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    shidu_k13

    @shidu_k13

    雑食なのでいろいろ
    黒🏀練習中

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    shidu_k13

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    オメガバ赫黒?Ωの黒子テツヤには、番のαが二人いる。
    そんな噂が囁かれるほど黒子は存在感のある人間ではなかったので、周りからとやかく言われることもなく、至極平和に毎日を過ごしている。

    「うわぁ…」
    何かに恐れおののくような声が頭上から聞こえて、一体なにごとかと黒子は首を上げる。二股の眉毛をぎゅっと寄せて、何とも言えない表情をしながら目を細めた火神は、それ、と黒子の首筋を指差した。
    「見てるこっちが痛いんだけど…」
    「ああ…。なかなか薄くならないですね」
    最近は急に夏日が続くようになってきて、首元を覆う服を着るのはさすがに暑すぎる。見せびらかしているわけではなく、ただ単に暑いから晒すしかないだけなのだ。少しは襟足で隠れるかと思いきや、めざとく見つけた火神は痛そうだと肩を竦めている。
    黒子の首筋には、二つの歯形がくっきりと浮かんでいた。一つはもうだいぶ薄くなって歯形の痕だけが残っているけれど、もう一つは血の滲んだかさぶたのままで、一部の皮膚が抉れて青痣になっている。自分では見えない場所なので黒子自身がその傷をまじまじと見たことはない。だけど悲惨な状態であることは、いつまで経ってもシャワーでそこがしみること、それからこの火神の反応で十分過ぎるくらい分かった。
    「でも良かったじゃねえか。無事にツガイになれて」
    「それは、まあ、そうなんですけど」
    初夏の日差しがぴりぴりと黒子の肌を焼く。今日も暑い。じんわりと汗が滲む素肌をタオルで拭えば、いまだにそこがヒリっとした。いやでも、さすがにこれは、やり過ぎでは?

    .

    赤司とは、番になるタイミングで一緒に暮らし始めた。番以前に恋人関係であった二人だけれど、一緒に暮らすとなるとそれはもう価値観の擦り合わせが大変だった。赤司は言わずもがなの上流階級だし、黒子はもちろんただの一般庶民である。放っておくと高級住宅街にある高級マンションの謎に部屋数の多い高層階に勝手に決められそうだったので、話し合いに話し合いを重ね、お互いに何とか妥協し合って決めたのが今の住居である。黒子にはここでもだいぶ分不相応な場所ではあるが、赤司の立場もあるので仕方がない。二人で決めた文字通りの愛の巣は、今夜もまた、ふわりと甘い香りがいつまでも立ち込めている。

    夜ご飯を済ませて、ソファでテレビを見ながらのんびりしていたら、あたたかいお茶を淹れてくれた赤司が二つのマグカップを持って隣に座った。ありがとうございます、と言って受け取る。白地に赤いラインが入ったマグカップが黒子のもので、水色のラインが入ったほうが赤司のものである。ほわりと湯気が立つお茶を黒子はこくりと飲むけれど、赤司のカップはソファの前のテーブルに置かれたまま手をつけられていない。まだ熱すぎるのかもしれない。
    そのうち、隣の赤司がこてんと黒子の肩に頭を預けてきた。黒子のマグカップを持っていないほうの手を握って、すりすりと手の甲を指で摩ってきたりする。彼がこんなふうに甘えた素振りを見せるなんて珍しい。繋いでいた手が離れたかと思えばふにふにと耳を触ってきたり、ほっぺに指をつんつんしてきたり。番になってから、彼はどうも今までの距離を埋めるかのように引っ付くようになってきた。カップを一度置けば、待ってましたとばかりに彼は黒子の首筋へと唇を寄せる。
    「ふふ。くすぐったいです…」
    「かわいい、黒子」
    くすくすと笑う息が触れてくすぐったい。やわらかい唇は、黒子の耳を軽く食んだり、ほっぺにキスしたりを繰り返す。それから赤司の指が黒子のうなじを撫でた。愛おしそうにそこに触れたかと思えば、もう一つ、かさぶたの残る場所を何とも複雑な顔をしてなぞる。
    そうだ、彼に、言いたいことがあったのだ。
    「赤司くん」
    赤司のふっくらとした唇へと距離をつめる。キスまで数センチ、触れる寸前で、さりげなく赤司に避けられて二人の唇が触れ合うことはなかった。むっとしてもう一度近付こうとしても、赤司はそれをさらりと躱す。
    「逃げないでください」
    「んー。今はだめ」
    「でもボクはしたいです」
    「魅力的なお願いだけど、でもダメ」
    子供みたいにダメダメを繰り返す駄々っ子みたいな恋人に、黒子のほうも意地になってしまう。とはいえ赤司の隙をつくのはなかなか難しいから、ここはもう恥を捨てて思いきりいくしかない。腰を上げて、赤司に向かい合うように彼の膝の上に乗っかる。さすがに意表を突かれたのか、赤司がはっと顔を上げた瞬間を狙って、ぐいっと両手で彼の頬を掴んで捉えた。
    「黒子!」
    珍しく声を荒げる彼の唇を勢いよく塞いでやる。ゴツン!と歯が当たってだいぶ痛い気がしたが気にしない。一度唇がくっついてしまえばこっちのものだ。

