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    kurayoshi_9

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    kurayoshi_9

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    #ファンアート #ばすてとさん大感謝祭 こちらばすてとさん(@h190145_100531c )に捧げる夢小説です。ご意見等は私にお願いします。

    甘やかされましたよ、お姉ちゃん 公安の仕事は、そりゃまぁ色々ある。
     仮免試験の監督とか、テロの防止対策とか、口にできる仕事からできない仕事まで色々ある。その中で最も長期戦になるのが内部監査だ。
     内部監査は、ヒーローが汚職してないかとか、情報の保管方法を確認して情報漏洩の危険性がないかチェックするって仕事。で、その監査する人が僕ら公安というわけですが…。
    「絶対ヒーローの数と公安職員の数が見合ってない…」
     一人で何十件も監査しないといけないんだよねぇ…。あっちのヒーロー事務所行ったりこっちのヒーロー事務所行ったりってのを数日間しなきゃいけない。数時間で終わる事務所もあれば一日がかりの事務所もある。監査が終わったら報告書も仕上げて提出しないといけないから睡眠時間もろくに取れない。はっきり言って地獄だよ…。まぁやりますけどね…仕事だから…。
    「さて次は…ベストジーニストか…早く終わりそうだな…」
     SKが多かったり、事件解決件数が多いとそれだけチェック項目が増える。だから人気ヒーローの事務所は必然的に時間がかかる。まぁオールマイト現役時代よりはマシか…一回行ったことあるけど一日じゃ終わらなかったんだよね…あとエンデヴァーも一日じゃ終わらなかったなぁ…もう二度と行きたくない…。
     でもベストジーニストは違う。ぴっちり整えられた書類、質疑応答も簡潔かつ理解しやすいし裏も取りやすい。正直言って最高の事務所だ。マジでありがたい。
    「さて…早く終わらせて報告書…」
     今日で何徹目だろうか…覚えてないなぁ…。自宅のベッドが恋しい…仮眠室の寝心地悪いベッドでもいい…。


    「申し訳ございません。ベストジーニストは緊急出動要請がありましてそちらに…」
    「あらら…タイミングが悪かったですね…所長抜きでは監査できないんですが……よろしければ少し待たせていただいてもいいですか?長引くようなら出直しますので」
    「ええもちろん。ご案内します」
     緊急要請は仕方ないよなぁ…仕方ないけど空気読めやヴィラン……ぶっ殺すぞ…?
     …………………………いかん、寝不足で怒りっぽい気がする…SKさんにお願いして仮眠させてもらおうか…いや寝てる暇があったら報告書書きたい。
    「こちらでお待ちくださ…あれあーちゃん?」
    「こんにちは〜」
    「こんにちは。ジーニストに会いに来たの?」
    「うん!でもいないからここで待っててねって言われたの」
    「そっか…。朧さん申し訳ありませんが別室で「ちよけらとぷすさん…!?」…へ?」
    「…だあれ?」
    「失礼しました。ヒーロー公安委員会所属、鷹見朧と申します。アーティのことは啓悟…ホークスから伺っております」
    「ホーくんから?」
    「かわいい……ゴホン。はい、ホーくんから。僕ホーくんのお姉ちゃんです」
    「ホーくんのおねいちゃん…!はじめまして!猫部ちよこです!」
    「かわいい。めっちゃ可愛い………ゴホン。はじめまして。よろしくお願いします」
     SNSやコンテストでイラストを見てからちよけらとぷすさんのファンなんだよね…まさか会えるとは思わなかった……うわぁサイン欲しい…でも今は仕事だから我慢しないと…。
    「…あのぉ…別室にご案内を…」
    「…失礼。お願い「つなぐくん待ってるの?じゃあ一緒に待とう?」…えっ?」
    「ホーくんのおねいちゃんとお話したいから…だめ?」
    「ダメじゃないです…!!むしろ光栄の限りです…!!」
    「やった〜!」
     我慢できなかった……。即落ちだった…。うぅ…今日だけ…今日だけは特別…!!だってちよけらとぷすさんが目の前にいるんだし…!!
     僕はちよけらとぷすさんの…アーティの向かいのソファに座った。ニコニコ顔のアーティが可愛くて直視できなかったのでSKさんの方を向き、ここで待つことを伝える。SKさんは笑顔で了承してくれた。しかもお茶まで用意してくれた。さすがベストジーニストのSK…。
    「ではごゆっくり…あーちゃんまたね」
    「ありがとうございます」
    「またね〜」
    「手振ってるアーティ可愛すぎんか?」
    「?どしたの?」
    「いえ何でもないで、す…………アーティ、それはスケッチブックですか?」
    「うん、そうだよ?見る?」
    「よ、よろしいのですか?」
    「いいよ〜。どーぞ」
     か、軽い…!!ご飯の時の「醤油取って」「はい」ぐらい軽い…!!いいんですかそんなに軽くスケッチブック渡して…!これ大事なものでは…!?
     震える手でスケッチブックを受け取り、中を拝見する。
    「……やっぱり、アーティの絵は良いですね…見ているだけで楽しくなる。僕好きです」
    「えへへ…ありがとう…」
    「構図、色使いも好きですし…何より『楽しい』『嬉しい』といった感情を強く。………………過去の僕にも見せてあげたいなぁ」
    「おねいちゃん…?」
    「……失礼。何でもありませんよ。ありがとうございました。お返しします」
     ダメだな…疲れてるからか、余計なことを口走ってしまう。過去は思い出さないと決めたのに、好きな絵を見て思い返すなど、作者に失礼じゃないか…。
    「…ところでアーティはベストジーニストに何か用事が?」
    「ううん。遊びに来ただけ。おねいちゃんは?」
    「今日はジーニアスOFFICEの内部監査をしに来まして…」
    「…ないぶかんさ?」
    「首傾げるアーティ可愛い…じゃない。…ざっくり説明するとルールを守っているか確認しに来たんです。で、確認し終わったらそれを報告しないといけなくて…」
    「ほうこく?誰にするの?」
    「公安でふんぞり返っている無能……もとい公安の上の人にですね。全てのヒーローの内部監査するんだったらその分職員増やせってのに費用が資格がとか言ってなかなか増やしやがらないんですからあの廃棄物ども…………おっと失礼。アーティの前で言うことではないですね。忘れてください」
    「お、おねいちゃんだいぶお疲れ…?」
    「いえいえそんな。まだ頑張れます」
     アーティを心配させないため、サムズアップで元気なのをアピールする。ええ僕は元気です。大丈夫。まだやれます。
     アーティはじっと僕を見ると、ソファを降りて僕の隣へ移動した。
    「アーティ?どうなさいま…!?」
    「ホーくんが『お姉ちゃんは頑張りすぎて無理する事があるんですよ』って言ってた。無理しちゃダメだよ?お体壊したらダメよ?」
    「え、あ、はい、気をつけます…」
     あ、頭撫でられてしまった…。僕誰かに撫でてもらうの初めてじゃないか…?


