Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    setsuen98

    @setsuen98

    自己満作品の倉庫

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💛 💜 💙 🌷
    POIPOI 34

    setsuen98

    ☆quiet follow

    🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。

    #suuki

     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
     スハから贈られた可愛い独占欲の証のデビュー日となる今日は、チョーカーをメインにコーディネートをすっきりと仕上げた。休みの日は髪を休めるためにもダウンスタイルが多いが、少し後れ毛を残して纏め上げ、顕になった首元を恋人からの贈り物で飾る。どんなに疲れた日だろうと意地でも抜かる事なく行なっている日々の手入れの賜物で、胸鎖乳突筋と鎖骨が美しく浮き出たデコルテはシンプルなものほどよく映える。イヤリングも控えめなデザインをチョイスし、足元にウィステリアカラーのハイヒールで華やかさをプラスすれば、綺麗めデートスタイルの完成。
    待ち合わせ場所で待っていたスハの嬉しそうな満面の笑みと手放しの褒め言葉にコーディネートに悩んだ時間が報われたと満足し、機嫌よくショッピングへと繰り出したがそのご機嫌は一日保つことなく、愛想笑いとも言えない僅かに口角を上げただけの表情で、今目の前で起こっている不愉快な光景を眺めていた。

     時間は約10分ほど前に遡る。
     一通り気になるショップを見て周り目的だった新作のバッグや服を購入し終える頃には流石に足も疲れていて、休憩にと入ったカフェ内で次いで入ってきた大学生のグループに声をかけられたかと思えば、彼らが件のアクセサリーショップに同行したという友人達だと言う。初めて会うにも関わらず、物怖じすることなく私にも遠慮なく話しかけてくる年下の子達に気圧されているのを察したスハが彼らを咎めると、面白がるように向こうのテンションは益々上がっていく。
    「もう、うるさい!デート中に乱入してくんな!浮奇に話しかけんな!」
    「ちょっと挨拶しただけじゃん!独占欲強い男は嫌われるぞー」
    「ねぇ、スハ?彼女さんにあのチョーカー渡す時にさ、教えてあげた意味とかも話したの?」
     私と話す時よりも乱雑な口調で話すスハを新鮮な気持ちで見ていると、一人の女の子がチラリとこちらを見てからスハの腕をつついて気を引き、何気ない風を装ってさらに二の腕に手を添え話し続ける。その言葉にああ、この子か。と納得しながらカップに口をつけるも、触れられている事に対して一切気にした様子もなく会話を続けるスハの様子にこの子がこうして触れるのは日常茶飯事なのだろうと察してしまい、迫り上がってくる嫌な感情と暴言を妙に苦く感じるコーヒーで腹の中に流し落とす。スハへの下心で触れているのか、単にスキンシップが多い子なのか判断もつかず、ましてやこちらは年上ともなれば感情のままその手を叩き落とすことなどできない。何より、腹が立つのは当たり前のように触れられたままのスハの方だった。以前サプライズで大学にスハを迎えに行った際も女生徒に触られていたのを思い出し、警戒心の無さと無神経さに余計むかむかとしてしまう。
    そんな感情なんてつゆ知らず、他の子達も話に交わって一段とスハ弄りが盛り上がりを見せる最中、必要最低限の物が収められた私のバッグの中で着信を告げる振動が響き、聞こえていないだろうとは思いながらも一言断りを入れて耳に端末を当てれば学生時代からの悪友とも言える友人からのお誘い。聞けば出先でいつものメンバーと鉢合わせたようで、皆で夕食でもどうか、と。遠くに住んでいる訳でもなく会おうと思えば会える面々ながら、こうして揃うのもなかなか珍しい。とは言え今日は先約があると少し名残惜しく感じつつ断ると、いつの間にか向こうでスピーカーにされていたようで残念がる言葉や来いと呼ぶ言葉がそれぞれの声で聞こえてくる。普段は文字でのやりとりが大半で、久々に聞く声と相変わらずなテンションに思わずくすくすと笑う最中、先ほどまで騒いでいた学生たちが口を噤みじっとこちらを見つめていることに気づき驚いてしまう。
    「え…なに、」
