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    bhrnp

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    bhrnp

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    🪽 小狼の魔力理論の話を書こうかなとか思っているらしい

    「風華招来」
     全身に風を纏わせて澄んだ空を舞い、遠方を見渡す。平野と森林、丘、遠くには山、川の流れ。穏やかな自然と澱みのない空気が何処までも広がっている。
     豊かで鮮やかな世界。
     しかし、やはり集落らしき物は見付からず、小狼達は広い自然の中を当て処なく進み続ける他なかった。

    「どう? やっぱり人の営みは無さそうな感じ?」
     降下途中に、同じ要領で逆側を偵察していたファイが小狼に声を掛ける。頷きを返した小狼は「だが、」と言葉を続ける。
    「山間から続く清流が見えた。森に流れてる。今日も野営になりそうだから、身体を休めるには良い場所かも知れない」
    「そうだね〜。そろそろ植物以外の食べ物にあり付きたい所だしね」
     この世界は動物もあまり多くはないようだった。空から視察をしていても鳥の類とぶつかる事はないし、草木を揺らす小さな生き物は見付けた限りでは鼠のような形状のものが最大で、当然ながら攻撃性のある魔物の姿もない。魚の存在は確かめていないので、水場の情報を黒鋼に共有して向かいがてら確かめる事にする。
     果実と木の種はそれなりに豊富だ。それらが空気に乗って高々と飛べる性質を有していると小狼達が気付いたのは、この世界に降り立ってすぐ、森から遠い平野で熟した果物が幾つも落ちていた為だ。鳥や小動物を介さずとも自ら子孫を根差すに値する地へ運ぶ力が身に付いている。だからこそこの世界は、生物の多様的側面が育まれなかったのか。或いは逆に、有し物が滅びた末に手にした力なのか。
     どの世界よりも穢れなく、美しいと称せる程の空気は『気の流れ』を根源に持つ小狼の魔法の威力を押し上げていた。魔力量で遥かに優れたファイと滞空時間が然程変わらないので、最初の頃は無理をしているのではないかと訝しまれたものだ。

    「たっだいまー」
    「おかえりぃ! どうだった?」
    「残念だけど、人の気配は感じなかったね」
    「そう……」
     モコナは自分の耳を小さな手で引き寄せて、耳飾りを見る。
     この旅路は『記憶』を司る魔道具に影響を受け、次元を渡る。ならば『記憶』を刻んで他者と疎通を行える生物──ヒトと呼べる者が存在しない時空に降り立つ事は有り得ない筈だ。
     それでも、未だ、彼等はこの世界で知恵を持つ存在と出会えてはいなかった。魔道具に込められた魔法の効力に不安を感じるのも無理はない。
     気落ちしているモコナを上から鷲掴んで、ぎゅむりと押し潰す大きな掌。
    「まだ次の世界に行ける気配もねえんだろ。気にしてても仕方ねえ」
     撫でているのか捏ねているのか判らない大柄な手の動きと、励ますつもりはなさそうなぶっきらぼうな物言いは黒鋼のもの。
    「きゃあー! 黒鋼のっ野蛮人ッ!」
    「黒ぷーったら、激励のやり方が雑ー」
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