
    「漣、れーん、ストップ」
     背中を軽く叩いて訴える。自分が喋ってる間も漣が自分の上唇をべろべろと舐めようとして、前歯から鼻の下までその舌でもみくちゃにされた。
    「どうしたんだ急に」
     自分の顔から離れた漣は、膝の上にムスッとした顔で腰を下ろした。あからさまに不機嫌な目が下から自分を睨んでいる。
    「口にそのからいやつ塗るのやめろ」
    「ん? 口に?」
     言われてなんとなく口に手を当てる。まだあまり噛まれなかった下唇の端の方。とはいえ少しは漣の唾液で濡れて、ひんやりとした感触だった。
    「からいし、ベタベタする」
    「ああ、そういえばついさっきリップクリーム塗ったな……。買ってきたばかりの新しいのを下ろしたんだった。漣、メントールは苦手だったか」
    「メン……なんとかとか知らねーけどそれまじぃからやめろ。スースーしてニガからい」
    「悪かったって。今落とすからもうもう一度キスしてくれるか? っておい漣」
     近くにおいてあったティッシュに手を伸ばそうと瞬間、また漣が自分の首を捕まえてぐっと顔を近づけてきた。
     いかにも不機嫌につり上がった眉、への字の口、乱暴だけどじれったそうな手付き、そんなところがやっぱりかわいい。
     だから、されるがままだ。漣の唇がまた自分に噛み付いた。
    「漣、からいの嫌いなんじゃなかったのか?」
    「いちいちゴチャゴチャ喋んな」
     お叱りを受けて押し黙った。キスの距離で声を出されると、熱い息が吹きかかる。濡らされた口の周りにゾクゾクくる。
     それにもちろん、漣が熱心に自分の唇をぐりぐりと舐め回しているのもたまらなく気持ちがいい。噛んで吸って舐めて、何がしたいのかわかってしまった。
     不味いって言ってたくせに、そういうところがわかりやすくいじらしい、というか。
    「よし、キレイにしてやった! くはは!」
     唇を離して笑い声を上げたときにはまた上機嫌に戻っている。満足そうだ。自分の口の周りはすっかり全部リップクリームを舐め取られ、びちょびちょになってしまったが……。
     だけどそんなのも、買ったばかりのリップクリームが今後使うタイミングを考えなきゃならなくなったことも、そう大きな問題じゃない。
    「ありがとうな、漣」
     そう言いつつ背中を撫でる。やっぱりこれが今日はお気に召したようだ。また改めて首を掴まれ、今度は甘噛みされる。そう、大事なのはこっちの方。
     しかし代わりのリップクリームを早めに買ってこないといけなくなったな。無香料か、それとも甘い匂いのするものだったら、漣もタケルも気に入ってくれるだろうか。



     二

     台所の流し台を背にして、タケルの背中をそっと抱き寄せた。腕の中で緊張したように身体を固くする。胸にぴったりくっついた頬と耳が赤い。少し性急過ぎただろうか、と思いながら背中に回した腕に僅かな力を込めた。
     そんな自分に応えるように、タケルの方も自分の背中に回した腕に力が入る。そのまま身じろぎをするのが、まるで自分の胸に頬を擦り寄せてくれているみたいでたまらない気持ちになった。
    「円城寺さん」
     まだちょっと硬い声だ。恥ずかしさで赤くなった顔で自分を見上げてくる。いつでも、タケルのこんな控えめで初心な反応が嬉しくて心を乱されている気がする。
     ……本当はタケルがリラックスするまで待つべきなんだろうけど……それまでずっとこうやって第しめて、肌を寄せているというのも魅力的な選択肢ではある。だけどそれじゃ我慢できない。自分は堪え性がない。
     自分を見つめるその顔の、頬を拳で軽くくすぐる。熱くなっていて、相変わらず柔らかい。くすぐったいと窘められるかもしれないとも思ったが、タケルは自分を見上げる目をきゅっと閉じた。
     そして唇を薄く開けている。眉間にぎゅっと力が入っている。自分を待っている顔だ。自分は何も言っていないのに、下心が全部伝わってしまっているらしい。タケルのことがかわいくてたまらないのだから仕方がない。
     同意をもらった――というわけで、少し背を丸めてタケルへ顔を近づけた。タケルも背伸びをしようとする。自分の背中に回した腕に力が入って、それがわかる。でもあんまり負担をかけたくないから、自分がぐっと背を屈めて、でもそうすると上からタケルを襲ってるみたいで、ほんのりといけない気持ちが湧いてくる。とはいえタケルもそれを喜んでくれてるような気もするし……唇が触れて、すぐさま互いの舌が触れて、それほど激しくもなくじっくりと舌を絡ませ合って、まるでお互いの存在を確認し合うかのような動きで、タケルが応えてくれるから……いや、これが自惚れでなければ、だけど。
