その12 その日の夕方。喫茶店に集まった3人は、曲に向けて意見交換をする。
「曲って大体何分? 4分くらい?」
ブラックコーヒーにミルクと砂糖を入れながら、テーブル席に座るイチヤは2人に訊く。
「時間もないし、今の私達にはその長さは難しいんじゃないかな」
正面の席に座るナミダは、ミルクティーのカップを手に取る。
「やるなら2分弱だな。結成したばかりのバンドを知ってもらうには、1分じゃ物足りない」
イチヤと隣に座るイッカンはそう言って、ブラックコーヒーを一口飲んだ。
白黒からカラーへとテレビが移り変わり始めた時代、ポップミュージックの基盤とも言えるヒット曲の数々は平均2分半ほどしかなかった。そこから曲の長期化が始まると4分弱となり、さらに時代を経た今は平均3分半となっている。
2000