善は急げ、と言うけれど/こめミサでもこめミサこめでもお好みで それはとある、ほとんど定例となった、県境にいちばん近いファミリーレストランでの逢瀬の日。たいていは非番の合った日の前夜だけれど、ひどく遠いわけでもないので、そうでもないこともある。今回は前者だった。車社会なもので、どんな洞察力をもってしてもいかんせん到着時刻ばかりは完全には読み切れず、予定より少し早く着いた高明は、駐車場で車内から星空を見上げていた。季節としては、早くももう、冷え込みつつある。夜ともなればなおさらだ。愛しい彼を待っている今、きっとこの身が冷え込むことはないだろうと過言したくなるほどなのだけれど、それでも、風邪とかひいたらたいへんですからと、彼が言うので、早くついたほうはいつも車内か店内のどちらかで待っていた。ヘッドライトが新たに視界に来るたび、視線をやるけれど幾度か空振り。ああ、今度こそ! 見馴染んだ車が、やってくる。頬のふわりとゆるむ瞬間だ。高明は、車を降りた。
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