風と手拭いその日は朝から風が強かった。
非番だった蜂須賀は、朝起きてから昼前までは厨番の簡単な手伝いや読み物等をしてのんびりと過ごした。
昼食後、腹ごなしに本丸内をぶらぶらと歩いていたら道場で手合せをしていた何振りかの刀達が声を掛けてくれ、少しだけ鍛錬に混ぜてもらった。
着替えもなかったので着物のまま軽く竹刀を振るっただけだったが、これがなかなか良い気分転換になった。
(いつもの戦闘服の時と同じとはいかないが、この着物でも戦おうと思えばそれなりに動けるものだ。いざという時のため、覚えておこう。)
思いがけず充実した時間を過ごせた蜂須賀は仲間たちに礼を言って道場を後にした。水場で軽く顔を洗い、手拭いを片手に外廊下をゆっくりと歩き、自室に戻ろうとした。
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