その日、アタリメはタコワサと供に灰殻都から少し離れた場所にある、侘びた離れの一室に居た。
すっと背筋を伸ばし正座するタコワサの隣で、あぐらをかいて頬杖を突き、同じ方角を眺めている。
開け放した障子からは、よく手入れされた庭が見えた。紅葉の季節には少し早く、銀杏の葉が僅かに端を黄色く染めた程度である。代わりに木々の緑はやや褪せて、瑞々しさを失っていた。
夏の残り香と初秋の気配が入り交じり、湿った風と清涼さが入り交じった空気にほどよい涼しさを感じる。
午後を少し過ぎていた。本来なら夕暮れに向けて空が色を変える頃であったが、生憎今は今にも降り出しそうな墨色の雲に覆われている。時折雲の中を走る光の筋だけが白い。
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