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    コンソメ

    @potesaramentai

    仕上げられない平子とひよ里の漫画やら小説やらが増えていく
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    コンソメ

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    書くのめっちゃ疲れる。

    因習村二十五年に一度、神無月の十三日に破瓜の神子を捧げよ
    村にはいくつかの言い伝えがあるが、とりわけこの村で要とされる掟は神子にまつわるものだった。二十五年に一度だけ執り行われる儀式にて、神子は吹き荒ぶ海へと身を投げその生涯を終えることで村を水難から救う神聖な存在とされてきた。神子といえば聞こえは良いが、要するに生け贄である。ひよ里はその掟のために今日まで村人に育てられてきた人身御供であった。齢は今年で破瓜となる。八朔生まれのひよ里は破瓜となって数ヶ月後、掟の通りその身を村の土着神に捧げることを幼い頃より約束されていた。
    ひよ里には身寄りがなかった。五つの頃に漁猟の際の水難事故で両親を亡くし、それから食糧に住処など、あらゆる局面で村人に支えられながらなんとかここまで生きてきた。村人としては来たるその日に捧げる生贄に死なれては困るという後ろ暗い思惑があったが、ひよ里が今日まで生きながらえてこられたのもまたその思惑のおかげでもあった。
    先の人身供養から数えてちょうど二十五年となる年に破瓜となる娘はひよ里の他に居らず、ゆえにそれまでに死なれては困る、けれども情が移っても困ると付かず離れずの距離を保ちながら慎重に育てられた。ひよ里に家族がないことも、村人にとってはこれ幸いであった。両親を亡くした当時五つであったひよ里の身を、元より住んでいた場所からあれよあれよと水神の祀られる神殿へと移させ、寝食を確約する代わりに神子に祭り上げ神事に仕えさせているのである。

    神子の朝は早い。四時には起床し、厠と洗顔を済ませたのち、朝飯よりも先ず滝行へと向かわなければならない。霊魂を清めるためである。控えの間から暫く歩いたところにある更衣室で水行衣に着替え額にはちまきを巻くと、手を合わせ村の教訓を唱えながら村外れにある滝へと足を進める。近くの岩場で草履を脱いで裸足になると、屈んで滝から流れてくる水を両手で掬い右肩、左肩、と水をかけて冷たさに身体を慣らしてゆく。
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    コンソメ

    MAIKING一織結婚式に思うところのあるひよ里の話
    オシャレは足下から猛暑を越えて気候も穏やかなものとなり、そろそろ秋へと差し掛かる九月下旬。空は晴れ晴れとして青かった。地上よりも少しだけその上空に近い赤屋根の上では荘厳な鐘の音がぐわんぐわんと鳴り響く。くぐもって煩いその音に、遠巻きに式の様子を見下ろしていたひよ里は顔を顰める。
    皆から祝福の花の雨を浴びせられ、時にはヤジを飛ばされている、この式の主役である一組の男女。純白のドレスに身を包んだ栗髪の女が頬を赤らめ必死に涙を堪えているのを、呆れたように、けれど愛おしそうに口元を緩めて宥めるタキシードの青年はかつてボコボコにしごき倒したオレンジ頭。アイツ、タキシード似合わへんな。

    花嫁はゆるく波打たせたボリュームのある髪を結い上げることなくそのままに、サイドの毛のみを華やかに編み込んだハーフアップにしていた。トレードマークである柔らかい色の綺麗な長い髪が、ドレスの白によく映えている。豊満な胸元を何やら細やかな刺繍が入っているのであろう布地が品よく隠し、けれど布に覆われてなおそのスタイルの良さは一目瞭然であった。女性らしさの象徴である膨らみのすぐ下はキュッと締まって、しかし腰から足下にかけてふんだんなレースがふわりと広がる。それはもう、完璧な曲線であった。体型に恵まれたこの女は白無垢よりも断然ドレスが似合うのだろうなと、そんな誰しもにわかりきっていることを思う。
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