なんか小さくて可愛い奴になった…ってコト!? その日、朝方から円はついていなかった。術の手順を間違えたのか、目覚まし代わりの式神にいつもよりも強く叩かれた。あと、朝食のときに手が滑って、湯呑みの中身を零してしまった。
疫病神のようなものならば、憑いていたかもしれない。文句の一つも吐かず、式神も使わず、大人しく机を拭く。ここまでしたから、後できっとイイことがあるはず。やや愚直なまでに、そう信じて。手を動かしながら、耳飾りも彷徨うように揺れる。
円の願いは、打ち砕かれる事態になった。
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帝都の軍人である円たちは「刀衆」という部隊に所属している。帯刀を許可され、立派な役職のようだが、業務は実質的にほぼ皆無だ。良家の子息、言い方を変えればお坊ちゃん、彼らを軍人として配置するには、人間世界より安全であるとされる異界の方がうってつけというわけである。さしずめ、鳥籠の中だ。
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