    「むー…つなぐくん遅いねぇ…」
    「そうですねぇ…」
     だいぶ時間が経ってもベストジーニストは帰ってこない。ヴィランに手こずっている…?いやベストジーニストが手こずるほどの強敵なら何かしら情報が降りてきてもおかしくない。降りてきてないなら問題ないということだろう。
     問題なのは、僕の方かな。
    (アーティと話していても睡魔が来るとは…)
     さっきからアクビを抑えるのに必死なんだよね…心なしか思考もぼやけて何言ってるのか自覚できなくなってきた…大丈夫かな、変なこと言ってないかな……いやこれはもっと睡魔が来る前にアーティの前から去った方がいいのでは?
     ……………………うん、そんな気がしてきた。監査は別の日にして次の事務所に行こう。
    「アーティ。僕そろそろ失礼しますね」
    「?帰っちゃうの?」
    「いえ仕事が残っているので、次の事務所に向かおうかと思いまして」
    「…………それ、今日中じゃないとダメなの?」
    「いえそういう訳ではありませんが…でも早く終わらせてしまいたいので…」
     …ん?なんかジト目で見られているような…?可愛い。いやそうじゃない。何か不快になること言ったかな…。
    「アーティ僕何か「休まないとダメ!」………はい?」
    「おねいちゃんさっきから眠いの我慢してるでしょ!つなぐくんがダメダメになった時とおんなじ顔してる!休まないとダメ!」
    「怒ってるのに全然怖くないアーティ可愛いかよアニマルセラピーじゃん…違う。いや違くないけど…いかん頭回らん……………アーティと話したのでだいぶ休めましたよ?大丈夫です」
    「大丈夫じゃなーい!!休むの!!ねんねするの!はいねんね!僕見ててあげるから!」
    「いやアーティにそんなこと申し訳な「なくない!おねいちゃんだからってずっと頑張らなくていいの!お休みしてもいいの!」いやでも仕事なので…」
     な、なんでさらにジト目に…頬膨らませてこっち見ないでください可愛い。その頬ツンツンしたくなる…!!
     思わず目を逸らした僕の隙をついて、アーティは僕の頭を引き寄せて抱きしめてきた。
    「アアアアアアーティ!?何を「今日はおねいちゃんお休み!ねんねねんね…」
     背中をトントンされて意識が飛びかける。いかんこれは絶対寝る…!というかむしろバブる…!!いかんいかんいかんそれは流石にいかん…!!
    「アーティ…僕本当に大丈夫ですから…離していただけませんか…」
    「むー…やだ」
    「やだじゃなくて…というかこれベストジーニストに見られたら僕気まずいんですが」
    「僕がいいからいいの!」
    「そうだな。ちぃがいいなら許そう」
    「そういう訳には…………………待って、いつからいましたベストジーニスト」
     後ろを振り返ると、ベストジーニストが腕を組んで僕らを見ていた。前門のアーティ、後門のベストジーニスト…ひぇ…助けて啓悟…。
    「ちぃが『眠いの我慢してるでしょ!』って言ったあたりだな」
    「じゃあアーティを止めてくださいよ…」
    「ちぃがお姉ちゃんしてるのが可愛かったからな」
    「つなぐくん!おねいちゃん見張ってて!僕ホットミルク作ってくるから!!」
    「本気で寝かす気じゃないですか!!待ってください僕本当に大丈夫で「わかった。火傷しないように気をつけるんだぞ」ベストジーニスト!?」
     僕の制止もむなしく、アーティは部屋を出てしまった。
    「ベストジーニスト…止めてくださいよ…」
    「優しい子だからな無理だな。特に君はホークスの姉だから余計に心配されていると思う」
    「そんなに仲良いんですか…アーティと啓悟は…」
    「ホークスから色々と無理をしていると聞いてとても心配していた」
    「会ったことない僕を?聖女かよ…」
     優しさが身に染みて涙が出そう…。今日初めて会った僕をこんなにも心配してくれるなんて…というかそんなに心配させてしまったなんて申し訳ない…。戻ってきたら素直に休ませてもらおうかな…。
    「…優しすぎて自分を苦しめたこともあるがな」
    「……は?何かあったんですか?」
     ベストジーニストは僕にアーティの過去を教えてくれた。


