「ユーとアライアンスを? はは、冗談でしょ」
「……冗談、では、ない……です」
迫ってくる顔は、酒に溺れて真っ赤になっているのに妙に格好良くて、本気の焔が瞳にチラつく。空恐ろしい男だと感じた。弁護士という立場でありながら、こういう表情で、仕草で、不貞を正当化しようとするなんて。
「リカオって意外と不真面目?」
やはりバンドマン、それもボーカルでベーシストなんてものは皆漏れ無く平等に、どうしようもない生き物なんだろうか。
「俺は、真面目に……」
「ハイハイおねむだね。ASAPでNRしようか」
「ちゃんと俺の反証を聞け……です」
「泥酔弁護士のユーに任せられる案件は無いよ。せめてボーカリストの方がベターかな」
「……歌えば良いのか?」
それは反則だから駄目だ。告げる前から喉を開きそうな勢いだったので、人差し指と中指を彼の唇に宛てがって封じた。
「ほら、終電来ちゃうよ。どうせ明日もハードワークなんでしょ。家まで歩いて帰りたいの?」
「嫌だ……伝わるまで言い続けてやる……」
「ちょっと」
酒臭いのに伸し掛かってくる。重いし、こちらまで酔いそうになる。