     そんな風に甘い思考に頭がたっぷり浸されるのに充分なほどゆっくり時間をかけてキスをして、体温と呼吸を持て余しながら唇を離した。熱っぽく、湿った呼気がタケルの唇から漏れる。興奮してる……。
    「円城寺さん、なんか……」
    「ん?」
     タケルが自身の唇を親指の腹でぐっと押さえた。どちらのものともわからない唾液で濡れて、ふっくらと赤くなっている唇だ。その淫靡な様子と少年らしい仕草がちぐはぐで、なんだかぐっと来てしまった。
    「あの……味が、……さっきなんか食ったか? プリンとか」
    「いや? ああ、リップクリームのことか」
    「リップクリーム?」
    「そう。さっき漣にもそれ言われたんだ。漣とキスしたときはメントールが入ったのを使ってて怒られた」
    「アイツ、そんなんで怒ったのか。塗ってたの円城寺さんなんだろ? 自分が塗られたんじゃなくて。ガキじゃねえんだから……」
     と、言いながらもタケルは途中で吹き出していた。腹を抱えて笑うようなものじゃなく、いつも通り控えめではあるけれども、口元が緩むのを堪えきれない様子で。
    「ま、でも……わかんなくもねーな」
     自分を見上げて目を細めるタケルは、きっとそのときの漣の様子を想像している。ちょっと妬けるな。それにかわいい。
    「というわけで、別のリップクリームを買ってきた。甘い匂いのヤツだったら、漣もタケルも気に入ってくれるんじゃないかと思ってな。どうだ?」
    「あー……」
    「なんてな。はは、自分のガラじゃなかったか」
    「そんなことねぇ。似合う……と思う。正直言って俺、普段から円城寺さんのこと甘い匂いがするっつーか、気のせいだとは思うんだけどキスとかすると味も甘いような、錯覚……つーか妄想……いや、言ってて俺わけわかんねーな。とにかく俺、円城寺さんのそう思ってる、から」
    「あ、ああ」
     頷きつつ、知らず知らずのうちに生唾を飲み込んでいた。タケルの言葉にクラっと来る。真っ直ぐストレートに放ってくるのは言葉だけじゃない。その目線もだ。胸を打つような。
    「だから、円城寺さんがホントに甘くて俺、自分の妄想と現実が区別できなくなったのかと思ってちょっとビビっちまった。あの……もう一回、してもいいか?」
    「うん?」
    「キス。……今度は俺からしたい」
     タケルは言葉を探しながら、胸の前でぎゅっと拳を握った。こんな真っ直ぐに言われて、ダメだなんて言えるか? そもそも断ろうなんて微塵も思い浮かびもしなかったけど。
    「もちろん!」
    「よかった。俺、焦りすぎかと思った」
    「いやー……それを言ったらさっきの自分の方が、なあ」
     先に我慢できなくなったのは自分の方だし。思い出してごまかすように笑っていると、タケルも自分を見上げたまま、ふと表情を崩した。
    「アイツも、円城寺さんにキスして、文句言いながら好き勝手したんだろ。リップクリームの味、マズいとかなんとか言いながら……」
    「よくわかったな」
     タケルは自分を見つめながら、漣のことを考えている。漣と、自分のことかな。そうして柔らかく口元を緩めている。……参ったな、また抱きしめたくなってきた。
    「アイツ、単純だからだいたいわかる。文句言うだけじゃ終わんねーだろってのも。……だから今度は俺の方から、キスしたい。いつもはしてもらうばっかだけど……アイツにできるんだ、俺にもできる」
    「その言い方はいつもと逆だな。よーし、どんと来い! 今ならまだ甘い味も残ってるぞ」
     照れ隠しに出た冗談に自分で笑ってしまったが、どんと来いはなかったか? 雰囲気を壊してしまったかもしれない。タケルが苦笑いをしてる。
     ……だけど緊張させるよりは良かったんじゃないか。自分からキスをするのって、やっぱり何回やっても緊張するよなぁ。
     苦笑いのその頬に手を当てると、タケルは今度こそ少し背伸びをした。
    「円城寺さん、あのさ」
    「ん」
    「俺、やっぱいつもの円城寺さんの味が好きだ。甘いのが悪いっつーわけじゃなくて」
     唇が触れる直前のその囁きが、また胸にガツンと来る。
     そんなかわいいこと言われちゃ……そうか……うん。そうか。無香料のヤツ、買ってくるか。
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