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    rinne_bl

    @rinne_bl

    ※投稿作品の転載・複製・改変・自作発言は一切禁止です※
    二次創作文字書きです。
    オル光♂、ウツハン♂など。
    オリジナル設定、捏造強めです。

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    POIPOI 21

    rinne_bl

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    蒼天で精神限界になった作者が幻覚を見るために書いたオルシュファン生存ifのオル光♂小説。
    https://poipiku.com/959220/8347064.html【中】
    https://poipiku.com/959220/7424403.html【後】
    ※3.0ネタバレを含みます
    ■ヒカセン設定
    名前:ルカ
    ミコッテ/男/吟遊詩人

    #オル光
    olLight
    #腐向け
    Rot
    ##蒼想スターチス

    蒼想スターチス【前】 酷い吹雪の夜だった。

     極寒のクルザスにおいてろくな防寒装備もなく、蝋人形のように表情を失ったアルフィノと、その手を引いて歩く光の戦士ルカが、キャンプ・ドラゴンヘッドを訪れた。その時のことをオルシュファンは忘れることはないだろう。
     別ルートで避難していたタタルと引き合わせ、身の安全を保証しても彼らの表情は晴れなかった。裏切りの上犯罪者として追い立てられ、仲間とは散り散りになり生死も不確かとあらば無理もない。オルシュファンの激励がなければ、暁の灯火はここで潰えていたことたろう。

    「今お前たちに必要なのはしっかりとした休息だろう。もう夜も遅い、寝床を用意するからまずはよく眠ることだ」
    「悪いな。しばらく世話にになる……ッ」

     ほっとした表情で話していたルカが突然よろめき、オルシュファンが咄嗟にそれを支えた。
     
    「ルカさん!?大丈夫でっすか!?」
    「いや、少し目眩がしただけだ」

     慌てて駆け寄り心配そうに見つめるタタルに問題ないと微笑み自分の足で立とうとするが、その体を支えるオルシュファンがそれを拒んだ。分厚いホーバージョン越しでもわかる程の高い体温に表情が険しくなる。

    「……友よ、お前熱があるのではないか?」

     ハッとしたようにアルフィノがグローブを外し額に手を翳す。

    「っ!酷い熱じゃないか!どうして何も……いや、あのときの私に言えるはずもないか……」
    「大袈裟だな……疲れでちょっと熱が出ただけだろ……」

     申し訳なさそうに顔を歪めるアルフィノの手をそっと退け立ち上がるが、その足元は覚束無い。見かねたオルシュファンが肩と膝裏に腕を回し、ひょいと抱えあげた。

    「おい、降ろせっ!」
    「治療師の元へ連れていく。ここは前衛基地だからな。24時間体制で誰かしら詰めている。風邪の診察くらいなんの問題もない」
    「いい!このくらい寝てれば治る!」
    「自分で歩けもしないくせに何を言う。慣れぬ土地での病は風邪といえど油断ならぬものだ。旅慣れているお前ならわかるだろう?」

     そういうと苦虫を噛み潰したような顔で押し黙り、抱えられた腕にの中に大人しく収まった。


    ――――――――――


     救護室には当直の治療師の他数人が詰めていた。遠い地で罪人として追い立てられた彼らが心配で、居ても立ってもいられなかったようだ。主に倣って誰もかれも、かの冒険者が好きらしい。

     医師の見立てによると、件の事件で心身ともに疲弊が蓄積した上、クルザスへの強行軍が祟ったのだろうということだった。元が頑強な冒険者なので、数日しっかりと休養を取れば回復するだろうという。
     そう告げた医師の言葉にアルフィノとタタルはほっと肩を撫でおろしていたが、当のルカといえば動き回れないのが落ち着かない様子だ。明日には何か仕事を手伝うなどと言い出しそうで、くれぐれも無理をしないよう口を酸っぱくして言い聞かされていた。

    「友よ、お前の仕事は寝ることと食べることだ。くれぐれも、砦の仕事を手伝おうと動き回ったりするじゃないぞ?皆にもお前には仕事を回さないよう厳命しておくからな」
    「わかったよ……」

     渋々返事をするルカは、なんだかんだ言いつつ薬を飲まされ布団に押し込まれた時点で半分眠りに落ちていた。この分なら今夜はよく眠れることだろう。
     
     オルシュファンが自室に戻るころには夜半をとうに過ぎていた。装備を解きつつ手を見ると、今しがた腕に抱いたものの感覚がよみがえる。

    (あいつは、あんなに小さかったのか……)

