「アル、まだ寝ないの?」
シャワーを終えたアーノルドが、隣に腰掛けながら問いかけてきた。三十分もしないうちに日付が変わろうとしている。気が付かなかった。論文を読むのに熱中していたようだ。
「先に寝ていてください。キリのいいところで切り上げますので」
ダブレットをスクロールする。後数ページで次のセクションに変わるようだ。これなら読むのに然程時間はかかるまい。そう考えていると、不意に腕に柔らかい感触。アーノルドが、僕の左腕を抱きかかえている。ぎゅう、っと。驚きで、タブレットが手から落ちる。落下先がソファの上でよかった。
「アアアアアアア、アーノルド!!また当たってますけど!?」
「うん」
「うん、じゃないです!!誘ってるんですか!?」
「うん」
うん。うん?え、いま何て?本当に?聞き間違いではなく?
アーノルドの顔は、俯いて見えない。けれど、耳も首筋も真っ赤だ。あなたも僕のこと、どうこう言えないと思いますが。途端に頭が冷静になって、雄のスイッチが入ってしまった。
「アーノルド、顔を上げて」
「恥ずかしいから、ヤだ」
ベッドで散々、恥ずかしい格好見せているじゃないですか。そんな反応して、僕のこと煽ってるんですか?
「明日の予定は?何かありますか?」
「な、ない、けど……」
「それはよかった。今から、たくさん、仲良くしましょうね」
意味を理解したのか、思わず、といったように上げたアーノルドの顔は、やはり真っ赤だ。
「お、お手柔らかに、お願いします……」