    ゆっくりと目を開けると、そこには、勢いよくぶつかり過ぎて痛かったのか、赤司は口を押さえて黒子を睨みつけていた。その左目は、淡く琥珀色に変わっている。
    「…ずいぶんと熱烈に歓迎してくれるね、テツヤ」
    「仕方ないです。彼、全然ボクとキスしてくれないんですもん」
    「あいつはヘタレだからな。僕なら何回でもするよ」
    「いや、別に何回もしなくて良いですけど」
    飄々とした物言いに黒子はふうっと息を吐く。まったく、同じ顔してこの態度の違いはなんだ。赤司はといえば、久しぶりに黒子に会えたのが嬉しいのか、黒子の腰に腕を回して猫みたいにすりすりと擦り寄ってくる。
    「ちょっと。暑いです」
    「つれないな…。あいつとはいちゃいちゃしてるくせに」
    「キミとそんなに変わらないですよ。それよりこれ!」
    「ん?」
    くるっと後ろを向いて、襟足を持ち上げる。晒したうなじを赤司はふむと見つめて、それから指ですーっとなぞった。
    「ひゃっ!」
    「自ら急所を晒すのは感心しないな」
    「違います!キミが噛んだ所の傷が治らないんです。強く噛みすぎです!」

    黒子のうなじには二つ歯形が並んでいる。一つは先程の赤司の、もう一つは今ここにいる赤司に噛まれたもの。彼らはなぜか、黒子のキスで入れ替わる。傷口が悲惨なほうの、皮膚が抉れているほうの噛み跡は、どちらの赤司が付けたものか言わなくても分かるだろう。彼とも番になってもう一週間以上経つのに、傷跡は一向に良くならないままだ。
    「良いじゃないか。誰かさんのみたいに存在感のない噛み跡よりはずっと」
    「だからと言ってキミは激しすぎです。いまだにお風呂でもしみるんですよ!」
    「それは悪かったね」
    なーんて、ちっとも悪びれていないような顔で言う。まあこの傷を主張したところで、今すぐにでも治るわけでもないし、どうしようもないのだけれど。けれど一言文句を言ってやらないと気が済まなかった。
    「だから、ボクも噛ませてください」
    黒子の言葉に、色の違う左右の目がぱちりと瞬きをする。それからくすっと笑ったかと思えば、黒子に背を向けて無防備な白いうなじを晒した。
    「お好きにどうぞ」
    何の躊躇いもなくそう言う赤司に少しむっとしながらも、彼の肩に両手を置き、首筋に唇を落とす。くすぐったいのか一瞬ふるりと赤司の身体が震えて、その隙にかぷりとうなじに歯を立てた。
    強く噛みついて、思いきり引きちぎってやろう。そう頭では思っていたはずだけれど、さすがに罪のないもう一人の赤司とも共有している身体だと思うと遠慮してしまって、気持ち強めに齧り付くことしか出来ない。背を向けているから表情はわからないけれど、相変わらず赤司はくすくすと笑っているようだった。
    「もっと強く噛んで良いのに」
    「…キミだけの身体じゃないですし」
    「テツヤからの愛の証ならあいつも泣いて喜ぶんじゃないか?」
    泣いて喜ぶ赤司くん。それはそれで見てみたいけれど、やっぱりうまく出来ずにがじがじとねずみのように彼の首筋を噛み続けた。なぜかふわりと香る甘いいい匂いは、彼の体臭なのか、それともαとしてのフェロモンなのか。その匂いに誘われて、黒子自身の唾液で濡れたそこをぺろりと舐める。それからそこをちゅうっと吸った。不恰好なキスマークが、彼の白い素肌にわずかに色づく。
    「…そろそろ良い?」
    「え?…わっ!」
    くるりと振り返った赤司は、そのまま黒子の両腕を掴み、あっという間にソファに押し倒された。ふふ、と不敵な笑みと、まだ見慣れない高い天井が見えて、黒子の背に冷や汗が流れる。
    「あ、あかしくんっ」
    「久しぶりだし、僕も良いよね?」
    「ひゃぅっ!ま、まって…あっ、キスしましょう!何回でもしてくれるんですよね!?」
    「何回でもするけど、今はしないよ。あとでね」
    「ぅう…」
    こっちの赤司の隙をついてキスをするのは、あっちの赤司よりもずっと難しい。もう一人の番に助けを求めるのは今は諦めて、服を脱がせる赤司の手を受け入れた。

    赤司の右側の首筋に、黒子が付けた歯形とキスマークがうっすらと残っている。あとで彼とキスしたら、もう一人の赤司にも噛みついてあげよう。そうしたら、うなじに二つ噛み跡が並ぶ黒子とお揃いになる。黒子の番たちは二人とも、独占欲が強くて、なんだかんだでかわいいのだ。
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