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    桜庭🌸

    @skrbkq

    成人済(20↑) / カプなし / シくんとネ氏

    ☆こそフォロ 絵文字で応援する 🌻 🌹 🌸 💐
    ポイポイ 8

    桜庭🌸

    ☆こそフォロ

    「サプライズだよ」
    「サプライズすぎるだろ!」
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    シドくんおたおめ🥳
    真夜中にシドくんのもとに現れたジョーカーくんとシドくんのお話です

    Happy Birthday, My Friend.「さいっあくだよッ! もう!」
     シドは早歩きをしながら頭を抱えた。反対の手では、友の手首をつかんでいる。等間隔に並んだ廊下の間接照明が、ふてくされた横顔を照らす。
    「サプライズだよ」
    「サプライズすぎるだろ!」
     言葉数は少ないが、彼のしたいことは何となくわかった。
     もとをたどれば、「誕生日の零時に」というワードを出したのは自分のほうだ。「スタンプの一つでいいから、送ってくれ」と添えて。子どもじみた願いだ。つい、問われてもいないのに「ネアにいちばんに祝われるのも癪だし」と言い訳がましい悪態をつく。友は二つ返事でうなずいた。
     まさか、夜中の零時に直接来るとは思わなかった。
    気配を感じて、バルコニーに通じる窓を開ける。片手にワイヤーを掴んだ友は、わずかに微笑んだ。
    「シド、誕生日おめでとう」
     それから、バルコニーにそっと片足を下ろす。呆気にとられて、つい警告が遅れた。
     こつんと靴のつま先が着地した瞬間、けたたましい警報が鳴り響く。
    「あぁ、もう!」
     友は足をひっこめるが、もう遅い。とりあえず、重量に反応するセンサーのない室内に連れ込んだ。すべきことが駆け足で巡る、まずはジョーカーをどっかに隠す。それから、警報が鳴ったのが誤作動だと警備と夜勤の使用に人に伝えて──。
     廊下には、「大丈夫か?」とドアから顔を覗かせる同僚の使用人。「誤作動ですが、念のためネア様の安全を確認してきます。外には出ないでください」と早口で告げる。言いながら、室内には手招きのハンドサイン。それにつられるままやってきた手首をつかみ、シドは滅多に使われない非常階段にまっすぐ向かう。
    「ごめん。迷惑だったか?」
    「あぁ、迷惑だったよ!」
    非常階段へつながるドアを開ける。ひやりとした秋風が、短髪とストロベリーブロンドを揺らす。
    「でも、ありがとな!」
     頼りない蛍光灯の光が、歯を見せて笑うシドを照らす。
    真っ白なお仕着せの姿でも、洗練された向日葵のような笑顔でもない。麻素材のパジャマを着て、ニカッと歯を出して笑う彼はあまりにも無防備で、ジョーカーはつい、子どもの頃を思い出す。
    ──おかしなこと聞くなよ、友だちだろ。
    てらいなくそう言った少年が間違いなくシドの中にいるのを確信して、ジョーカーはくすぐったい気持ちになる。
    「またな。次は、バルコニーはやめろよ」
     あの夕暮れ時と変わらず、シドは「また」と言うのだ。
    シドは背を向け、軽く手を振った。探偵卿である主人のもとに向かうのだろう。しかし、さみしくはなかった。幼いころと変わらず「またな」と言うシドの背中を見送って、ジョーカーは通信機のスイッチを入れた。

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    桜庭🌸

    らくがきモナコの人たちのバニーネタ🐰
    カプなし / とっても健全
    様子がおかしいシくんと通常運転のネ氏
    カジノにバニーガールいなくなりつつあるそうですね
    モナコのカジノは実在してるけど、拙作のVIPルームはお金持ちが散在するにふさわしい想像上のお部屋ということで。
    抗え、服従バニー 午後十時半。多忙な一日を終えたシドは、自室に向かっていた。わがままな主人から解放されたあとも、すれ違う使用人ににこやかに挨拶する。そんなことは、彼にとって造作もないことだ。──たとえ困惑で頭がいっぱいだとしても、だ。笑顔を作るよりも、右腕に提げられた、明朝には爆発する時限爆弾を暴いてやりたくて、逸る心と足をおさえるのに神経を使っている。
     右手に下がる紙袋の中身を確認したくて仕方ないのは、「やっぱり爆弾だったか」と証拠をおさえた警察のような勝利宣言をするためではない。爆弾がただのおもちゃであると一秒でも早く確信して、「なぁんだ」と言うために、隅から隅まで確認したいのだ。爆弾が爆発する前に。
     すべりこむように自室に入るシド。あられもないビジョンを浮かべて、怒りと困惑と、猶予は九時間しかないことへの焦燥で、その場でへたりこみ、盛大な溜息とともに膝を抱える。
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    桜庭🌸

