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    akizuki41

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    akizuki41

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    タグでいただいたセリフ「知らない笑顔で知らない誰かといる」で書かせていただきました!りしさんありがとう!

    【rnis】知らない「そうなんですか!」
    「そうそう!でさ、」
    「ははは、面白すぎ!」

     凛は切長の目をさらに尖らせて、十数メートル先で知らない男と談笑している恋人を睨みつけた。当然彼に届く訳もなく、恋人は楽しそうに満面の笑みを浮かべている。ケタケタと楽しそうに笑い、手を叩いている。凛は一つ舌打ちをして、つかつかとぴょこりと揺れる双葉に向かって歩み出した。

     凛と潔はいわゆる交際関係にあった。ブルーロック収監中からお付き合いを始め、今は共にフランスのチームでプレーをし、一緒に暮らしている。
     今はチームのスポンサー主催のパーティの真っ只中。圧倒的な実力と、モデル顔負けの顔面とスタイルを持った凛には、当然のようにハイエナたちが群がった。私が私がと押しのけ合う女たちに辟易して、癒しを求めて恋人の姿を探していたところ、見つけたのが先の光景だ。

    「でさ、その時社長が『俺も連れてけ。金なら出す』とか言い出して」
    「え!社長さん、そんな可愛い感じなんですか?!人嫌いなのかと思ってた」

     潔はモテる。女性ファンの多い凛とは違い、潔は老若男女に好かれやすい。潔に思いを寄せる輩は、母数が多い分変なのも多い。ブルーロックの面々がいい例だ。
     凛との交際関係を正式に公表していないのも手伝い、潔を手に入れようと画策する奴は後を絶たない。いくら凛が潔との関係を匂わせても、それでもなおしぶとく潔に迫るのだ。潔は地球が産んだ世紀の鈍感野郎なので、全く気づいていないが。
     今潔が楽しそうに話している相手も、明らかに潔に好感情を持っている。恋愛感情否かは関係なく、凛は気に入らなかった。

    「顔怖いから誤解されがちだけど、実は寂しがり」
    「そうだったんですね!じゃあ、今度からは俺からも話しかけてみようかな」
    「お、それなら俺アポ組むよ」
    「いいんですか?!」
    「うん。じゃあ連絡先教えて」

     潔がスマホを探してポケットを漁り出したところで、凛はその腕を掴んだ。

    「りん?」
    「あっちで監督が呼んでる」
    「監督が?ちょっと待って。連絡先を交換してから…」
    「早くしろ」

     スマホを操作しようとするその手を引いてその場を離れる。後ろで潔が、わっ、ちょっと抵抗しているのも気にせず、腕を引いた。潔は諦めたのか、一つだけため息を吐き、すみません、後ほど、と言って大人しく凛に付いてきた。凛はち、と舌打ちをした。
     姦しい会場を出て扉を閉めると、廊下は静寂に包まれた。

    「で?監督は?」
    「今日は別件でいないって言ってたろ、カス」
    「はあ?!まじでなんなんだよ」

     ぷりぷりと怒りながら扉にかけられた手を、一回り大きな手が覆う。

    「凛?どうした?」

     艶を持った前髪の隙間から、大きな青の瞳が不思議そうに見上げる。凛は何も言わず、じっとその瞳を見つめ返した。暫く見つめ合った後、潔ははっと気づいたように目を見開いた。

    「え!なに?嫉妬?!」

     気まずげにそらされた瞳が正解だと告げる。潔はアウイナイトをこれでもかと輝かせ、口元を緩ませる。ニヤニヤと笑いながら凛の意外と柔い頬をつついた。

    「凛も可愛いところある〜!」
    「うるせえ」

     余裕の表情でからかってくる、申し訳程度に年上の恋人の口を、己の口で塞ぐ。繋がった唇のあわいから慎ましい水音が響く。

    「んっ、ちょっと…りんっ…」
    「ん…」
    「まてって、ここじゃひとくる…」

     弱々しく胸を叩かれ、名残惜しくも解放する。潔の頬を朱に染め、少しだけ息を上げている姿に下半身が熱を持ちかける。

    「こういうことは帰ってから、な?」

     妙に色香をまとった唇で、出来の悪い子供に言い聞かせるように諭される。凛は舌を鳴らし、潔の手を引いて会場へ戻った。色めき立つ人々なんぞ目の端にも入れず、ロキのもとへと直行した。何かを告げた後、ロキが頷いたのを確認して、そのまま会場を出る。