     エオルゼアに生きる種族の中でも比較的小柄なミコッテ族のルカは、オルシュファンの腕にすっぽりと収まる体躯だった。しかし、戦っているときは種族故の体格差など微塵も気にしたことがなかった。頼もしく、大きく感じていた彼が、こんなにも小さいとは。

     いくら強かろうと、特異な能力を持っていようと、彼はただの青年である。その背にどれほどの重荷を背負わされているのか。そしてその重圧を背負ってなお仲間のために奔走し、強大な敵に挑み続ける力をどこに秘めているのか。その小さな体が秘める命の強さが、オルシュファンを惹きつけてやまなかった。

     それは言うなれば、一目惚れというやつなのかもしれない。

     飛空挺の情報を求めた彼が初めてキャンプ・ドラゴンヘッドに訪れたときから、他の冒険者とは違う何かを感じていた。しなやかで力強い野生の獣のような肉体。 軽やかに戦場を駆け、苛烈に敵を追い詰める彼の姿は、オルシュファンが羨望する生の躍動そのものだった。戦いの最中だというのに胸が高鳴り、目が離せなかった。

     それからも彼の新しい一面を見る度に気持ちが膨れ上がっていく。表情の変化に乏しいだけで本当は茶目っ気があること。好奇心旺盛で、まだ見ぬ景色や人々に会う感動を求めて冒険者になったこと。謙遜しがちだか戦闘技術には誇りを持っていること。
     気づけば彼に抱く気持ちは友情という言葉には収まらないほど重く、熱を孕んだものとなっていた。

     しかしオルシュファンにそれを告げるつもりは毛頭無かった。『イイ騎士っていうのはあんたみたいな奴を言うんだろうな。そんな奴と友達っていうのは、なんか良いな』と眩しいものを見るような目で、私と友であることが嬉しいと話す彼に、どうしてもう友と思えないなどと言えるだろう。
     故にこの思いは胸に仕舞って、ただ彼の友であろうとした。彼が等身大の冒険者で居られるように、英雄の仮面を被らずに済むように。そうして自分の隣を心地よい場所と思って時折羽を休めに来てくれればそれでいい。

    そう、手に残る感触を燻った思いと共に振り払った。

    ――――――――――


     おぼろげな意識でルカが目を開けると、見慣れない石造りの天井があった。どうして自分はここで寝ているんだろう。昨日なにをしたんだっけか。

     サイドボードに置かれている水差しが目に入り、水を飲もうと体を起こそうとするが、重力が倍になったのかと思うほどに体が重い。グラスに注いだ水を喉に流し込んでそのままぼんやりしていると、部屋の扉が開いた。

    「む、起きていたのか。気分はどうだ?」
    「ん……悪くは、ない……」

     扉を開けたオルシュファンはいつものホーバージョン姿ではなく、暖かそうなイシュガルド風のガウンだった。それが物珍しくついじっと見つめてしまう。

    「もう少ししたら食事が運ばれてくるから、食べられるだけ食べるといい。……どうした?」
    「いや、あんたが鎧着てないのを初めて見たから……」
    「私とて休みの日に鎧など着ないさ。今日は非番なのだ」

     休み。いつ行ってもあの作戦室にいるからいつも働いてるような気がしたが、指揮官だって休みがあるのは当然だ。

    「……貴重な非番の日に、こんな所にいていいのか?」
    「何を言う!病の友を見舞うのは当然のことだろう!」

     当たり前に言われた友という言葉が、以前は嬉しくて仕方がなかったのに今は胸の奥がずん、と重くなる。特大の厄介事を抱えて転がり込み、庇護してもらっている立場で友と言ってもらっていいのだろうか。

    「それよりも、着替えを持ってきたから一度着替えた方がいい。かなり寝汗をかいただろう?」

     言われてみれば、じっとりと湿ったシャツが肌に張り付いて気持ちが悪い。

    「わざわざ悪いな。助かる」
    「見舞いのついでだ。それから背中も拭いてやろう。さぁ服を脱いであちらを向け」
    「……いや、それは自分でやる」

     こころなしか目がギラついてるような気がして断りを入れるが、オルシュファンはさらに圧を強めてくる。

    「遠慮をするな!病気のときくらい甘えるものだ!」
    「遠慮している訳じゃ……あんた変なこと考えてないだろうな?看病にかこつけて人の体に触ろうとか……」

     性的な意図がなかろうと、事ある毎に体つきや筋肉に興奮する奴に肌を晒すのはいささか抵抗がある。そんな思いで目を眇めればあっけらかんと返された。

    「なんだ、わかっているなら取り繕う必要もないな。さぁ!大人しく身を委ねよ!」
    「やっぱりかよ!ふざけるなこの変態!自分でやるからそのタオルをよこせ!」
    「ふっ、正当にお前の肉体に触れる機会を私が逃す訳がないだろう!」

