【rnis】宅飲みするrnisのお話「んへへ〜りん〜」
「飲み過ぎだ、ザコ」
「よってない〜」
「酔っ払いは総じてそう言うんだよ」
凛は抱きついてくる酔っ払いを払い除け、彼の握っている缶チューハイを取り上げた。ほぼ空になった缶を追いかけて、仄かに色づいた白い腕が凛に被さる。凛は舌打ちをして、目の前の体を押し返した。
凛と潔は、凛の一人で暮らす家で宅飲みをしていた。フローリングに直接腰掛け、コンビニで買ってきた酒とつまみをちまちま口に運びながら、並んでサッカーなどを流し見て、ダラダラと過ごしていたはずだった。
「タクシーを呼ぶところまではやってやる。帰れ」
「えぇ〜、凛のけち〜」
妙にハイペースだと奇妙に思いながらも飲み続けた結果、潔がべろんべろんに酔っ払った。凛の名前を連呼し、ベタベタと触れるという、潔に密かに思いを寄せる凛の息子にダイレクトアタックをかます絡み方に、凛は、限界を迎え始めていた。
このままではまずいと、凛は間違いが起こる前に潔を帰すことにした。
面倒臭い酔っ払いをいなしながら、スマートフォンを手に取る。よく利用するタクシー会社の番号を探していると、後ろで、かしゅ、と気の抜けた空気の抜ける音がした。凛ははっとして振り返った。
「おい、クソ潔。なにしてんだ」
「んは、ばれちゃった?」
潔が、片膝を立てて、缶ビールを片手に真っ赤な顔でにやりと笑っている。凛はこめかみに青筋を立てて、ずかずかと潔に歩み寄った。
「やめろっつってんだろ」
「やだ〜まだのむ〜」
「帰れなくなるだろ。やめとけ」
潔が立てた膝に肘を乗せ、手に持った缶を揺らす。たぷん、と液体の振れる音がやけに大きく聞こえた。
「りんはかえしちゃっていいの?」
アルコールの力で血色のよくなった、薄い唇から紡がれる甘い言葉に、凛はぐっと唇を噛み締めた。
「ねーえ、りんさーん」
潔が俯いて固まった凛の顔を覗き込む。だるっとしたオーバーサイズのTシャツの襟ぐりから、薄桃色の乳首が見え隠れする。己よりひと回り小さい体が上気して、妙な色香を立たせている。
「ほんとうにかえしていいの?」
耳元に口を寄せ、回りきっていない呂律でささやく。凛の中の理性がぷつりとキレる音がした。
ゆらゆら揺れる上体を押す。鍛えているはずの体はいとも容易くフローリングへと転がった。すかさず覆い被さると、潔が小悪魔のように微笑みかけた。
「おいで?」
腕を伸ばして首に回してくる姿は、純真無垢な幼子にも人を堕落させる悪魔にも見える。凛は舌を打ち、生意気に誘ってくる唇へと噛み付いた。