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    nekotakkru

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    nekotakkru

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    カプ乱立。ギャグ。現パロ。

    #実玄
    mysteriousProfundity
    #さねげん
    Mysteriousprofundity
    #腐滅の刃
    sink-or-swimSituation

    弟の心、兄知らず不死川実弥と不死川玄弥は実の兄弟である。しかし、それ以上の関係でもある。世間で言うところの恋人が一番近い言葉かもしれない。決して許されるものでは無いが、法律や他人の目よりも自分達の生き方と気持ちを選び、共に公にすることはなくとも今の関係に満足していた。
    そう、決して公にはしていないのだが。




    ソファに座りながら、実弥と玄弥は目下の人物達を見下ろしていた。いつになく真剣な顔をしているのは三番目と四番目の弟達、就也と弘だった。床にわざわざ正座をして、下を見たり左右を見たりお互いを見たりと視線が忙しなく動く。そんな二人につられて玄弥も少しそわそわしているが、実弥の方はどっしりと落ち着いた態度でコーヒーを啜っていた。二人から『話があるので聞いて欲しい』と言われた以上、あくまでも実弥から話を振ることは無い。大方、何か悪さをしたか取り返しのつかないものを壊したのだろう。素直に謝るのなら許してやる気持ちを持って、二人の言葉を待つ。

    「あ、あのさ、兄ちゃん達」

    意を決したように就也が口を開く。合わせて弘もきっと眉を釣り上げた。弟達の真剣な表情に、玄弥がごくりと唾を飲む。実弥は変わらずコーヒーに口をつけたままだった。

    「俺……。ううん、俺達ね、実は、お互いのことが大好きで、付き合ってるんだ!!」

    ブバッ
    と、あまりにも衝撃的な内容に実弥がコーヒーを吹き出す。茶色の飛沫を悲鳴とともに避ける弟達に気付かないのか、実弥はコーヒーを滴らせながら固まってしまった。

    今、なんて言ったァ?

    そう問い返したいのだが言葉が出てこない。予想外のうち明けに、とにかく落ち着こうと神経を集中させるが、逆に血管がこめかみに浮いてしまう。それを怒っていると捉えたのか、玄弥はまず状況を整理しようと務めて穏やかに就也と弘に向き直った。

    「あー、その、い……いつから?」
    「えっと、三ヶ月ぐらい前」
    「三か月…」
    「に、ちゅーは済ませて」
    「うん、ちゅーね。……ん!?ちゅー!?は!?ちゅーぅう!?」

    保っていた穏やかさは秒で姿を消した。かっと目を見開き滝のような汗が玄弥の額を落ちていく。取り乱しそうな玄弥を今度は実弥が宥めた。

    いやいや落ち着け。兄弟なんだからキスの一つや二つ別におかしくねぇ。
    そ、そうだよな。男同志だけど外国に行けば兄弟だってキスするだろうし。
    ああ、そうだな。挨拶の時とかなァ。
    え、じゃあ挨拶の度にこいつらキスしてんの?いつ?どこで?
    ま、まてまて。その詮索は置いといて、まずはキスについてだ。ただ、それなら俺とお前もするだろ?
    う、うん。朝起きた時とか寝る前とかね。ちょっとあれだからみんなに隠れてね。でもそうだよな、普通だよな。
    ああ普通だよな。うん、普通だな、うんうん。
    あれ?でも待って。ちゅー『は』て言った?てことはそれより前から付き合ってんの?え?うそ?

