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    nekotakkru

    @nekotakkru
    もしものための保管場所。好きなものを書いていきたい

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    nekotakkru

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    pixivより移動中。
    ヘタと鬼滅のクロスオーバー。
    キメ学設定。
    私はFPS系したことないので雰囲気だけです。

    #クロスオーバー
    crossover
    #ヘタリア
    hetalia
    #鬼滅の刃
    DemonSlayer

    駆ける若兵、待つは老鷲崩れそうな壁に背を預けながら息を整える。下手に覗き込めば頭を吹っ飛ばされるので慎重に壁を伝い、周囲を窺った。一瞬跳ねた頭がひとつ。左のコンテナの影に消えた銃身がひとつ。右手前、石垣の下で僅かな物音がひとつ。もう一度頭が跳ねるのであれば確実に撃ち抜くため、スコープを覗く。その間も左の警戒を怠らない。右手前はこちらに気付いた様子はなかった。それでも、充分に注意を払っておく。
    ほんの数秒もしないうちにまた頭が跳ねた。すかさず撃ち抜いて相手の血飛沫が上がったのを見届ける。遅れてこちら側の壁を弾がかすめた。恐らくは左にいた相手だろう。スコープをそのままに左を向くと丁度向かい合う形になった。反射的にトリガーを引く。反応の差でこちらに軍杯が上がり、また派手な血飛沫が宙を舞った。
    いきなりの銃撃戦に己の身を案じたのか右手前の人物が周囲に警戒を払って後退してくる。当然息を殺して待ち、サプレッサーをつけた銃を構える。確実に頭を狙い撃つと相手は膝から崩れ落ちた。
    弾の残数と敵の人数を比べる。無駄遣いさえしなければ賄える数だ。だが、そんな甘い考えでは生き残れない。もう少し銃弾を集めるために場所を移動する。後ろにある建物の中は、荒廃的な外と違い、近未来的な雰囲気を醸し出している。広い外を走り回るよりは時間の消費を減らせるかもと見当をつけ、中へと入った。

    中は複雑に入り組んでおり、とにかく死角が多い。鉢会う敵や上方向にも神経を尖らせて建物内を散策する。道中、いくつかのコンテナの中に銃弾があった為、成果は上々といったところだろう。警戒は解かないまま、出口を探す。
    右の曲がり角に差し掛かる時、コツコツと床を歩く靴音が聞こえ、体を止める。歩く速度から、相手も相当警戒しているのだろう。静かに下がり、体が隠れる位置から角に合わせて照準を定める。沈黙と緊張が流れる。と、その時、銃を構えた相手が飛び出してくるやいきなり発砲してきた。焦っていたのか幸いにも弾に当たりはしなかったが、隠れていた壁が爆発したように砕けて剥がれた。撃ち返すよりも早く相手は姿を隠してしまう。次こそはと、最後に見た相手の頭の位置に照準を定めた。再び相手が現れた瞬間、撃たれるよりも先に確実に頭を撃ち抜く。脳漿が弾け飛ぶのを見て思わずガッツポーズをしそうになるが、構えは崩さない。案の定、それを見越していたのか次々に敵が沸いて出る。恐らくは先程撃った奴の仲間なのだろう。特攻も辞さない面々が次々に襲ってくる中、冷静に一人一人を迎え撃つ。大人数は一掃できるからかえって好都合だと不敵に口角が上がった。
    三…二……一………。最後の一人を撃ち抜くと、それより人が現れることは無かった。構えを崩さないまま倒れた屍の山たちを乗り越え目的の順路を確認する。遠くの方で出口が見えた。横に抜ける通路もなく、一本道になっているそこを素早く走り抜ける。出口の目前でスピードを落とし、そっと中を確認する。開け放っているその先には倉庫のような風景が見えた。死角に隠れ、囮のための煙幕弾を放る。放物線を描いて落ちるそれを見届けていたら下から銃弾が撃たれた。少なくとも敵が一人は居ることを念頭に入れて再び構える。弾数の確認をしてそっと出口を出た。

    大きく開けたそこはやはり倉庫のようで、乱雑にコンテナが積まれていたり、或いは電車のように列を成して配置されている。上から狙い撃つのが定石だろうが、しかしその位置は隠れる場所も少なく、余りにも無防備でもあった。できる限り姿勢を低くして慎重に進んでいく。下に降りる階段を左に確認した時、首元をぞわりと悪寒が走った。反射的に身を引いて右に避ける。今まさに頭があった場所の地面が弾けた。振り返りざまに銃を連射しつつ相手の姿を確認する。撃ち返してくるのを分かっていたように、相手は向かって左に素早く走り逃げた。照準に多少のブレはあるものの逃すまいと追い続けたが高く積み上げられたコンテナによって阻まれる。数秒、威嚇射撃の後、体制を整えると俊敏に階段を降りた。

