脹虎(現パロ) 煙草を吸うようになったのはいつだったか。ベランダの手すりに肘を乗せそれを燻らせながらも車が行き交う様子を眺める。頬を撫ぜる風が気持ちいい。堪らず瞼を下ろせばガラガラと窓の開く音が聞こえてきた。
「また吸ってんのかよ」
その声に反応して濃い隈に囲まれた目を開いてから振り向く。と、オーバーサイズのシャツと下着を身に着けた悠仁が立っていた。裾から覗く至る所に刻まれた赤い痕と痛々しい歯形が情事を匂わせる。二人は兄弟でありながらソウイウ関係だった。
悠仁はサンダルを履いて煙草を吸う脹相の隣に並ぶ。
「そんなに美味しい?」
「いや、美味いと思ったことはない」
「何それ。全然説得力ねえー」
「はは…まぁ、そうなるか…」
「ちょっと吸わせてよ」
「悠仁?よせ、やめておけ」
「いいからいいから」
脹相の煙草を奪い取るや否や悠仁は銜えた。単なる興味本位でスー、と煙を肺に送り込んでみたが拒絶反応が起こすように激しく噎せる。慌てた脹相がその口から煙草を奪い取り携帯灰皿でもみ消すと上下する背中を撫でた。
「ゲホッ…、っ、まっず……」
「だから言っただろう」
「ハー、こんなんよく吸えんね…」
うへぇ、と舌を出し、ぐったりした様子で手すりに寄り掛かる悠仁に脹相は眉を下げて困ったように笑ってみせた。