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    105@海自艦擬人化

    @sanpomichi105

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    105@海自艦擬人化

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    5203+5202 晩秋の海と触れ合う

    #擬人化
    Humanization
    ##本編
    ##3_affection

    晩秋の海水浴場は自分と少し後ろを歩く次兄であるはりまの他には数組の親子連れが砂遊びに興じている様子が見える。小さな子供のはしゃぐ声と側を走る車道から聞こえるエンジン音にどこからか軽快な音楽がかすかに耳に届く。そして同じ海でも馴染んだ港とは違う、絶えず波が押し寄せる音にそわそわとして落ち着かない。
     遊歩道から砂浜へと降りる際に脱いだ靴を片手に歩く。一歩進むたびにしゃりしゃりと音を立てている。湿り気を帯びた砂は細かな貝の欠片などが混ざりあい、足を踏み入れる度に素足に纏ってくすぐったい。あいにく空は薄曇りだが、この時期まだ昼過ぎであれば薄手の羽織一枚でも事足りる程度で素足でも冷える心配はしなくて良さそうだ。
     ゆるやかな傾斜を下るともう波打ち際だ。そっと一歩踏み入れて踝まで浸かり、寄せては引いて時々ぱしゃんと足元で波が跳ねる感触を味わう。気温より少し温かな海水はとても肌に良く馴染み、気持ちがいい。もう少し深く、遠く。じわじわと物足りなさが思考を埋めていく。ちらりと少し後ろで様子をみているはりまを振り返ると、まだ何も言っていないにも関わらず苦笑とともに少しだけな。と返ってきた。次いで濡らすなよとの声にさすがにもうそんな子供じゃないのになぁと思いながらも、大人しく裾を膝上まで上げておいた。
     ざざんざざんと繰り返す波音に混じって自身の動きに合わせて水音が小さく立つ。ふくらはぎまで浸かったところで立ち止まり、そのまま視界を行き交う大小の船舶をじっと眺めていた。もう少しだけ。一歩踏み出そうとしたとき背後で名を呼ぶ声がした。
    「あき。そろそろ戻ってこい」
     もう一度呼ばれ名残惜しさを感じながら渋々引き返す。手の届く距離まで戻ったところでおかえり、と腕を引かれる。海に呼ばれるというのはこのことなのだろうか。水辺から引き揚げられた途端にかすんでいた思考が晴れていくのを感じた。
     波打ち際を横目に二人歩きながら、はりまは最初に言っておけばよかったんだがと前置きを入れ未熟な内はこういうことがあるのだと教えてくれた。人の身体に意識を宿していても水の中が落ち着くのだと。話す兄自身は今の自分より幼いころ海中に突如しゃがみ込み、見ていた長兄を随分と慌てさせたそうだ。
    「公試出た後の方が人格がより安定するんだが、チビの進水後だと置いていくわけにもいかないからな」
     そう言いながら無茶をする方じゃなくて助かったと笑っている。
     そろそろ冷えてきたし帰るか。そう言って先を行く背中を追いながら海を振り返る。艦の上からあの路を行くまであと少し。
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    105@海自艦擬人化

    DOODLEかもめ(新幹線)とやはぎ(艦)。セルフクロスオーバーみたいなものです。
    新米の冒険 駅から続く電車通りから外れて海沿いの遊歩道を軽く駆け抜け、公園の端まで来るとそこから人々が憩う様子をふわふわと潮風を浴びながら眺める。この景色は元々は海から見る予定であったけれども、あいにく天候の折り合いが悪くて叶わなかった。それ自体はいまも残念に思っているものの、こうして別の機会にでも自ら赴けるあたり、人の身に意識を宿したことのありがたさを感じる。まだ慣れていないのもあってしばしばバランスを崩してしまうけれど。本体の性質のせいかこの身体でも走るのは好きだ。でもたまにはゆっくり歩くのも良いな、と遊ぶ幼い子供の笑い声や木々のざわめきを耳にしつつ元来た道を戻るべく振り返る。
    「こんにちは!」
     いつからいたのか、視界の手を伸ばせば触れられる距離に子供が立っていて、思わずびくっと身体が跳ねた。やや緊張した面持ちで声を掛けてきた子供は背格好からしてまだ小児料金が適用される年頃に見える。驚いて真っ白になった頭でもそれだけは真っ先に過ってちょっと可笑しくなった。落ち着いて思考を巡らせる。確か出掛ける前に先輩からは「人からは見えないのだから、もし迷ったら呼びなさいね」と言って携帯を持たせてくれたのだけれど。中には見える人もいる、ということなのでしょうか。こんなことなら対策を聞いておくんだったと内心はあたふたとしながら何を言うべきかを考える。
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    105@海自艦擬人化

    DONE祝・118進水日!10周年おめでとう~!
    雨上がりの記憶 不意に目を覚ます。直前まで夢でもみていたのか一瞬、ここはどこだっけと頭をよぎった。薄暗い中で視線を巡らせて、艦の馴染んだベッドであることを確認する。枕元に置いているデジタルの腕時計を手探りで掴み、顔の前でかざすと時刻は〇五二九を示していた。付近のベッドではまだぐっすりと眠っている者が大半のらしく、機械の作動音が低く響いているのを除けばしんと静まっている。
     もう一〇年前、か。
     寝起きの少しぼんやりした頭で今日だなぁと思い出す。時刻と並んで表示されていた日付は八月二二日。かつて海へと滑り降りた日だ。当日朝は普段と違う様子に緊張していたのか、単に暑くて寝苦しかったか、もしくは夢見でも悪かったのか。起きてしばらくの間ぐずぐずと泣いて、立ち会いのしらゆきさんを困らせたような記憶が朧気に残っている。ただ、さすがのベテランと言うべきか、彼の気性ゆえか、あれこれと世話を焼かれている内にすっかり機嫌が治っていだから不思議なものだ。僕では同じように出来ないだろうと思う。艤装中に〝ふゆづき〟の舞鶴配備を知ってからは生まれ故郷とのことでしばらくご無沙汰だけど、と注を入れながらも馴染みの店をいくつか教えてくれたりもした。就役後に訪れると既に閉めているところも多くあったけれど、続いているところの中には自分も気に入って、通っているところもある。出港中ですぐには叶わないけれど帰ったら久しぶりに買いに行くのを楽しみにしていようと思う。
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