    できたそう長くない人生で、いちばんそばにいたいと思う相手とはいつも離別していたことばかり思い浮かぶ。両親然り、友人然り。
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    ネ氏とシくん
    「明日世界が滅ぶ」なんて噂めいたものを耳にした二人のお話
    死ぬにはもってこいの日 十数度目のコール音を聞いたところで、シドは通話終了のボタンをタップした。だらりと下げた腕の先、スマホのロック画面には、今日のTO DOリストとリマインダー通知、ニュースアプリの最新情報の通知がずらりと並ぶ。
     そこに、新たな通知とアラーム。出勤のため、部屋を出る時間だ。ベッドサイドの姿見に映った完璧執事の笑顔を確認して、シドは自室を出た。

    ***

     時計を確認し、シドは使用人用のダイニングルームへ向かう。主人が昼食をとる一時間が、シドの昼休みだ。メイドに給仕の仕事をしてもらっているその時間で、昼食をとり、午後の予定とタスクの確認をして、可能であれば仮眠をとる。これがシドのルーティン。
     少しゆっくり昼食をとれるな、とシドは考える。明日のパーティーが中止になったため、主人の召し物を選び、主催や招待客のデータを記憶するといったタスクがなくなった。シドは丁寧に椅子を引き、間続きになっている厨房にいちばん近い席に座った。
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    桜庭🌸

    らくがきトル学軸です
    ヤウズくん、お誕生日おめでとう!!
    たとえばこんな誕生日【二月十日 午前四時三八分 教室にて】
     緊張したぁ……。きれいな子すぎてびっくりした。そうそう、エレオノーレ。社長令嬢らしいよ。こんなに緊張するならゲルブに聞けばよかった。わかってるって。女子に聞きたくて勇気出したんだもんね。んで、ここからが本題。結論から言うと、ヤウズくんはバレンタインのチョコは受け取らない主義なんだって。去年大変だったし、手作りや差出人のないものは食べられなくて申し訳ないからって。優しいよね、そういうとこ。まぁ、彼の料理の腕前を見たら、手作りを渡す子なんてもう現れないと思うけどね……。わかりやすくがっかりしてるわね。わかる。私もさっきまでそうだった。でも、朗報よ。エレオノーレが言うには、誕生日プレゼントは受け取ってくれるらしいの! 私たちのやるべきこと、わかった? そう。まず、手作りのお菓子は渡さない。チョコに限らず。渡し物には「誕生日おめでとう」のシールをくっつけること。間違ってもハートのシールとかだめよ! 手紙? まぁ、それは……好きにしたら? 違うって、別に入れようと思ってないから! 友チョコすら受け取ってもらえないのがなんとなくさみかったし、本命チョコを渡そうか迷ってるあんたに協力しただけだから。私は本命チョコ、生徒会長に渡そうかなって思ってるんだ。え? 簡単、簡単。毎年生徒会室前に巨大な箱が置かれるから、そこに入れるだけ。毎年数が多くて大変だから、副会長が提案したらしいよ。副会長もかっこいいよね。クールだけど、優しくてさぁ。違うから。ただのファン。あんたはどうなの? 転校してきたシド先輩が気になるって言ってたじゃん。あぁ、わかるわ。うんうん、あの人は「推し」だわ。RD先輩にはマガさんがいるから、触らぬ神に祟りなしよね。RD先輩に好意を見せようものなら、計算されつくしたお仕置きされそう……。優しい人なのは知ってるんだけどね。あれでしょ? 「オタクに優しいギャル」ってやつ。ま、とにかく。誕プレ買いにいこ。チョコ買う前に聞けてよかったよね。
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