     やいのやいのと攻防を繰り広げるが、高熱で寝込んでいる人間にろくな抵抗ができるはずもなく、くらりと感じた目眩に力が抜ける。

    「くっ……頭が……」
    「ほらみろ。病人なのだから大人しくしておけ」
    「誰のせいだとっ……もういい、好きにしろ」

     心底疲れたとシャツを脱ぎ捨てオルシュファンに背中を向けて座った。

    「あぁ……イイな、実にイイ!弓を引くだけあってお前の背中は実に美しい!鍛えられた肩と背筋に無駄なく引き絞られた腰の逆三角形が堪らない……!」
    「なんでもいいから早くしろ」

     案の定始まった肉体賛美に呆れて溜息をつく。熱い湯に浸して硬く絞ったタオルで体を拭われるとすっきりして、幾分か体が楽になった気がする。ふざけたことを言う割には触れる手は丁寧で、他意はないように感じられた。言動が怪しくても騎士であることを誇りにしている男だから、こちらが本当に嫌がることはしない。お互いそれを解った上での戯れだ。幼いころ親しい友人の居なかったルカにとって、それはくすぐったくも心地よく、口には出さないがそんな軽妙なやり取りが好きだった。

    「お前がナナモ女王暗殺の嫌疑で追われていると聞いたときは気が気でなかった。何度お前の元に駆けつけようと思ったことか」
    「それは、ここの連中の方が気が気じゃなかっただろうな」

     軽口をたたきながらもオルシュファンがルカのことを思ってくれているのが伝わるほどに、後ろめたさから胸の奥が苦しくなっていく。

    「……あんた、なんで俺にこんなに良くしてくれるんだ?」
    「うん?いつも言ってるだろう。お前が、私の誇る友だからだ」

     さも当然のように言うオルシュファンにまた胸の奥がずんと重くなる。躊躇いがちに開いた口から、心に燻っていた疑念がこぼれ落ちた。

    「…………俺に、そんな資格あるのかね」
    「……それはどういう意味だ」

     背中を拭いていた手が止まる。硬い声色にどう思われるのか恐ろしくなったが、溢れ出た澱みは止められなかった。

    「……俺は、戦うしかできないくせに誰も守れなかった。それなのに、あいつらは俺が暁の希望だから生き残れと言った。……俺は何を求められているんだろう」

     ドラゴンヘッドに来るまで目を背けていた澱みが顔を出す。何もしないでいると思考が嫌な方へ傾いてしまうから体を動かしていたかったのに、お節介な周りの人間がそれを許してはくれなかった。

    「今までは、何も考えずに目の前の敵をぶちのめしてきただけだ。その結果がこのザマだ。頭の良い奴に踊らされて、嵌められて……厄介者だって解っていながら、あんたなら助けてくれるだろうと転がり込んだ。こんな無様なのが英雄だなんておかしいったらない。どうせ名前が売れてるなら囮にでもした方がまだ役に立っただろうな……なぁ、それでもあんたは、俺を友だって言えるのか?」

     肩越しに振り向いていっその事笑ってやろうとしたが、酷く歪な笑みだったに違いない。怒ったような、苦しげな表情のオルシュファンに目を合わせることもできず視線を落とせば、腕の中に閉じ込められた。

    「オルシュファン……?」
    「私は、お前が好きだ」
    「は、……」
    「強さも、しなやかな体も、誠実な心も、戦うときの苛烈さも、冒険譚を語る楽しげな表情も、お前の全てを愛しく、大切に思っている」

     痛いほど強く抱きしめられ、感情を吐露される。驚きのあまり抵抗すら忘れたが、不思議と嫌悪感は感じなかった。

    「それはお前が英雄でなくとも、罪人として追い立てられようとも変わらん。だから自分が傷つけばよかったなどと言ってくれるな」

    強ばった背中をゆるゆると撫でられ、込み上げるものを慌てて押さえ込んた。

    「やめろよ……こんな時に優しくするな……俺は……っ」
    「泣いたって構わんさ。それを格好悪いなどと思うわけがなかろう。私の胸でも肩でも、いくらでも貸してやるとも」

