ハッピーハロウィン?「あ、きりしまさん!こっちでお会いするの久しぶりですね!トリック・オア・トリート!向こうはイベントなのにひとりドックで暇だったんで話し相手になってください!」
顔を見るなり矢継ぎ早に言いたいことを捲し立てた本人は期待の眼差しを向けているが、シンプルに「断る」とだけ返した。途中季節の行事めいた一節を耳にした気もするがそこは無視した。間が悪くやたら賑やかな時に来てしまった上、一番騒がしいやつに捕まったと隠しもせずため息を付く。
「かわいい後輩を労ってくれてもいいじゃないですかぁ。それとお菓子かいたずら早く選んでくださいよ」
「みょうこうが戻ってきたら頼め」
自称・かわいい後輩は横須賀のやつらだけで十分というものだ。別に邪険にするつもりは無いが、律儀に相手をしてやるほど世話好きでも優しくもない。まぁ一方的に話すのを聞くくらいはしてもいいかと妥協をした。完全に放置するとそれはそれで面倒そうだ。ただ明日の出港まで適当にあしらい続けよう、と内心決めて。