     思わずこぼれた怪訝そうな声にどうかしたかと問いかけてくる電話の向こうの友人に何でもないと返すと、片方の手をそっとスハに握られ視線を向けた瞬間声に出さず“行っちゃうの?”と問われた。下がった眉尻と縋るように見つめてくる瞳を見ると存在するはずのないしょんぼりと垂れ下がった耳や尻尾まで見えてくるようで、行くつもりはないと答えようとした矢先、スハの肩に触れた女の子の手が目に入りふと悪戯心が湧く。
    「あー…ごめんね、躾のなってないわんこがいるから、今日はその子の躾しないといけなくて。やっぱり行けない」
    『え?浮奇犬なんて飼ってたっけ?』
    「…飼ってるよ?ほら」
    そう言ってスハの方を見てなにも言わず微笑めば、きょとんとしたのも束の間にこちらの意を汲み、面白がるように、そして嬉しそうに「わん!」と元気に可愛らしく電話の向こうに向けて鳴き声を上げる。
    「…ね?」
    『めちゃくちゃ人の声だったけど、気づかなかった事にするわ…彼氏で遊ぶのも大概にしなよ』
    「遊ぶなんて人聞きの悪いこと言わないでよ。愛でてるの」
    『はいはい、そうですか。お邪魔しました!じゃあな!』
     悪友達のゲラゲラとした笑い声をバックに叩きつけるように吐かれた言葉を最後に通話が切れると端末をバッグに仕舞い、何事もなかったように澄ました顔をして少し冷めたコーヒーを口にする。うん、おいしい。
    わざと今のは何だと再び騒ぎ出した元気な声にかき消されてしまう程の囁くような声でスハ、と呼べば、級友の声など一切聞こえないとでもいうように無視をして私の方に身を乗り出す。予期せぬ動きに肩に乗せられたままだった女の子の手が滑り落ち、スハに触れるのは私の手だけになる。
    「首輪、買いに行こっか」
    握られたままの手を引っくり返し、お手をさせるようにスハの手を乗せる。そのまま長く骨張った左手の薬指の付け根を春らしいピンクのネイルで彩った爪先でつつきながら提案をすれば、意味を正しく理解したらしく頬を色付かせ、ほんとに?なんて弾んだ声で訊いてくるのが可愛らしい。爪を当てた際、少し力が入ってしまい薄ら爪痕が残ったことにも気づいてないみたい。
     唖然とした様子で私たちを見つめる彼らをくるりと見渡しにっこりと笑って見せると、慌てた様子で「愛想振りまかないで!」なんて止められたけど、どの口が言ってるんだろうね。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏🙏🙏😭😭😭👏💙💜💯🙏🙏😭😭💯💯💯💯💙💜💙💜💯☺☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    setsuen98

    DONE🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。
     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
    3139

    setsuen98

    DONE🌊🔮。芸能人×メイクさんパロ。
    まだ付き合ってない二人です。
     大きな鏡に写る自分の顔を見れば、あまりに不格好な表情に苦笑が溢れる。無意識に眉間に力が入り平素に比べ険しい目元に反して、口元はスタンプを押したようにわずかに口角が上がったまま。デビュー当時から、基本的にいつでも笑顔で、と口酸っぱく言われ続けた教えに忠実に従う自分の表情筋が今は恨めしい。
     デビューしてから駆け抜けてきたこの数年、自分なりに努力を積み重ねてきたおかげか、歌だけではなくテレビ出演や演技など、様々な仕事をもらえるようになった。有難いことに熱心に推してくれるファンもつき、かつて夢見た姿に少しずつではあるが近づけている。それなのにどうにも自分は欲深いようで、同じ事務所の後輩たちがデビューするなり順調すぎるほどのスピードでテレビやステージなど華々しい活躍を見せる度、劣等感と羨望が溢れどうしようもない気持ちに苛まれ、手のひらに爪が食い込むほどに握りしめそうになるのを堪えてすごい!と手を打ち鳴らす。そんな自分の姿が滑稽で醜くて、後輩たちに合わせる顔もなくなって、思考が自己嫌悪で埋め尽くされる。そんな気鬱が続く時がたまにあり、今まさにそんな気持ちを抱えながら雑誌撮影のためにメイクルームに入れば鏡に映るのはこの様。思わず項垂れ、少しでも胸中がすっきりしないかと大きく長く息を吐く。
    3790

