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    コンソメ

    @potesaramentai

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    コンソメ

    ☆こそフォロ

    ぬ〜べ〜カミソリ回パロ

    午前0時0分0秒の巻時刻は23時57分。家族に見つからないようにこっそり脱衣所へと忍び込み、洗面台のラックに差してある父親のT字カミソリを手に、パジャマ姿で風呂場へと入り、準備を整えた。

    まずは水を張った洗面器を用意し、カミソリを口に咥える。そうして午前0時0分0秒ちょうど。洗面器を覗き込めば、水面には自分の未来の結婚相手の顔が映っている———

    今日学校でクラスメイトから聞いた、誰が言い出したかわからない都市伝説。教室ではアホくさと一蹴したものの、案外ロマンチストなひよ里には密かな願望があった。

    (もし、真子やなかったら…)

    一抹の不安が胸を過ぎる。ハゲシンジとは、今日も今日とてケンカした。放課後にカラオケに誘ったら男友達と洋服の買い物に行くと断られ、ついつい手が出てしまったのだ。今思えば、別にこちらが先約だったわけでもないのにやり過ぎたかなと思わなくもない。やってあのハゲが人の歌声を発情期のゴリラに喩えるから。(しかも他の男子生徒もいる前で!)

    ひよ里と真子は別に交際しているわけではない。ただ、他よりは少しばかり付き合いの長い近所の級友だった。小学校でクラスメイトとして知り合い、お互い口を開けばケンカばかりなのだが、なんだかんだと中学も同じところに通っている。幼馴染と言ってもいいのかもしれない。通学も下校も、当たり前のように一緒だ。
    現状、もし誰かに一番仲の良い相手は?と聞かれればひよ里は真子の名前を挙げるだろうし、向こうだってそれは同じなのだ、多分。最近ちょっと自信ないけど。

    今はこんな感じだが、将来的に結婚するなら真子がいいなと、そんな風に淡い期待を寄せるくらいにはひよ里は真子のことが好きだ。人生まだまだこれからだというのに、中学生の視野というのはなんとも狭いものである。


    けれども中学に上がってから、真子は他の男子生徒とつるむことが多くなった。

    ひよ里にはわからない、まるで興味のない流行のファッションやら海外のアーティストの話で盛り上がっていて、入るに入っていけないのだ。そういう時、かまって欲しさに手が出てしまう。我ながらよくないなと思うが、これがなかなかやめられない。

    今日だって一緒にカラオケに行きたかっただけなのに。

    こんな感じでは遠くない未来に愛想を尽かされ、距離を置かれてしまうかもしれない。そうなれば、結婚どころではなくなってしまう。

    考えている間にも手元のスマートフォンが時を刻む。もうあと少しで0時ぴったりだ。

    5、4、3、2、1…

    (おし!今や!)

    カミソリの持ち手を口にえいやと覗き込めば、洗面器に張った水がゆらりと揺れて、自分の顔を映した。と、次の瞬間。

    水面のひよ里がぐにゃりと歪んで、新たな誰かの顔を映し出した。

    ——————それは紛れもなく真子であった。
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    コンソメ

    かきかけ一織結婚式に思うところのあるひよ里の話
    オシャレは足下から猛暑を越えて気候も穏やかなものとなり、そろそろ秋へと差し掛かる九月下旬。空は晴れ晴れとして青かった。地上よりも少しだけその上空に近い赤屋根の上では荘厳な鐘の音がぐわんぐわんと鳴り響く。くぐもって煩いその音に、遠巻きに式の様子を見下ろしていたひよ里は顔を顰める。
    皆から祝福の花の雨を浴びせられ、時にはヤジを飛ばされている、この式の主役である一組の男女。純白のドレスに身を包んだ栗髪の女が頬を赤らめ必死に涙を堪えているのを、呆れたように、けれど愛おしそうに口元を緩めて宥めるタキシードの青年はかつてボコボコにしごき倒したオレンジ頭。アイツ、タキシード似合わへんな。

    花嫁はゆるく波打たせたボリュームのある髪を結い上げることなくそのままに、サイドの毛のみを華やかに編み込んだハーフアップにしていた。トレードマークである柔らかい色の綺麗な長い髪が、ドレスの白によく映えている。豊満な胸元を何やら細やかな刺繍が入っているのであろう布地が品よく隠し、けれど布に覆われてなおそのスタイルの良さは一目瞭然であった。女性らしさの象徴である膨らみのすぐ下はキュッと締まって、しかし腰から足下にかけてふんだんなレースがふわりと広がる。それはもう、完璧な曲線であった。体型に恵まれたこの女は白無垢よりも断然ドレスが似合うのだろうなと、そんな誰しもにわかりきっていることを思う。
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