愛する君へ another ケーキ!!!「ただいま」
ガチャリ、とオートロックの扉が開いて、右手に白い箱を持ったキラの愛しいアスランの姿が見えた。キラとアスランの指には先日、アスランが贈ったお揃いの指輪が光る。
「おかえりー」
キラは駆け足でパタパタと玄関へ向う。
「キィーラァー! お待たせ」
「うん、待ちくたびれちゃった」
夜。アスランはまだゼミが終わっておらず、今日はアスランのお部屋でキラはお待ちかね。
キラは朝が弱いので、朝ご飯はアスランがホットケーキやサンドイッチを作るが、晩ご飯はキラが担当であることが多い。カトウ教授に気に入られたアスランは最近よくゼミで実験に付き合わされている。
ロールキャベツが好物のアスランのために、キラはよくロールキャベツを作るけれど、そろそろ飽きるころかなと思っていた。今日のメニューは、キラの好きな揚げ物。コロッケ、エビフライ。お子様なメニューだなと言いそうなアスランを想像して、料理中にキラはふと笑っていた。
帰宅したアスランが持つ手持ちの箱が気になる。「パティスリー」と書かれている。
キラの視線に気づいたのが、アスランはどこかすまなさそうに笑った。
「キラ、ケーキ。この間の誕生日、抱き潰して台無しにしちゃったから。食おう」
キラのお誕生日前日にめちゃくちゃにセックスしさまって、ふたりは翌日バスルームとベッドの上で過ごしてしまったのだった。
気怠く腰の痛みを訴えるキラをお姫様抱っこでバスルームに運んだり、ベッドの上で着替えて食事を取ったり、アスランはほとんどキラを介抱していたのだけど。
「う、うん//// あれはあれでよかったんだけど……」
キラは思い出してしまって、思わず赤面してしまう。誕生日にあんなに激しく愛されて。しかも指輪まで。
「じゃあ、今夜も……?」
意地悪く笑うアスランがキラの肩を抱く。
「もうっ、先にご飯でしょ! ケーキも食べたい!!!」
「お風呂じゃなくて? 俺より先にご飯?」
「ケケケーキ!」
「いや、まずはご飯だな」
頬を再び赤くして、最終的には正論に戻るこの優秀な幼なじみとわちゃわちゃしながら、二人はようやく食卓へとたどり着く。
既に、テーブルにはサランラップに包まれたコロッケとエビフライ、サラダ、きんぴらごほう、ご飯と並んでおり準備ばっちりである。
「あっためるね」
「キラ、待たせたんだな。お腹空いたろ。でも、お前ほんと変わらないな。子どもが好きそうなメニュー、ずっと好きだよな」
「ふっ、アスラン。やっぱり言った? うん、お母さんが作ったコロッケとエビフライ、君ともよく食べたよね」
キラは右手をそっと口元にあてて、幼少期を思い出して優しい微笑みをアスランに向ける。アスランは少し怪訝そうな顔をして、キラに問いかける。
「やっぱり?」
「うん、料理中にちょっと考えてたんだ。アスランが今日のメニュー見たら、子どもっぽいって言うかもって」
「お見通しだな」
「うん」
二人は、とりとめのない会話を楽しみながら食事を続け、メロン、ぶどう、オレンジ、さくらんぼ、いちごと季節のフルーツが並ぶ生クリームケーキを二人でほお張ったのだった。