甘味僅かな物音に意識が浮上する。薄らと開けた瞼に月明かりでぼんやりと浮かぶ人影に気がつく。
「ふみやさん?」名を呼ぶと引き寄せられたように天彦の横にドサリと倒れ込んだ本人から返事は無い。
「夜這いですか?ふふ…、セクシーなことをしてくれますね。この天堂天彦の胸でお眠りに……、って、寝てる?」
居心地の良い場所を探るようにもぞもぞと動く姿はまるで猫のようだ。唸るように漏れる声と、眉間に皺が寄っていたが、落ち着く場所が決まったのか皺は取れ、年相応のあどけない表情から寝息が聞こえる。
「部屋を間違えるなんて珍しいですね」
体が冷えないようにと肌触りの良いブランケットをかけてやり、心地良い人肌の温かさに天彦もすぐに意識は夢の中へ落ちていった。
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