    「おまたせー!はい、これ飲んでねんねして!」
    「………ありがとうございます」
     アーティが差し出したマグカップを受け取り、一口すする。甘いミルクの味が口に広がり思わず、ほぅ…と息が漏れた。
    「おいしい?」
    「美味しいです。ありがとうございますアーティ」
     頭を優しく撫でると、えへへ、とアーティは照れくさそうに笑った。可愛いなぁ…ほんとに可愛い…。連れて帰っ…たらベストジーニストに殺されるから我慢しよう…。ここでいっぱい愛でておこう…。
    「ん…おねいちゃんなでなでじょうず…」
    「それはよかった。……アーティ?寝かけてません?」
    「んん……だいじょうぶ…」
    「瞼がほとんど落ちてますよ。アーティも寝ますか?」
    「…ぼくも…?おねいちゃんは…?」
    「仮眠室お借りしてもいいそうなので、そちらに行こうかと…アーティも行きますか?」
    「いく……おねいちゃんといっしょにおひるねする…」
    「……えーっと…ベストジーニスト…」
    「……ちぃの好きにさせてやってくれ」
    「あっはい。承知しました。……アーティが完全に寝たので連れていきますね。監査は後日改めて…」
    「わかった。…おやすみ二人とも」
    「………おやすみなさい。失礼します」
     飲み終わったコップと寝落ちたアーティを抱っこして部屋を出る。途中で会ったSKさんにコップを渡して仮眠室へ向かった。
     …今日はすごく甘やかされたなぁ…アーティの方が年下なのにしっかりしてるわ…。こんなに小さくてもお姉ちゃんなんですね…偉いなぁ…。
    「…次お会いした時は、僕が『お姉ちゃん』してあげたいですね…今日いいとこ見せられなかったから、名誉挽回しないと…」
     何をしよう?いろいろお出かけとか?買い物好きかな…?あ、動物園とかいいかもしれない。ベストジーニストに相談してみよう。行く時はベストジーニストと啓悟も一緒のほうが楽しいよね。三茶さんも誘う?いいね、わくわくしてきた。
    「……………まぁその前に、ゴミ処理しておかないとね」
     きっとアーティは望まない。むしろ止めるだろう。
     でもごめんなさい。僕の気が済まないので、勝手にしますね。
    「怒ってもいいです。なんなら恨んでくれてもいい。訴えて僕を刑務所行きにすることもできるでしょうから、してもいいですよ」
     ヒーローを守ることが、僕の存在意義ですから。傷付けるなら容赦しません。
     例えそれがもう終わったことでも。
     仮眠室についたので、アーティと一緒にベッドで横になる。寝顔可愛い…。僕の服をギュって握ってるのも可愛い…。
    「んー…動物園もいいですけど、水族館もいいですね。………………その前にアーティ僕とも遊んでくれるかなぁ…」
     遊んでくれるといいなぁ…と期待を寄せながら、僕はいつ振りかわからない仮眠をとった。
     おやすみなさいアーティ。良い夢を。
     
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