運命とも呼べない関係ならば【二人のβ(太宰)】
森さんに拾われる前には自分がβだろうなと確信していた。
貧民街や擂鉢街を歩いていると、発情期を迎えたΩがαに襲われているのを見たが、それに対して何も思わなかったし、匂いとかも分からなかった。態々検査して「君はβだね」と言われてもそうだろうな、ぐらいにしか思わなかった。
Ωの発情した表情にも、その姿に欲情したαの表情も全く興味が無かった。それどころか、性に翻弄される姿に面倒だなと憐れんで見ていたと思う。
そんな僕と同じ表情をしていたのが、中也だった。彼も僕と同じでβでΩの発情期の匂いに強かった。中也がボソッと「辛そうだな」と言った言葉があまり感情が籠っていなくて、あぁ、彼も僕と同じなんだな、と思った。
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