    ーーーーー危なかった。今の相手はこれまでの敵とは違う感じだった。

    手に嫌な汗をかく。ズボンで乱暴に拭い、深呼吸をして再び集中する。相手は上の位置だった。ここから下に降りるには階段を使うか、飛び降りるしかない。見たところ階段はさっき降りてきたところ以外に見当たらないし、飛び降りるとしたらそれこそ恰好の的だろう。加えて、上段の方が移動できる面積は少ない。冷静に対処すればこちらの方が有利だと自分を鼓舞する。
    相手が逃げ込んだコンテナの全体が見渡せる範囲まで下がりたいが、障害物が多く難しい。それでも照準だけは合わせたまま、良いポジションを探して動く。その時、ふっと黒い影がこちらに飛んだ。思わず撃ちそうになるが先程自分も使った陽動作戦だと判断して撃つのを止め、物影に隠れる。ぽとりと落ちたそれは数回跳ねると、もうもうと白煙を撒き散らした。次いで二発、三発と同じ弾が投げられそこかしこに煙を吐き出す。これではこちらの居場所が分からなくなるのでは?という疑問が頭を過るのと同時に、左から乾いた銃声が聞こえた。音のした方に銃を構えるとゆらりと人影が浮かび、すぐに煙で消えてしまう。相手はいつの間に下に降りたのか、考えるよりも早く体が動いて撃ち返していた。闇雲に撃ってしまったためひとつも手応えを感じない。己の未熟さに舌打ちが出てしまう。
    狙い撃たれるのを覚悟で一旦上に上がるか、返り討ちを予想して相手との距離を詰めるか。その二択をコンマ数秒で選択する。近距離戦は得意ではないが早撃ちには自信がある。ここが勝負どころだと一気に距離を詰めた。
    薄らと見えていた人影が確実なものとなり、お互い視認できる距離まで縮まった。まさか近付いて来ると思っていなかったのか、相手の反応が一瞬遅れる。その隙を逃すまいと確実に頭と胸を狙って撃った。数回の衝撃の後、相手の体が頽れる。本来であればここで喜んでいるところだろう。だが、目の前の相手に、崩れた体のその先に、視線が奪われ動けなくなる。
    確かに階段の下にもう一人いると確認した。その事を忘れていた訳では無いはずなのに、今、血にまみれ倒れた相手は上から奇襲をかけてきた人物とは違う。

    ーーーーーなんでなんでなんで!!

    ほんの一瞬でも勝利に酔いしれた事に憤懣やるかたない。新しい弾をリロードするより早く屍の後ろから銃口が覗く。スローモーションで構えられたそれが火を噴いた。明滅を感じると同時に画面が揺れ体が倒れる。最後に見た光景は赤く染っていく天井だった。












    「くっそぉぉぉぉぉぉ!!!!」

    ヘッドセットもお構い無しに玄弥は髪を掻き混ぜる。ぶつけようの無い悔しさはそのまま謎の呻き声と地団駄で表された。画面には残り一人の文字。つまり、最後に玄弥を撃ってきた相手さえ倒せれば玄弥の勝ちだった。

    「おい、うるせぇぞォ。静かにしろォ」

    ノックもせずに入ってきた実弥が玄弥を窘める。何度か注意はしたのだが、依然兄はノックをする気配がなく、玄弥も特に見られて困るものはないと判断してそのうち注意するのをやめてしまった。
    兄の姿に多少冷静さを取り戻して玄弥が素直に謝る。ゆっくりと深呼吸して、椅子に深く腰かけた。次いで長く画面を見続けていた疲労を解すように眉間を揉む。

    最後の相手は一体いつ下に降りたのか。煙弾を投げた時に共に降りてきていたのか、或いは煙に翻弄されている時か。
    身の隠し方も上手かった。恐らく、盾にされていた相手は後ろにいることすら気付いていなかっただろう。突然煙に溢れた場内に焦った故の発砲だったに違いない。もしや、最後の相手はそんな心理状態すら読んでいたんだろうか。ゾクリと背中が寒くなる。それと同時に高揚感が湧き上がる。

    玄弥が余韻に浸るその隙に実弥は部屋に入ると、玄弥の椅子に手をかけながらパソコンの画面を覗き見る。画面は一面赤で染まり、真ん中には『You Die』の文字がでかでかと表示されていた。
    近頃ハマっているゲームがあると玄弥は言っていた。まるで本物の戦場さながらにステージを駆け抜け、武器を取り、相手を殲滅していくゲームがあると。入っている部活柄、特に銃を取り扱う所に魅力を感じたらしく、お試しで始めたところ見事にのめり込んでしまったと目を輝かせながら嬉しそうに話していたことを実弥は思い出していた。
    兄としては少々物騒なゲームに心配もあるが、現実とゲームを混同させるほど弟も馬鹿ではない。何かと我慢しがちな弟の息抜きになるのなら、それもまたいいだろう。しかし、教師としての立場から見れば話は全く変わってくる。