    setsuen98

    MOURNING🦁👟みたいな何か。付き合ってません。
     ほぼ満席状態の店内。二人掛けのテーブルにルカと向かい合って座ってから、なんとも言えない無言の時間が過ぎていく。と言っても実際には大した時間は経っていないけど、黙り込んだまま相手が口火を切るのをただ待つ時間は何倍にも長く感じられる。だからと言って、いつもの快活とした姿とは異なり神妙な顔でテーブルを見つめるルカに「話って何?」なんて無遠慮に本題へ切り込むことなんて出来なくて、手持ち無沙汰にカップに口をつけブラックコーヒーをちびちびと啜るしか出来ず、日差しが降り注ぐ外をいい天気だなぁ…なんて現実逃避まがいに眺めていた。
     「シュウに相談したいことがある」と改まって連絡がきた時は、一体何事かと身構えてしまった。まさかルカの身に何か深刻な問題でも起きているのかと心配になり即座に了承の返信を打てば、カフェでお茶でもしながら聞いて欲しいとの思いのほかゆったりとした回答に、勝手な杞憂だったのかと胸を撫で下ろしたのが数日前のこと。ただ実際に顔を合わせてみるとこんな風に一切読めない様子で、大きな問題でないことを願う最中、突然ルカが顔を上げ僕の方を見つめたかと思えば、また直ぐに視線を落とし何度か口をモゴモゴとさせてようやく口を開いた。
    1583

    related works

    setsuen98

    DONE🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。
     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
    3139

    setsuen98

    DONE🌊🔮。芸能人×メイクさんパロ。
    まだ付き合ってない二人です。
     大きな鏡に写る自分の顔を見れば、あまりに不格好な表情に苦笑が溢れる。無意識に眉間に力が入り平素に比べ険しい目元に反して、口元はスタンプを押したようにわずかに口角が上がったまま。デビュー当時から、基本的にいつでも笑顔で、と口酸っぱく言われ続けた教えに忠実に従う自分の表情筋が今は恨めしい。
     デビューしてから駆け抜けてきたこの数年、自分なりに努力を積み重ねてきたおかげか、歌だけではなくテレビ出演や演技など、様々な仕事をもらえるようになった。有難いことに熱心に推してくれるファンもつき、かつて夢見た姿に少しずつではあるが近づけている。それなのにどうにも自分は欲深いようで、同じ事務所の後輩たちがデビューするなり順調すぎるほどのスピードでテレビやステージなど華々しい活躍を見せる度、劣等感と羨望が溢れどうしようもない気持ちに苛まれ、手のひらに爪が食い込むほどに握りしめそうになるのを堪えてすごい!と手を打ち鳴らす。そんな自分の姿が滑稽で醜くて、後輩たちに合わせる顔もなくなって、思考が自己嫌悪で埋め尽くされる。そんな気鬱が続く時がたまにあり、今まさにそんな気持ちを抱えながら雑誌撮影のためにメイクルームに入れば鏡に映るのはこの様。思わず項垂れ、少しでも胸中がすっきりしないかと大きく長く息を吐く。
    3790

    recommended works