大事な人それはある日の深夜だった。
その日は私、日帝の出兵が決まった日の夜。家元が私の部屋に来て
「怖い夢を見ました…父上、もうどこにも行かないでください…」
と言った。どんな夢を見たのかはわからないが、家元が抱きついてくるなんて、すごく怖い夢だったのだろう。
私は明日、戦場に行く身だ。戻れるかさえわからない。
当日の朝。私は家元にこう伝えた。
「私は遠い場所へ行ってきます。戻れるかもわからない場所へ。だからそれまでは貴方が、母上を守るのですよ」と。
家元は涙ぐみながら頷いた。菊には「この国のことは貴方に任せます」と言い、家から出た。