     包み込む腕が心地よすぎて溺れてしまいそうで、これ以上はいけないと絞りだした声は情けなく震えていた。最後の意地でゆるく胸元を押し返すがびくともせず、逆に頭を優しく押さえつけられ、その広い胸に顔を埋めてしまう。

     誰に言われなくても無意識に英雄らしくあることを強いていたのかもしれない。被り続けた英雄の仮面が張り付いて、本当の自分がわからなくなっていた。辛いと思ってはいなかったが、本当は心のどこかがが悲鳴をあげていたようだ。

    「私を頼って弱みを晒け出してくれて、それでお前がまた笑えるようになるなら、それこそ友人冥利につきるというものだ」

     そう言われて、つうっと零れ落ちた一筋の涙を皮切りにぼろぼろと決壊した涙が溢れ出す。撫でてくれる温かい手が心地よいのに、さらに涙が溢れてしまって止められない。

     止まらないことを察したのか、ベッドの端に追いやられていた毛布をオルシュファンが手繰り寄せ、むき出しの体をそっと包み込む。毛布の上からゆるゆると撫でる手が心地良く、しばらくの間子供のように泣きじゃくった。


    ――――――――――



     
    「ありがとう、もう大丈夫だ」

     どのくらい経ったか、胸に顔を埋めていたルカが顔を上げた。涙を浮かべた目の奥には取り戻した意志の強さが見える。涙の膜を通して見るその輝きに、胸に火が灯るような熱さとやるせなさを感じた。どれほど心を折られようとも、そうやってこいつは立ち上がるのだろう。
     落ち着くと気恥ずかしくなってきたのか、乱雑に涙の跡を拭い目を伏せた。あえて追求することはせず、しばらく鼻をすする音だけが響いていたが、ポツリとルカが口を開いた。
     
    「………………好きっていうのは……友情以外の意味で、か?」

     躊躇いがちに問われた言葉は、勢いで告げてしまった私の心中についてのことだった。言うつもりのなかった告白を聞き流してはくれないかと思ったが、そう都合よくはいかないようだ。
     
    「……そうだ、私はお前を恋い慕っている。だが、どうこうなろうというつもりはないのだ。このまま良き友として接してくれればそれでいい。どうか忘れてくれ」

     観念して自分の気持ちを認めればルカは困惑したように視線をさ迷わせた。今まで友人と思っていた人間に劣情を向けられていると知れば当然だろう。良い反応を期待していたつもりはないが、諦めと同時に困らせてしまったことへの申し訳なさに胸が重くなる。叶うなら今までと変わらない関係を続けられれば、と苦し紛れに無かったことにしてくれるよう願い出れば、困惑を滲ませながらも頷いてくれた。

    「…………わかった」
      
     それに苦い笑みを返しながら、この話は終わりと使用済みのタオルや着替えを纏めて早々に彼の病室を出た。

     
    ――――――――――


     その後、元来の丈夫な体とドラゴンヘッドの人々の献身的な看護によりルカはすぐに快復し、オルシュファンの伝手を頼りイシュガルドへ渡った。オルシュファンとの関係は告白など最初から無かったかのように何も変わらなかった。ルカの心境を除いては。

     オルシュファンの秘めていた思いを聞いた時、正直なところ嫌悪感は感じなかった。しかし、ならば好きかと聞かれると簡単には頷けなかった。何せ生まれてから色恋とは縁のない人生を送ってきたのだ。集落にいた頃は母親の教えのもとひたすら鍛錬を重ね、冒険者になってからはとにかく生きるのに必死だった。
     
     だが、言葉に迷ったときのオルシュファンの苦い笑みを思い出すと、胸を掻きむしりたくなるような苦しみに襲われる。あんな表情をさせたくはなかったのに、何と返せばよかったのだろう。オルシュファンが向けてくれる思いと同じだけのものを、俺も返せたらいいのに。オルシュファンと共に居たら、この胸の痛みの理由もわかるだろうか。あるいは、自分の気持ちを見つめ直すだけの余裕が持てたら。

     そんな願いをかき消すかのように、ルカはイシュガルドの動乱に飲み込まれていった。

     そして――オルシュファンの名前が刻まれた冷たい慰霊碑を前にしてようやく、その答えを知るのだった。
     

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