    「凛?帰るのか?」
    「早く荷物受け取ってこい」

     ロビーで預けていた二人分の荷物を受け取り、いつの間にか凛が手配していたタクシーに乗り込む。
     暗い街に浮かぶ光が前から後ろへと流れていく。
     頬杖を突いて窓の外を眺める凛を、盗み見た。街の光が端正な凛の顔を照らし、堀の深さを強調する。輝く新橋色が美しくて、潔はつい見惚れてしまった。
     ふと、凛が潔の方へ視線を向ける。潔はぎくりと体を震わせて、目を逸らした。凛の手が潔の頬に伸びる。すり、と親指で唇を擦り、そのまま離される。

    (早く着いてくれ)

     潔は赤くなった頬を隠すように俯き、誰にともなく祈った。

    「んっ…ふぅ…りん…」
    「はっ…」

     二人の吐息が混じり合う。くちゅくちゅっと唾液の混ざる音が暗い部屋に響いた。
     タクシーを降りて、玄関の扉を閉めるなり、凛は潔の後頭部を鷲掴み唇を覆った。呼吸を奪うようなキスに、潔は腰を抜かしかけた。その震える腰を凛の逞しい手が抑える。股同士が密着し、互いの熱が直に伝わる。
     銀糸を引いて、二人の唇が離れる。はぁはぁと途切れ途切れの呼気が響く。

    「りん…どうしたんだよ。いつもはこんな急じゃないじゃん」
    「うるせえ…」

     凛は、潔の体を強く抱きしめる。潔は、苦しいって、とくすくすと笑った。

    「そんな焦らなくても俺はお前から離れないよ」

     凛の腕の力が強くなる。潔はぽんぽんと背を叩いた。

    「りーん」
    「…お前はいつも知らない笑顔で誰かといる」
    「?」
    「他の奴の前で見せる笑顔を、俺は見たことがない」
    「??」

     潔は体を離し、首を傾げて凛を見上げた。

    「俺、凛の前でも結構笑ってる気するけど…」
    「違ぇ。お前、俺の前じゃあんなに楽しそうに笑わねーだろ」
    「そう…?」

     口に手を当てて、考えてみる。一つの可能性に思い当たる。ぶわりと顔が熱くなるのを感じた。

    「りん…あのさ」
    「…んだよ」
    「一つ思い当たることがあるんだけど…」

     そこまで言って潔は口籠った。あー、とか、うー、とか、特に意味を為さない言葉を発し続ける。そんな潔に焦れた凛が、早く言え、と急かす。

    「…から」

     潔は俯いたまま、小さく声を出した。

    「あ?聞こえねー」
    「だから!お前だけに恋してるから!」
    「は?」

     凛が目を見開いて固まる。

    「何ていうか、お前への恋心?的なのが漏れ出てるだけと言いますか…他の奴と話す時とは違った緊張感があると言いますか…」
    「……」

     潔は徐々に顔を俯けながら、消え入りそうな声で言い募った。凛は固まったまま、血走った目で潔を凝視した。潔がおずおずと顔を上げる。

    「引いた…?」

     瞳を覗き込まれ、はっと我に返る。凛は考える間もなく潔の一回り小さい、でもしっかりとしたその体を抱きしめた。ぐえっという潰れたような声がするが、構わない。

    「潔…」
    「ん?」
    「お前ふざけるなよ…」
    「はあ?!」

     ぎゃーぎゃーと騒ぐ潔の口をキスで黙らせる。文句を言おうとしていた口から、段々と甘い声が漏れ始める。くたりと力の抜けた体を抱え上げ、ベッドルームの扉を開く。

     今日は抱き潰す。

     可愛いことをいう潔が悪いんだと心の中で言い訳をしながら、凛はベッドルームの扉を閉じた。
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