    目線だけの会話を交わし、浮き出た疑問の答えを促すように弟達を見る。時間にして数秒もかからなかったその間に、目下の弟達は記憶を遡っていつから『お付き合い』を始めたのかを思い出していた。

    「あれ、春にお花見行った時だよね?」
    「ばか、それは手を繋いだ記念だろ」
    「そっか。じゃあ夏の海に行った時?」
    「それはほっぺにちゅーした記念」
    「じゃあ秋の紅葉狩りだ」
    「あれは初めて喧嘩した日。あんまり思い出したくないけど」
    「んー、じゃあ冬だっけ。みんなで温泉旅行に行った日」
    「それは、その日は……」

    かあぁ、と就也の顔が赤くなる。つられて思い出したのか弘の頬も蒸気した。お互いに照れながら押し黙る姿に実弥と玄弥の口元がひくひくと引き攣る。

    何したの?え、ナニシタノ!?
    だってキスが三ヶ月前なんだぞ?ちゃんと順序踏んでないのか?いや順序ってなんだよ!
    しかもみんなで旅行って、それ俺達を含めた家族みんなでの旅行ってことだよな?え、みんな居るのにナニシタノ!?大胆すぎねぇ!?
    くっそがぁ!なんで気付かなかったんだ!俺の馬鹿野郎ォ!!
    しかもよくよく聞けば四季一周してんじゃねぇか!そんな前から付き合ってんの?ホントなんで気付かねぇんだ俺のバカたれぇ!!

    兄二人の目の焦点がぶれ始めた時、弟二人が揃ってハッとした顔を向ける。にっこりと笑った顔は無邪気で、ああ、弟達可愛いなぁなんて他人事のような感想が頭を掠めた。

    「「三年前の春からだ!」」

    まだ声変わりが済んでいないボーイソプラノが綺麗に重なる。思い出した嬉しさにきゃっきゃっと喜ぶ二人に対して、上二人の兄は頭を銃で撃たれたような衝撃だった。

    三年前……俺達より長いじゃねぇか……

    どこか虚空を見つめながら二人の表情が消えていく。しばらく呆然としていたが、実弥はゆっくりと弟達に顔を向けた。きりっと復活した表情は長男の頼もしさが滲んでいるが口元には未だコーヒーが垂れている。隠しきれていない動揺を玄弥が慌てて拭き取った。

    「それで、俺たちに聞いて欲しいってのはその事かァ?」
    「あ、うん。……本当は兄弟でこんなの良くないって、ダメだってわかってるんだけど。でも、どうしても我慢出来なくて」
    「僕達、自分の気持ちに嘘はつきたくないし。それに、嘘をつくのはダメだって教えてくれたのは兄ちゃん達だろ。兄ちゃん達には本当のこと、知って欲しかったんだ」

    ごめんなさい、嫌わないで、と俯く二人の目には涙が滲んでいる。半端な覚悟ではないことが見て取れる。実弥と玄弥は家族に余計な心配をかけさせまいと口を噤むことを選んだが、二人は誠心誠意、向き合うことを選んだのだろう。それを否定することなんて出来るはずがない。
    ちらりと玄弥が実弥の表情を伺う。難しい顔をした後、息を吐き、観念したように頭を掻いた。困ったように眉を下げ、仕方ないとばかりに口角を上げれば玄弥も同じ顔で笑う。
    それぞれが目前の弟の頭に手を置いた。そのまま優しく撫ぜてやれば、安心したのかぽたぽたと涙が溢れる。それを優しく拭ってやれば、決壊したように涙が止まらなかった。余程怖かったのだろう。相当な勇気を要しただろう。成長した弟の姿に実弥も鼻の奥がつんと痛む。それを誤魔化すようにわしわしと頭を撫でてやった。

    「よく話してくれたなァ」
    「ありがとな、二人共。心配しなくても、俺と兄ちゃんが就也と弘のこと嫌いになったりするわけないだろ」
    「ああ。何か言ってくる奴がいたら、兄ちゃん達がぶっ飛ばしてやる」

    兄達の頼もしい言葉に、涙で濡れた弟達の顔がほころぶ。暫くして落ち着くと、二人にはいつもの活発で明るい弟の顔が戻っていた。
    聞いてくれてありがとう、と頭を下げながら二人仲良く手を繋いで扉に向かう。その仲睦まじい後ろ姿を実弥と玄弥も朗らかに見送った。