    「やられちまったのかァ?残念だったなァ」
    「そうなんだよ!あと一人倒せたら俺が一番だったのに…!でもその相手が凄い奴でさぁ!」
    「そうかい、そうかい。そりゃあ随分長くやりこんでたんだろうなァ」
    「なかなか強かったからなぁー。多分三時間以上はして…」

    ここで漸く玄弥は気付く。興奮してつい兄に部屋の侵入を許してしまったこと、倒せなかった相手への悔しさと敬意を誰かに聞いて欲しかったこと、その所為で口が滑ってしまったこと。
    上気していた頬が一瞬にして青に変わった。大量の汗を流しながら恐る恐る兄を振り返る。椅子に置かれていた手はいつの間にか玄弥の肩を抱いていた。実弥の顔はにっこりと、とても良い笑顔を見せている。

    ーーーーー終わった。

    玄弥の脳裏に撃たれた時以上の絶望が襲う。

    「玄弥君よォ、俺が特別に作ってやった問題には手も付けず、ずーーーーーーっとゲームしてたってのかよこの野郎ォ」

    優しい笑顔に似合わない、這うようなど低音が鼓膜を揺らす。回された腕はぎちぎちと玄弥を締め上げた。言い訳なんて出来るはずもなく、頬を引き攣らせながら玄弥の体が震える。

    「巫山戯んなボケがァ!今から徹夜で数学叩き込んでやる!!」
    「ご、ごめん兄ちゃん!ごめんなさいぃ!!!」

    実弥に引き摺られながら出て行った玄弥の部屋はしんと静まり返った。消し忘れていたパソコンのディスプレイだけが寂しげに光っている。そこに、ポンッと軽い音が鳴ってメッセージの受信を知らせた。短い全文は開かなくても全てが読める。英語とは違う文字並びが、そこにはあった。




    『 Lass uns noch spielen !』



















    ーーーーーーーーー

    「兄さん、少し良いか?」

    几帳面にノックを二回鳴らして返事を待つ。いいぞ、と返答を貰い扉を開けた。部屋にいた兄はパソコン前の椅子にふんぞり返り、得意気に弟を出迎える。その様子に、これは話を聞いて欲しい顔なのだと察して弟はつい苦笑してしまう。

    「何かいいことがあったのか?兄さん」
    「ああ!聞けヴェスト!今このゲームで日本のとこのガキと戦ってたんだけどな!そいつがなかなかのやり手でよ!まぁ俺様の敵ではなかったんだがな!」

    自称、現役引退をしたプロイセンは日がな一日ゲームにのめり込んでいた。中でも武器を持ち、戦場を駆け回るこのゲームは昔の血が騒ぎ、特に気に入ってやり込んでいた。しかし、毎日やっていればどんどん上達はするものの、同じようにやり込んでいる人数は減っていく。気がついた時には同レベルのプレイヤーがいなくなっていた。
    折角のサバイバルゲームも、張り合う相手がいないのではつまらないと感じはじめていた矢先、元弟子の所から面白いプレイヤーが現れた。多少動きに拙さは残るがそれを補うほどの射撃力。判断力も悪くなく、推測能力も申し分ない。最後の油断も経験のなさを思えば可愛いものだった。

    久しぶりの高揚感にプロイセンの深紅の瞳がぎらぎらと光っている。かつて、立派な国に育てるためにと厳しかった兄の姿を思い出し、思わずドイツの背中が寒くなる。本来の目的に話を戻そうと、手元の資料を掲げた。

    「兄さん、邪魔をしてすまないが少々意見を貰えないだろうか?どう進めるか迷っている案件があるんだ」
    「あん?駄目だぜヴェストォ、悩む時間は最短で行動は迅速に、だ!仕方ねぇ、このお兄様が超絶親切且つ完璧な助言をしてやろう!」
    「ああ、助かる」

    頼られたことが嬉しいのか、プロイセンの瞳に深紅の炎は消え喜びの色が差す。普段の兄の姿にドイツは胸を撫で下ろし、意気揚々と先を行くその背を追った。ふと、振り返れば点けっぱなしのパソコンが目に留まる。

    ーーーーーまさか、日本の所にこの相手を探しに行く、なんて馬鹿な考え…。流石の兄さんでもしないか。

    己の考えを振り払うように頭を振り、パソコンの画面のスイッチを消す。
    後日、その馬鹿な考えを実行しに行った兄の連絡を受け、ドイツは胃薬の量を増やした。
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