無題「根性入れ直しに来た」
そう言って始まった組手は本人の心境を表すように荒々しかったが何処か悲壮感が垣間見えた。
玄武寺にやって来たケンは何故だかすっかり草臥れていた。
いつも小綺麗にして、明るく陽気で元気な奴だったのに。少なくともリュウの知る限りでは陰りと迷いのある拳を振るう奴では無かったのに。
何かあったのだろうが、リュウには知る由もない。
勝負は僅差でリュウが勝ったが現役から退いても健在の強さに昔から自分とは違い、天才肌であった事を思い出して気が引き締まった。油断していたつもりはないのに、変わらず恐ろしいセンスだ。
座り込むケンにリュウが手を伸ばすと無造作に伸びた前髪の隙間から蒼い瞳が向けられる。
長い睫毛が遠慮がちに伏せられてから自力で立ち上がった。
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