    「本当にありがとう、兄ちゃん達」
    「俺達、これからも仲良くするからね!それと、」
    「「今度は兄ちゃん達のことや準備のこと、聞かせてね!!」」

    またしても声を綺麗に揃えながら弟たちが部屋をあとにする。残された兄二人は作り物の笑顔を張りつけたままびしりと固まっていた。

    ーーー今度。聞かせて。兄ちゃん達のこと。準備のこと。

    言われた台詞を反芻して腹に落とし、きゅうぅ、と胃の辺りが痛くなる。玄弥が錆びたロボットのように顔を動かせば、実弥は白目をむいて魂が抜けかけていた。

    「にちゃ……あいつら、俺達のこと…」
    「聞くなァ……」
    「しかも、準備……て。もしかして…」
    「言うなァ……!」

    地の底から唸るような兄の声に静止され沈黙する。鉛よりも重たい空気が部屋を覆った。純粋な心というのは時として凶器なのだと、実弥は薄ら滲む視界で悟った。
    永遠ともいえる時間を過ごし、なんとはなしに立ち上がる。酷く疲れた声で寝るかァ、と声をかけると玄弥も無言で頷いた気配がした。同じように立ち上がり、ゾンビのような足取りで扉へと向かう。取っ手に手をかけようとしたらカチャリと扉が開いて妹達がおずおずと中を覗いてきた。

    「お兄ちゃん達、大丈夫?」
    「まだお話中だった?」
    「…いや、今から寝るとこだった。どしたァ?」

    やつれた姿はなりを潜め、普段の頼れる兄の顔で実弥が対応する。妹達に余計な心配をさせまいとする兄のその姿勢に、玄弥は心の底から尊敬と思慕の視線を送った。

    「じ、実はね…」

    恥ずかしそうに妹達の目が伏せられる。母によく似て愛らしい顔をしている二人は、そんな仕草がより可愛さを引き立てる。お互いを離すまいと強く手を繋いでいる姿だって、なんと微笑ましいのだろう。

    ……それにしては随分と熱が籠っているような。いや、まさか。そんな。

    「「私達、お兄ちゃん達に聞いて欲しい話があるの」」

    鈴のような声が重なって聞こえるのを耳にしながら、実弥と玄弥はさっと血の気が引くのを感じていた。











    ーーーーー

    「ーーーっていう夢みてよォ 」

    虚ろな目でパソコン画面を眺めながら実弥が呟く。それでも手は休むことなく作業を続けていくので流石だと言えるだろう。しかし、話を聞いている同期の宇髄天元はそんな事気にすることも無く、肩を震わせながら必死に笑いを堪えていた。

    「最後に末っ子が竈門のガキを連れてきたところで暴れて目が覚めた」
    「だっは!!!も、やめろよ馬鹿野郎!!!笑いが止まんねぇだろ!!!」

    バンバンと机を叩きながら爆笑する宇髄に若干イラッとくるものの、夢でよかったと安堵したのも確かだった。応援する気持ちに嘘は無いのだが、やはり業が深いのは自分と玄弥だけでいいと考えてしまう。いっそ笑い話にでもした方が、幾分か気持ちが晴れた。
    この話はこれで終いだな、と一人完結して作業に集中し始めた時、携帯が震えて受信を知らせた。画面には玄弥からのメッセージである事が表示されている。愛しい弟からの連絡とあって僅かに頬を緩ませつつそのメッセージを開くと、下がっていた目尻がこれでもかと言うほど釣り上げられた。

    「なぁ、宇髄」
    「あん?」
    「今玄弥から連絡が来てよォ」
    「おう」
    「『就也と弘が話があるから早く帰ってきて欲しい』だとよ」
    「!」
    「……なぁ、今日てめぇ家に来」

    言い終わるよりも先に宇髄はその場を後にした。その逃げ足は前世が忍だったのではないかと思うほど速かったという。

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